ハンジたち一行は地鳴らしを先回りする形で海上を進み、港町・オディハで飛行艇を確保する。しかし、“女型の巨人”の継承者であるアニはこの戦いに参加する意義を見出せなくなっていた。戦線から船で離脱するアニ、ファルコ、ガビを見送り、決戦に向けて飛行艇の整備を進める一行だったが、イェーガー派の残党・フロックの捨て身の銃撃によって燃料タンクに穴が空くという致命的な事態に。ここが「自分の番だ」と悟ったハンジは、アルミンに調査兵団団長の権限を譲渡。応急処置の時間を稼ぐため、迫りくる超大型巨人の群れへとたったひとりで突入する。https://shingeki.tv/final/story/#/episode/89
アニとの別れ
オディハ港で飛行艇の整備を終えてアニと別れます。それぞれの関係性について見ていきましょう。
ジャンは手を振らない
漫画ではジャンもみんなと一緒に手を振っていたのですがそれはカットされました。
ハンジの「またね」
アニメで追加されたのはコニー「気をつけてな!」、ハンジ「またね」というセリフです。
ライナーとの別れ
ライナー「ガビとファルコを頼んだ」
ライナーの謝罪
ライナー「謝ることすらおこがましく思える」と言い目を逸らします。アニメ84話「終末の夜」でジャン達に謝罪する場面でも目を逸らす様子が見られます。そして、最終話94話「あの丘の木に向かって」でも母カリナに対し鎧の巨人でないことを伝える場面でも目を逸らしていました。ライナーは謝罪したり気まずさを感じる時に目を逸らしがちです。
ピークの優しさ
ピークはお姉さん的な立場で優しく接しています。ファルコ・ガビを船内に閉じ込めて危険から遠ざけたのもピークの判断です。アニの「戦いたくない」という意思を尊重して「今更、背負うものなんて何もないよ、気にしないで」と声を掛けます。
フード描写
アルミンたちが出発する直前に食事をするシーンがありました。諫山先生は「食事シーン」を入れることを大事にしているので注目ポイントです。フード理論については過去の動画でも解説しています(https://www.youtube.com/watch?v=DCl4L9JUi_4)。
フロックについて
伏線(アニメオリジナル)
朝焼けと共に「謎の水滴」が描かれます。これは技術者たちの汗かな?と思ったのですが、恐らくフロックが歩いた跡の水滴だったのでしょう。 フロックはなぜこのタイミングで現れたのでしょうか? 機会を伺っていたのか…あるいは、負傷した体で水に濡れて弱っていたが朝になって目覚めたのか。
明かりの演出
アニメオリジナルの格納庫の照明が印象的です。場面説明のための俯瞰絵とも思いましたが、これは灯りが局所的である、ということの説明にも見えます。薄暗い格納庫で修理された飛行艇を見て安堵するオニャンコポン。その背後からフロックが現れるホラー演出になっています。そして、暗闇から現れたフロックが灯りに照らされて正体が判明するというのも良かったです。
フロックの使命
「何とかなりそうだ」と言うオニャンコポンの後ろでフラフラになったフロックが横切ります。そして、最期の力を振り絞って銃を撃ちます。燃料タンクを狙ったのか、オニャンコポンを狙ったのかは定かではないです。分かるのは、イェーガー派としてエレンの地鳴らし遂行のため、最後まで自分にできることをしていたということです。この時のフロックの状態は瀕死の状態です。およそ半日前にあたるアニメ86話「懐古」を思い出してみてください。フロックがアズマビトの船に雷槍を打ち込もうとした、その瞬間にガビの銃が右胸~肩あたりを撃ちそのまま海に沈んでいきました。死亡したかと思われましたが、そのまま何らかの方法でパラディー島からオディハ港までついて来たのです。顔色は青白く、呼吸も荒いフロックは自分でも体力の限界と分かっていたでしょう。
フロックの最期
致命傷を受けた死の間際のフロックはハンジとジャンに「行かないでくれ」と語りかけていました。最期の言葉は「俺たちの悪魔…それだけ…希望」でした。エレンがパラディ島の最後の希望という言葉と共に瞳孔が開き、死亡するのは希望が失われることとも捉えられます。 非常事態に陥ったにも関わらず、ジャンとハンジさんがしっかり話を聞いてあげています。亡くなったフロックの瞳を閉じてあげる描写は「エルヴィンの最期を思わせる」という意見もいただきました。
フロックとジャン
冷静に判断状況ができるジャンが看取るのは104期の同期として意義があることでした。彼らは寝食を共にした仲間であり、生死に関わる戦闘をも乗り越えました。彼らが経験したできことは以下です。 ・ウォール・マリア奪還作戦 ・パラディ島に義勇兵が現れ外交が始まる ・レベリオ襲撃 ・イェーガー派の発足 2人にとっての別れ道はイェーガ派の全盛期を迎えた時でしょう。イェーガー派を率いるフロックはジャンに「もう戦わなくていいんだ」「自由だよ」と約束された未来を提案します。訓練兵時代のジャンは内地で安心して暮らすことを願っていました。それを知っている同期だからこそフロックは「あの頃のジャンに戻れよ」という言葉をかけたのでしょう。そして、ジャンもフロックの主義主張は理解できていたはずです。
ハンジ・ゾエについて
団長交代の意味
画像 「みんな見ているかな?今の私達を死んだ仲間に誇れるかな…」とリヴァイに語ります。ハンジは調査兵団が繋いできたバトンを繋ぐ役割を担っています。過去から未来に繋がる線の中の点であるということを自覚しているのでしょう。調査兵団の魂に沿って、彼らに恥じないように生きていられているか?その代表たる団長たりえているのか?ということをリヴァイに投げかけていたのでしょう。
ハンジの対話
イェレナの「認めてください」「解決策は『安楽死計画』しかなかったのです」という言葉に対してハンジは「認めるよ」と言います。そして、こう続けます。「希望や未来を示せなかった私たちの無力さを」と。ここは安楽死計画に至ってしまったう自分の無力さを認める、ということです。 アニメ70話「偽り者」でハンジはフロックに対して「君が正しいのかもしれないね」「すべては私の責任だ」と語ります。 どちらも相手の意見は認める姿勢を持っています。エレンの地鳴らしが発動してからのリーダーとフォロワーの関係性はこのようになります。
【目標】 | 【リーダー】 | 【フォロワー】 |
安楽死計画 | ジーク | イェレナ |
地鳴らし | エレン | フロック |
対話で解決 | ハンジ | 調査兵団 |
ハンジの葛藤
ハンジは問題に対して苦悩し、葛藤していました。 アニメ69話「正論」ではエレンに対して具体的な解決策を示せず落ち込む様子がありました。 アニメ70話「偽り者」ではサネスの「こういう役には順番がある」と言われた通りになり、怒りと苦悩で疲弊する場面がありました。
団長交代
ハンジが部下の前に現れた時、漫画と違って背中の「自由の翼」がたなびきます。「けいじめをつける」という言葉は「殿をつとめる」ということであり、団長交代を決意しているのが分かります。そして、アルミンに15代目団長を任命して去ります。 団長任命については思想的な意味と戦略的な意味があったと思います。
思想として
ハンジは調査兵団の理想とする世界を信じていましたし、そのバトンが引き継がれていたことも理解していました。それを引き継ぐ者の存在てとしてアルミンが適任だと見据えていたのでしょう。そして時代の大きな流れと踏まえて「ようやく来た私の番」ということからアルミンを次の団長に任命したのでしょう。
戦略として
今までの戦闘経験からアルミンの能力への信頼もありました。理解することを諦めない姿勢というが正にそうでしょう。 現状では「殿」の重要性も理解していたでしょう。マガトの影響もあったかもしれません。ハンジ自身の戦闘能力と状況を総合的に見た上で自分が巨人を倒して、時間稼ぎをすることを判断したのでしょう。 そして、自分ではできなかったエレンの説得を彼ら104期生であれば可能かもしれない、という考えもあったでしょう。 最後の「皆を頼んだよ」という慈愛に満ちた演技も良かったです。104期生たちの前では格好つけて堂々と去っていく姿が勇ましさと切なさを感じる別れでした。
ハンジとリヴァイ
リヴァイの前では弱い部分を見せていたというのもポイントです。
対面しない2人
最期の2人の会話ではハンジが通り過ぎて顔が見ない所で立ち止まります。1歩ほどすれ違った状態で話をしているのです。リヴァイの「心臓を捧げよ」のセリフの後、漫画ではハンジが後ろを振り返ってリヴァイの背中を見てから飛び去ります。アニメではハンジが振り返らずそのまま前へ進んでいきます。最後まで顔を合わせないようにしていることが分かります。顔を合わせると決心が鈍ることがお互いに分かっていたことを意味するのではないでしょうか。
セリフから分かる感情
※画像
リヴァイの「心臓を捧げよ」
リヴァイは「心臓を捧げよ」とハンジに言葉を贈り、優しく胸元を叩きます。これは背中を押す意味もありますし、調査兵団団長としてのハンジの人生を肯定する意味もあると思います。 リヴァイからの言葉でハンジは落ち着き、覚悟を決めます。そして「君が言ってるの初めて聞いたよ」と微笑みます。
ハンジの最期の戦い
やっぱり巨人って素晴らしいな
この時のハンジは死の恐怖と殿を務めるプレッシャーがある中で、敵の足止めをする使命を全うします。命懸けの極限状態です。それにも関わらず、ハンジは巨人に見入って感動するのです。
精神の凄さ
今までの話では地鳴らし巨人に怯える人々の様子が描かれていました。そんな巨人を目の前にしたハンジが「素晴らしい」という捉え方をしているのがポイントです。この言葉はハンジが今まで人生をかけて巨人と意味します。アニメ15話「特別作戦班」で「私は既存の見方と違う視点から巨人を見てみたいんだ」と言っていました。死の恐怖が迫っている状況でもその見方を忘れず、自然と出た言葉というのが人間の凄さや精神性を感じました。
地鳴らし巨人戦
地鳴らし巨人は今まで戦ってきた無垢の巨人と戦い方が違います。今回は討伐ではなく足止めをすることが目的であり、人間を襲って来ないが巨大であり数が多いことが大きく異なります。ハンジの状況察知能力と判断力が活かされる場面でした。長年巨人を研究していたハンジの巨人への愛情と観察力の賜物とも言えるでしょう。
アニメの演出
今回のアニメで「地鳴らし巨人の足止め」が分かりやすく表現されていました。巨人の膝裏を狙い巨人を転倒させることで複数体の巨人を巻き添えにして転倒させていました。
ハンジの最期
巨人の熱によりハンジのマントに火が燃え移ります。その火が立体機動装置のガスに引火して全身が炎に包まれます。直接的に巨人に殺されたわけではなかったということです。
調査兵団の同窓会
走馬灯なのか、あるいは「道」なのか定かではありませんが、このシーンも良かったです。
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