【進撃の巨人】第66話『願い』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人66話『願い』のあらすじ

ヒストリアは、ロッド・レイスの「巨人化してエレンを食べてくれ」という願いを拒む。
流されそうになったヒストリアが思いとどまったのは、104期生ユミルの「お前…胸張って生きろよ」という言葉だった。
状況を打破するために、ロッド・レイスは自ら巨人化になり、礼拝堂は崩壊する。

エレン達のもとにたどり着いたリヴァイ達とヒストリアは、エレンの拘束を解く。
エレンは近くに偶然あった小瓶を飲み込んだ後に、巨人化。窮地を脱しようと試みる。

進撃の巨人66話『願い』で発生した伏線・謎

Qヒストリアの発言「むしろ人類なんか嫌いだ!巨人に滅ぼされたらいいんだ!つまり私は人類の敵!わかる!?最低最悪の超悪い子!」
(16巻66話)

A
(32巻130話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Qヨロイブラウンの瓶
(16巻66話)

A
(巻話)

進撃の巨人66話『願い』で解決した伏線・謎

進撃の巨人66話『願い』の表現・対比

進撃の巨人66話『願い』の考察・解説

進撃の巨人66話『願い』の考察・解説動画

サブタイトル『願い』の意味

ロッド・レイス、ヒストリア、ユミル、エレンの願い
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

ヒストリアの呪いと決意

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ヒストリアは一時、父ロッド・レイスの言葉に従い、エレンを捕食して「始祖の巨人」を継承しようとします。その決断の背景には、「人類を救うため」という大義よりも、孤独な人生を送ってきたヒストリアが、ようやく得られた父親からの愛情や信頼に応えたいという願いがありました。彼女は「嫌われたくない」「愛されたい」と願い、そのために父の望む姿になろうとします。

しかし注射を打つ直前、彼女は2つの記憶を思い出します。

ひとつはユミルの「お前…『いいこと』しようとしてるだろ?」という言葉。もうひとつは、フリーダの「柵の外に出るなって言ったでしょ!!」と取り乱した恐ろしい表情です。フリーダはかつて優しい姉のように振る舞っていたものの、初代王の思想に取り込まれることで情緒不安定になりこのように変貌してしまっていたのです。

この瞬間、ヒストリアは気づきます。「自分が始祖の巨人を継承すれば、父の期待に応える代わりに、初代王の思想に支配され、自分自身を失ってしまう」と。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

さらに彼女は、過去の「クリスタ」としての自分を重ね合わせます。クリスタは、他人に認められるために「いい子」として振る舞い、自分を押し殺して生きていました。今まさに父の言葉に従って巨人になるという選択は、クリスタとしての生き方の延長にすぎなかったのです。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

そこでヒストリアの中に、ユミルの言葉が強くよみがえります。

「これはただの私の願望なんだがな。お前、胸張って生きろよ。」

その言葉に導かれるように、ヒストリアは「与えられた運命」ではなく、「自分自身の意思」で生きることを選びます。彼女は注射を拒否し、エレンの捕食を断念します。

そして叫ぶのです。

「もうこれ以上、私を殺してたまるか!」

このセリフには、クリスタという過去の人格を乗り越え、「本当のヒストリア」として生きるという強い決意が込められています。彼女は他人の期待ではなく、自らの意志で未来を選ぶ覚悟を持ったのです。

ヒストリアの生き方と変化

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ヒストリアは、自分のために生きると決めた瞬間から、それまでの「いい子」であろうとする生き方をやめます。自暴自棄になっていたエレンが「もう生きていたって辛いだけだ」と弱音を吐くと、彼女は力強く言い放ちます。

「うるさいバカ、鳴き虫だまれ!」

さらに続けて、

「巨人を駆逐する?そんな面倒なこと、誰がやるもんか。むしろ人類なんて、巨人に滅ぼされればいい。私は人類の敵。最低最悪の、超悪い子。」

と語ります。この発言は、父や周囲の期待に応える「クリスタ」としてではなく、”本当の自分”として生きる決意の現れです。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

彼女はこう続けます。

「私は人類の敵だけど、エレンの味方。いい子にも、神様にもなれない。」

この「神様」とは、父ロッド・レイスが望んだ理想像――始祖の巨人を受け継ぎ、民を導く存在のことです。しかし彼女は、誰かの期待を背負って生きるのではなく、「自分が本当にやりたいこと」に向き合います。

「自分なんかいらないって泣いている人がいたら…私はそんなことないよって伝えに行きたい。」

この想いは、過去のヒストリア自身がずっと抱えていた孤独と否定に基づいています。彼女はかつて「自分はいらない存在だ」と思っていたからこそ、同じように苦しむ人の力になりたいと願うのです。

この時、彼女の脳裏には2人の人物が浮かびます。

  • フリーダ:初代王の思想に支配されてはいたが、ヒストリアに優しく接してくれた存在。

  • ユミル:巨人の力を隠しつつもヒストリアを救ってくれた友人。「お前、胸張って生きろよ」と励ましてくれた人物。

ヒストリアの心は、フリーダから受け継いだ「優しさ」と、ユミルから託された「勇気」によって形作られています。彼女は、自分の過去を救うように、そして今まさに「自分なんかいらない」と言っているエレンを救うように、実際に行動を起こします。鍵を外して助けに向かったのもその一例です。

ヒストリアという人物は、実は“利己的”な側面を持っています。自分を救いたい、過去の自分を肯定したいという想いが根底にあるのです。しかしそれは、誰にでもある自然な感情であり、他者を救おうとする彼女の姿勢と矛盾しません。

つまりヒストリアは、「理想の誰か」になることをやめ、「自分として生きる」道を選びました。そしてその道は、自分を救いながら、同時に他人も救うという、新たな生き方へとつながっているのです。

マーレ編で描かれるエレンとヒストリア

ヒストリアは、エレンを無条件に受け入れました。その優しさに救われたエレンは、彼女を犠牲にすることを拒むようになります。

マーレ編で「ヒストリアに子どもを産ませる案」が出ますが、エレンはそれを拒否します。彼にとってヒストリアは、自分を受け入れてくれた大切な存在であり、彼女の自由を守りたいと強く願っていたのです。

エレンが「自分を信じる」と決意した背景

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

エレンはこれまで、「自分は特別な存在だ」と信じていました。しかし、実際には「特別なのは自分ではなく、父・グリシャだった」と気づき、自信を失います。

そんな中、ヒストリアが父・ロッド・レイスとの決別を果たす姿を目の当たりにします。親の呪縛を自ら断ち切ったヒストリアの姿に、エレンは大きな影響を受け、「自分もまた、自分自身の意思で生きるべきだ」と覚悟を固めます。

そして、ロッド・レイスが巨人化し、危機的な状況に陥った場面で、リヴァイが再びエレンに選択を委ねます。

「好きな方を選べ」

この言葉は、かつて女型の巨人編で旧リヴァイ班が全滅した際と重なります。あのとき、エレンは仲間を信じて戦わないという選択をし、その結果ペトラたちが犠牲になりました。過去の後悔と今回の決断が対比される場面です。

今回は、エレンは「自分の力で戦う」道を選びます。仲間を信じて逃げるのではなく、「ヨロイブラウン」と書かれた瓶の薬を飲み、巨人化することを決意するのです。

ただし、この選択は「自由な意思」というより「他に選択肢がない状況」での決断でした。

諫山先生がインタビューでこの場面のエレンについて語っています。

「あの場面では、以前と似たようなことを繰り返しているようにも見えますが、エレンに選択の自由はないんですよね。たとえ悪い結果を招いたとしても、あの時のエレンはああするしかなかったんですよ。」

どん底から浮上するきっかけについてー

「…そうした絶望の中で、自分に近い境遇のヒストリアがロッド・レイスという呪縛を振り切ったのを目にして、エレンも自分がすべきことに向き合う決心がついたんだと思います。」(諫山創「進撃の巨人 ANSWERS」、講談社)

つまり、エレンは絶望の中でも「自分を信じる」道を選び、自らの力で現実を切り開こうとする姿勢を見せたのです。

ロッド・レイスの巨人化と奇行種化の謎

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ロッド・レイスが巨人化した際、奇行種(※異常な行動をとる巨人)となった理由は、作中では明確に描かれていません。ただし、その過程にはいくつかの興味深い要素があります。

まず、ロッドが摂取した薬のラベルには、作中の文字を逆から読むと「サイキョウノキョジン(最強の巨人)」と記されています。これは単行本の描写から確認できます。ロッドはこの薬を注射ではなく舐めて摂取しましたが、経口摂取であっても巨人化は可能です。実際、マーレ編ではワインに混入された脊髄液を飲んだ人々が巨人化しており、摂取方法そのものが奇行種化に関係しているわけではありません。

次に、巨人のサイズとの関連性が考えられます。ロッドは通常よりも遥かに大きな巨人となりました。この点については、グリシャの妹を殺したマーレ治安当局の男が「巨人のサイズは注射の量で調整できる」と発言していたため、摂取量によって超大型化する可能性も指摘されています。ただし、ロッドがほんの少量を舐めただけで巨大化したことを考えると、この説もやや疑問が残ります。

また、よく語られる説として、「脊髄の損傷によって奇行種化した」というものがあります。巨人化直前、ヒストリアに投げ飛ばされたロッド・レイスは背中から地面に激突しており、この衝撃で脊髄が損傷していた可能性があります。巨人化の核は脊髄にあるため、損傷によって正常な巨人化が阻害され、奇行種になったのではないかという解釈です。

結論として、ロッド・レイスが奇行種となった明確な理由は作中では明示されていません。摂取方法、薬の量、あるいは脊髄の損傷など、いくつかの要因が考えられますが、いずれも読者の想像に委ねられています。

ヨロイブラウンの小瓶と硬質化能力の謎

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

エレンが「硬質化能力」を得たのは、「ヨロイブラウン」と書かれた薬を飲んだからです。しかしこの小瓶には、いくつかの謎が残されています。

まず、硬質化能力とは何か。この能力は、体の一部を硬質な結晶のような物質で覆い、防御や戦闘に活かす巨人の特性です。ライナーが「鎧の巨人」として使っているのは有名ですが、実は他の巨人も同様の能力を持っています。

たとえば、始祖の巨人は巨大な「壁」の素材を作るのに硬質化を用いていました。また、アニ(女型の巨人)も硬質化して自らを結晶で包み、長期間眠る手段として使っています。さらに、ジーク(獣の巨人)もリヴァイに追い詰められた際、「硬質化しなければ」と発言しており、獣の巨人もこの能力を使えることが示唆されています。

このように、硬質化は特定の巨人に限られた能力ではなく、条件が整えば多くの巨人が使えるものであると考えられます。

それを踏まえると、エレンが「ヨロイブラウン」の薬で得た能力も、もともと巨人の中に備わっていた素質を引き出すための手段だった可能性があります。

「ヨロイブラウン」の名前の意味

薬に書かれた「ヨロイブラウン」という名前も、興味深い要素です。「ヨロイ(鎧)」は明らかに硬質化と関係していると考えられますが、「ブラウン」という単語も意味深です。(ブラウン家や「ヨロイブラウン」についての考察記事こちら)

ここで思い浮かぶのは、「ライナー・ブラウン」という名前。彼は鎧の巨人であり、薬の名と一致しています。このため、「ヨロイブラウン」はライナーの能力由来のエキス、あるいは関連する成分で作られた薬ではないかという推測が可能です。

さらに、進撃の巨人の第1話で登場した兵士「モーゼス・ブラウン」というキャラクターもいます。彼は物語冒頭で巨人に殺された調査兵団の一人であり、彼の名前が薬に関係あるかは定かではありませんが、同じ姓である点が気になります。パラディ島内で「ブラウン」という名前を持つ人物が複数いることにも、何らかの意味があるのかもしれません。

進撃の巨人66話『願い』の感想・ネタバレ

進撃の巨人66話『願い』の感想動画

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