【進撃の巨人】第40話『ユミル』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人40話『ユミル』のあらすじ

巨人出現から20時間後(ウトガルド城)

獣の巨人の追撃に、調査兵団兵士ゲルガーやナナバが死にゆく。
絶体絶命な状況で、104期生ユミルはクリスタに雪山訓練の話をする。
そして、「お前…胸張って生きろよ」と言葉を残して、巨人化する。
その姿を見て、一番驚いていたのは、ライナーとベルトルトだった。

【時期】850年
【場所】パラディ島ウトガルド城

進撃の巨人40話『ユミル』で発生した伏線・謎

Qユミルの「2度目の人生」とは?クリスタの人生とどのように似ていた?
(10巻40話)

A
(14巻57話)

Q104期生ユミルが「自身の名前を偽らない」ことにこだわる理由は?
(10巻40話)

A
(22巻89話)

Qクリスタが隠している「元の名前」とは?
(10巻40話)

Aクリスタ・レンズは偽名。ヒストリア・レイスが真の名前。
(10巻41話)

Q何故ライナーとベルトルトの回想に「ユミル巨人」が出てくる?
(10巻40話)

A
(22巻89話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(10巻40話)

A
(巻話)

進撃の巨人40話『ユミル』で解決した伏線・謎

進撃の巨人40話『ユミル』の表現・対比

進撃の巨人40話『ユミル』の考察・解説

進撃の巨人40話『ユミル』の考察・解説動画

サブタイトル『ユミル』の意味

104期生ユミルの回想と巨人化。
※キャラ名3回目 41話「ヒストリア」に続く題名。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

「思い出してくれ…約束を…」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

クリスタは優しい女の子です。天使や女神様と呼ばれたり、ライナーも「結婚したい」と思うほど素敵な女性です。クリスタの優しさは時に自己を犠牲をいとわず、ユミルはそんなクリスタの本心を見抜いていました。

ウトガルド城で巨人に追い詰めれる104期のメンバー。そんな中、クリスタが「武器があれば戦って死ねるのに」と語る場面でユミルが答えます。

「彼らの死を利用するな」「あの上官たちはお前の自殺の口実になるために死んだんじゃねぇよ」「いつも…どうやって死んだら褒めてもらえるのかばっかり考えてただろ?」

クリスタは「え…そんなこと…」と一瞬、否定しかけますが、ユミルのいつもと違う表情に息を呑みます。ユミルはクリスタの肩をつかんで真剣に問いかけます。

「多分、これが最後になるから…思い出してくれ」「雪山訓練の時にした…約束を…」

今回は2人が雪山訓練で何を約束したのか回想シーンで語られますので見ていきましょう。

雪山訓練の回想

遭難するクリスタとユミル

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

回想シーンでは訓練兵団時代の雪山訓練の場面が描かれます。クリスタは体調を壊したダズを助けようとして自分も遭難してしまいす。クリスタはダズを担架にのせてソリで引きずっています。その後ろをユミルが着いてきているので3人で遭難している状態です。

ユミルはクリスタにダズのことは諦めるように諭しますが、クリスタはダズの担架を引きずり続けます。そこでユミルがクリスタに問います。

「なんで私に助けを求めないんだ?」「死のうとしてるなお前って。良い人だと思われて死にたいのか」更に続けて…。

「ダメだろう。クリスタはいい子なんだから。この男が助かるためにはどうするべきか。私に聞いたりする姿勢を一旦は見せとかないと」「自分が文字通り死ぬほど良い人だと思われたいからって、人を話き添えにして殺しちゃそれは悪い子だろう」

ユミルがクリスタの本心を見抜く

第36話「ただいま」でサシャの本心を見抜いていたように人の気持ちを汲み取ることができる人物です。ユミルはサシャが人にどう思われるのか、方言ばれて恥をかくのではないか、ということを不安に思っていることを感じ取っていました。その上で自分らしくいるように諭すのです。洞察力に優れたキャラクターです。

ユミルはクリスタに対して「死ぬほど良い人」だと思われたいのなら今やってることは悪いことだ、と指摘します。それに対してクリスタはぐうの音も出ない状態になります。それで最終的にはユミルが「顎の巨人」の力を使ってダズを助けるのです。

クリスタの生い立ち

クリスタが良い人だと思われて死にたい、というような自殺願望を持つには理由があります。クリスタは誰にも愛されない幼少時代を過ごしていました。

母親はロッド・レイスの妾であり、周囲から煙たがられていました。存在しない子として扱われ、母親からも愛されないという状況でした。

レイス家はグリシャ巨人に襲撃され、ロッドだけが生き残ったものの跡取りとなる子どもたちは全員殺されました。直系の血を継ぐクリスタは跡取りに位置にあるものの、不貞の子には相応しくないとされていました。クリスタは殺されかけるも、名前を偽り慎ましく生きるのであれば見逃されることになりました。その時に母親はケニー・アッカーマンに殺されています。

そのタイミングで与えられた名前が今の「クリスタ」であり、その名前はクリスタが絵本で読んでいた優しい女の子の名前でした。

良い子としてずっと生きていたクリスタは誰からも愛されるクリスタ像を生涯を通じて演じなければなりませんでした。この辛さが彼女の人生に影を落とし、自殺願望に結びついていたのです。

ユミルはクリスタと友達になりたかった?

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

ユミルがなぜクリスタに突っかかるのか見ていきます。

ユミルが言うように「内地のとある教会で生活のために金品を借りて回ってた時(=泥棒)」に偶然、妾の子の話を聞いたのです。そして、その子を探しにユミルは訓練兵団に入るのです。

ユミルはこの情報は誰にも言わないとクリスタに約束します。クリスタは、なぜわざわざ自分を探しにやってきたのか問います。

ユミルは「似てたからかもな…」と答えます。

続けて、クリスタが「私と…私と友達になりたかったの?」と聞きます。ユミルは一瞬目を見開いて「は?違うね。それはない」と否定します。

このユミルの心理は過去の自分に似ている境遇の人物に会ってみたい、どんな生き方をしているか見てみたい、という好奇心もあったでしょう。

そして、ユミルは何か繋がりのある人物を求めていたのだと思います。ユミルは自分のために生きられない人間の孤独を知っているので、同じ境遇の人物の理解者になれるかもしれないと思ったかもしれません。目を見開いたのは自分でも気付かなかった本心に気づいた場面でもあります。それは、孤独な世界で自分も理解者を欲していたという気持ちです。

ユミルはこのように嘘を言ったり、偽悪的な態度を取る場面があります。その本心は物語では語られませんが、ユミルの生涯や性格を考えるとその本心が見えてきます。

自分のままでイカした人生を送る

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

ユミルが自分の境遇に似た人物を探していました。そして、クリスタを見つけ出したのですが、クリスタは運命に屈服し、死んでしまっても構わないという様子を見て、ユミルは感情的に諭します。

「自分は生まれ変わった!だがその際に元の名前を偽ったりしていない!」「ユミルとして生まれたことを否定したら負けなんだよ!」「私はこの名前のままでイカした人生を送ってやる!それが私の人生の復讐なんだよ!!」

ユミルはクリスタの自殺願望めいた感情に対しても意見します。

「何でその殺意が自分に向くんだよ!?その気合がありゃ自分の運命だって変えられるんじゃねぇのか!?」

クリスタはこの言葉に「できないよ」と答えます。これは自分の運命は変えられない、遭難から助かることもできない、という弱気な発言です。ユミルは「助かる方法はある」と冷静に答えます。そして「私がやっとくから先行っとけ」と突き飛ばし姿を消します。

ユミルは「顎の巨人」の力でダズを麓の小屋まで運びます。そして、遅れてクリスタが小屋に到着するのです。クリスタは「どうやってあそこからダズを降ろしたの?」と聞きます。

【重要】ユミルと交わした約束

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

小屋までどうやってダズを運んだのか聞くクリスタに対してユミルは「いいぞ…お前になら教えてやっても…」と語ります。そして、ユミルとクリスタは約束を交わします。

その約束とは「ユミルが自分の本性を明かしたとき、クリスタは元の名前を名乗って生きる」ということでした。

ユミルが「顎の巨人」である本性を明かすということは、もう一緒にはいられないということです。それをユミルは知っていたからこそ、事前に約束をしていたのです。ユミルが巨人であるということが判明したら、壁の外へ追い出されるかもしれない、または殺されるかもしれません。当時の壁内人類は人間が巨人になれることも知られていなかったので自分が巨人の姿を明かした際にどうなるかは分からなかったのです。

ここで回想は終わり、話は現在に戻ります。

ユミルの願望

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

現在、塔の上に追い詰められている104期生は絶体絶命です。ユミルはコニーからナイフを借りるとクリスタに語ります。

「クリスタ…お前の生き方に口出しする権利は私に無い」「だからこれはただの…私の願望なんだがな」「お前胸張って生きろよ」

この言葉がクリスタの心に深く突き刺さります。クリスタに対してユミルは本当の名前を背負って生きる時には違う生き方をして欲しい、ということです。

人のために自分を犠牲にするのではなくて、自分のために生きること、運命に従うのではなく、運命に立ち向かって生きて欲しい、ということです。

そして、あの時の約束を思い出しても行動するのはクリスタ本人の意思であり、ユミルは強制してはいないのです。クリスタが自分のあるべき姿で胸を張れるよう自信を持って生きて欲しい、これは「あくまでも願望」というのがユミルらしい言葉です。

そして、ユミルは104期を助けるために塔から飛び降り「顎の巨人」に巨人化します。

ユミルのモノローグ

巨人化するユミルはモノローグで語ります。

「(クリスタ…私もだ。自分なんて生まれてこなければよかったと思っていた。ただ存在するだけで、世界に憎まれた。大勢の人の幸せのために死んであげた。)」

ユミルは宗教団体で名付けられた名前が「ユミル」であることでマーレ当局に拘束されます。世界に憎まれ石を投げられたのはユミルが悪行をしたからではなく、大人に名付けられ、振る舞いや生き方を強制されたからです。大勢の人の幸せのために死んであげた、というのは「ユミル」を憎む人々の気持ちが晴れるためならば死んであげよう、ということでしょう。(第37話「南西へ」でもユミルの人生について紹介しています。)

続いて、

「(もし生まれ変わることができたなら…今度は自分のためだけに生きたいと…そう強く願った)」

ユミルは60年間の無垢の巨人として眠りについていました。「顎の巨人」を食べたことで再び、普通の人間として生きるチャンスを得たのです。ユミルが願った「(もし生まれ変わることができたなら)」の「もし」が叶ったのです。ユミルは自分のために後悔しない生き方をしようと決意しています。そして、その思いを周りの人にも伝えていくのです。

ユミルとクリスタの違い

①「特別な人間」と「特別でない人間」

ユミルとクリスタを比較してみると「自分なんて生まれてこなければよかった」「誰からも憎まれた」というのが共通点としてあります。しかし、2人には異なる点があるのがポイントです。

ユミルの場合は元の生まれが「特別でない人間」であり孤児として生活をしていました。後に「ユミル」という名前をもらって「特別な人間」になったのです。

逆にヒストリアの場合は元々が王家の血を引いている「特別な人間」だったのですが偽りの名前をつけられることで「特別でない人間」として生きることを強いられたました。ここが2人の異なる部分です。

②「名を背負う」か「名を捨てる」

ユミルが「生まれ変わった」と語っていたようにマーレ国時代のユミルは人生を一旦終えています。「顎の巨人」を持つ人間として第二の人生を歩んでいるユミルは名前を偽らずに生きることを決心します。これは運命に反逆するということ、自分のために生きるということの決意です。

一方でヒストリアは自分の名前を捨てて生きています。運命や周囲の押し付けに屈している状態です。クリスタは良い子でいなければいけない、誰かのために生きなきゃいけないという考えで生きています。

このようにユミルとヒストリアは異なる生き方をしていることが分かります。

運命に抗う物語

「進撃の巨人」には運命に屈して諦めるか、運命に抗うかというテーマが度々出てくるように思います。

人生の復讐をする覚悟を決めたユミルは「運命は変えられる」ということの証明をしています。クリスタは雪山訓練で自分もダズも死んでしまうと思っていました。そこでユミルの力によって奇跡的に全員生還することができたのです。

このユミルの「運命に抗う」という思いはクリスタに受け継がれていきます。

第66話「願い」で本当の名前を名乗って生きると決めたクリスタはユミルの「胸張って生きろよ」という言葉により運命に抗います。そして、この思いがエレンに影響も与えます。ユミルからヒストリアに受け継がれた思いが、エレンに受け継がれていくことで物語の終盤地鳴らし編でも影響を与えます。

ダズって誰?

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

雪山訓練でクリスタに運ばれているダズという訓練兵は過去に出てきてです。

第11話「応える」でマルコに泣き言を言っている姿、第12話「偶像」で死の恐怖から上官に対して歯向かう姿も描かれます。巨人の恐怖を目の当たりにして、恐怖心で意気消沈する姿は人間らしい姿ともいえます。

そんなダズは第128話「裏切り者」でイェーガー派となってアルミンとコニーの前に現れます。訓練兵時代の仲間であることを覚えておくと、物語に深みが増すと思います。

ゲルガーの悲惨な死

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

今回の冒頭の巨人との戦闘シーンのゲルガーについて紹介します。

酒好きのゲルガーは塔の中で酒瓶を見つけて生唾を飲み込みます。しかし、任務を全うするために酒を飲むことを我慢して戦い続けました。104期生たち新兵を守るためにナナバと共に大量の巨人を討伐しています。

最終的に装備が尽き、ゲルガーは頭を打ち意識が朦朧とする中で「何でもいいから酒が飲みてぇな…」と語ります。巨人に足を掴まれるもナナバによって助けられたゲルガーは反動で塔の中に入り、先ほどの酒瓶を見つけます。

「神…様…」と震える手で酒瓶を手にするゲルガー。死ぬ直前に願いを叶えられるのか…と思いきや酒はほとんど残っておらず、数滴の酒が虚しくゲルガーの顎に落ちるのです。

「あぁ…ひでぇよ」「あんまりじゃねぇか」と血と涙を流すゲルガーは巨人に手で掴まれます。そして、叫ぶのです。

「誰だよ!!これ全部飲みやがった奴は!?」

ゲルガーが空の酒瓶を見つけた時に「神…様…」と言うのですが、それを空にしたのは「女神様」と言われていたクリスタというのが皮肉です。さらに辛いのがその酒は飲まれたのではなくライナーの怪我の手当に使われたことです。ライナーは知性巨人保持者なので手当せずとも怪我は回復できたのです。報われない辛い場面として緻密に作り込まれた場面です。

エルヴィンが立つ屍

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

ゲルガーの死の悲惨さはランキングがあるならば上位にランクインするでしょう。

第76話「雷槍」でエルヴィンのモノローグで描かれる場面でゲルガーが再登場します。

エルヴィンは様々な人の犠牲の上に今の自分があり、自分の思いを優先すべきか…と悩む場面があります。「この屍の上に私は立っている」とエルヴィンが語る場面でゲルガーは上位にいます。

この屍の最上段は調査兵団No.2の強さのミケがいます。ミケの下にナナバ、その下にゲルガーがいます。調査兵団の中では重要なキャラクターであり、貢献をしていたキャラクターだったと捉えられます。

報われた場面としては第132話「自由の翼」ではワインのような酒瓶を持っている姿が描かれていました。

進撃の巨人40話『ユミル』の感想・ネタバレ

進撃の巨人40話『ユミル』の感想動画

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