【進撃の巨人】第65話『夢と呪い』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人65話『夢と呪い』のあらすじ

「切り裂きケニー」として過ごしていた時代の、ケニーの回想。
ケニーは祖父から「アッカーマン家の迫害の歴史」や「レイス家が持つ特別な力」について聞いていた。

現在に戻り、レイス家の礼拝堂の地下室にて。
ケニーはロッドが語る真実を聞いて、自身の野望が潰えた事を知る。
武力で場を支配したケニーは、エレンに切り込みを入れ、ヒストリア・エレンのどちらも巨人になれる状況を作り出す。
エレンは父親の罪・自身が特別じゃないこと・ヒストリアの決意を知り、涙を流しながら「オレを食って人類を救ってくれ」と懇願する。
そして、巨人化の光が礼拝堂を照らす。

【時期】850年
【場所】パラディ島

進撃の巨人65話『夢と呪い』で発生した伏線・謎

Q地下街の娼館で働くケニーの妹クシェル
(16巻65話)

A
(17巻69話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(16巻65話)

A
(巻話)

進撃の巨人65話『夢と呪い』で解決した伏線・謎

進撃の巨人65話『夢と呪い』の表現・対比

進撃の巨人65話『夢と呪い』の考察・解説

進撃の巨人65話『夢と呪い』の考察・解説動画

サブタイトル『夢と呪い』の意味

ケニーの夢と、アッカーマン家の呪い。
エレンの夢。レイス家の呪い。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

アッカーマン家の真実とその歴史

アッカーマン家には本家と分家がある

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

物語の中で、ケニー・アッカーマンの過去が語られる場面があります。そこでは、ケニーの祖父が登場し、ケニーと以下のような会話を交わします。

ケニーは祖父にこう告げます。「やっと妹を見つけたよ。クシェルは地下街の娼館で働いていた。客の子を身籠ってな…それを産むっつって聞かねぇんだよ…」と。さらにケニーは、「分家の方だが…南のシガンシナ区の辺りに移ったそうだ…ただそこにも商売の邪魔をする奴らが現れて…どうにも…貧しいままのようだ」と話します。

ここで名前が挙がる「クシェル」や「分家」などを整理すると、アッカーマン家の家系図は以下のようになります。

  • ケニーの祖父

    • ケニー・アッカーマン(息子または娘の子)

      • 妹:クシェル・アッカーマン

        • クシェルの息子:リヴァイ・アッカーマン

一方、アッカーマン家には分家が存在します。分家の系譜は以下の通りと考えられます。

  • 分家の人物(詳細不明)

    • ミカサの父

      • ミカサ・アッカーマン

アッカーマン家が迫害を受ける理由

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ケニーの祖父は、パラディ島に隠された真実を語ります。
壁内の人類は、王によって記憶を改ざんされていること。王が目指しているのは、すべての人々の記憶を塗り替え、過去の歴史を根絶し、一糸乱れぬ平和を実現することでした。
しかし、アッカーマン家と東洋の一族は王による記憶改ざんの影響を受けず、その思想に異を唱え、王政に背を向けたために迫害を受けるようになった――そのような真実を、祖父から聞かされるのです。

さらに、ケニーの祖父によれば、アッカーマン家はかつて「王の側近の武家」として仕えており、壁の中に入る前からその地位にあったという真実を知ります。

ロッド・レイスとケニーの関係

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ケニー・アッカーマンは、かつてウーリ・レイスを深く信頼していました。しかし、ウーリの死後は、彼の兄であるロッド・レイスに従うようになります。ただし、ケニーとロッドの間に信頼関係はなく、互いに利用し合う関係に過ぎませんでした。

ケニーは、ロッド・レイスのもとで行われる「始祖の巨人」の継承儀式の機会を狙っていました。ロッド自身が始祖の力を継承するのではなく、それを娘のヒストリアに受け継がせようとしていた時期です。始祖の巨人とは、巨人の力の根源とされる能力で、記憶操作などの強大な力を持つ特別な存在です。この力はかつてロッドの弟・ウーリが持ち、後にグリシャ・イェーガーに奪われ、現在はエレン・イェーガーが継承しています。

ケニーは、この「継承のタイミング」までずっと機会をうかがっていたことが明らかになります。しかし、ロッド・レイスから「お前のような野良犬を引き入れたのはとちくるった弟の気まぐれにすぎない」と侮辱されると、ケニーは激昂します。

「それ以上ウーリを侮辱すれば、お前の頭が半分吹き飛ぶぞ。俺は構わねえ」と怒りを露わにし、ウーリへの変わらぬ友情と敬意を見せる場面です。

このように、ケニーの行動は単なる権力欲だけでなく、ウーリへの深い思いが根底にあることが示されます。

ケニーの夢は敗れる

ケニー・アッカーマンは、かつて始祖の巨人の力を手に入れて、世界の秩序をひっくり返すという野望を抱いていました。しかし、その力は「王家の血を引く者」でなければ扱えないことが明らかになり、彼の夢は潰えてしまいます。

その現実を悟ったケニーは、皮肉交じりに「どっちでもいい。ヒストリアでもエレンでも、勝手に争え」と言い放ちます。彼の態度には、夢を諦めた者の達観と、皮肉な優しさがにじんでいます。殺し屋として冷酷に振る舞ってきた彼にも、どこか人間的で慈悲深い一面があるのです。

ヒストリアへの忠告

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ヒストリアはロッド・レイスの言葉を信じ、まるで「ありがとう、お父さん」と言わんばかりに父親に心を寄せようとします。しかしケニーはそんな彼女に現実を突きつけます。

「騙されるな」とケニーは言います。ロッド・レイス家は、巨人の力をめぐる陰謀の中心にあり、ヒストリアもまたその道具にされかけていたのです。

ケニーの慈悲深さ

ヒストリアの母親を手にかけたのは、実はケニーでした。殺人はもちろん許される行為ではありませんが、その瞬間、母親はヒストリアに対して「お前なんか生まなきゃよかった」と呪いの言葉を投げかけようとしていました。ケニーは、その言葉を最後まで言わせないように、あえてその場で母親の命を絶ちます。この行動は残酷である一方で、ヒストリアの心をこれ以上傷つけさせまいとする、ケニーなりの優しさだったのかもしれません。

また、ケニーはリヴァイを幼い頃から育て上げた人物でもあります。血縁はあったにせよ、地下街の過酷な環境で彼を見捨てることなく守り抜いた姿には、人間的な情の深さが見て取れます。さらに、病に倒れた祖父のもとを見舞い、消息不明だった妹クシェルも探し出して見舞いに訪れるなど、ケニーは冷酷な暗殺者という表の顔とは裏腹に、思いやりや家族への情を持ち合わせた人物でもありました。

こうした一連の行動から、ケニーはただの冷血な殺し屋ではなく、むしろ深い慈悲を内に秘めた複雑なキャラクターであることがわかります。

王政の裏側を語るケニー

ケニーは、レイス家の真実をヒストリアに語ります。グリシャ・イェーガーがロッドの家族を襲い、王家の人々は一晩で命を落としました。ヒストリアのもとにロッド・レイスが現れたのは、それからかなり時間が経ってからでした。

「俺たち中央第一憲兵は、議会の命令で王家の汚れを清めようとしていた。ロッドとその娘、お前も例外じゃなかった」

それでもロッドは、ヒストリアだけは救おうとしました。彼はウォール教に監視を任せ、命をつなぎ止めたのです。ケニーはその裏側を冷静に明かしながらも、ヒストリアの立場を思いやるような口調でした。

この場面では、ケニーの野望と挫折、そして人間としての複雑な感情が浮き彫りになります。単なる敵役ではなく、信念と優しさの間で揺れる彼の姿は、作品の深みを支える重要な要素となっています。

レイス家の秘密

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

フリーダや他の家族が殺され、始祖の巨人の力を奪われたことを、レイス家はひた隠しにしていました。それは、自分たちが旧来の「神の力」を失ったことを民衆に知られるのを恐れていたからです。ケニーはこう語ります。「フリーダやガキ共が殺され『巨人の力』を奪われたことさえ隠そうとした!!『巨人の力』を奪われたレイス家が求心力を失うことを恐れたからだ!!あらましを白状し出したのはエレンが巨人の力を使ってトロスト区防衛戦に勝利した辺りからだ!!」と。

つまり、ロッド・レイスは表面上はヒストリアに優しく接しているように見えましたが、実際には始祖の巨人の力を取り戻すという利己的な目的のために行動していたのです。グリシャ・イェーガーによって力を奪われた後も、その事実を隠したまま、水面下で動き続けていました。

そして、エレンが超大型巨人によって開けられたトロスト区の穴を、巨人化して塞いだことをきっかけに、レイス家はエレンに目をつけます。「巨人があの穴を塞いだ?」「まさか、あいつが始祖の巨人を奪った張本人なのか?」という疑念が生まれ、エレンを捕らえようと動き始めたのです。

このとき、エレンを確保するためには中央第一憲兵団などの組織の協力が不可欠でした。そのため、レイス家は「始祖の巨人が奪われた」という真実を限られた者にだけ明かし、裏で動かしていたのです。

こうした事実は、憲兵団がエレンを強引に拘束しようとしたことや、調査兵団から彼を奪おうとした理由にもつながっていきます。また、グリシャの息子であるエレンを、なぜこれまで監視下に置かなかったのかという疑問も、ここで初めて明らかになるのです。

なぜロッド・レイスが始祖の巨人にならないのか?

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

物語の中でロッド・レイスは「私が巨人になるわけにはいかない。理由がある」と語りますが、その理由については明確には説明されていません。この発言は一種の謎として残されており、読者の間でもさまざまな解釈がなされています。

ただし、作中やロッド自身の言動から推測すると、彼が「自分は神に祈る存在である」と考えていた可能性があります。つまり、自らが始祖の巨人になり“神”になるのではなく、自分以外のレイス家の人間がその力を継承し、初代王の思想に染まった“神”として存在する。ロッド・レイスはその“神”に仕える存在として、祈りを捧げる役目を担っていたのだと考えられます。

また、ロッドは「子を残し続けることによってその秩序を絶やさない」ことも自らの使命と捉えていたようです。巨人の力を継承すれば、寿命は13年で尽きてしまいます。それでは、自分の役目を果たし続けることができないという思いもあったのでしょう。さらに、巨人を継承した者は初代王の思想に抗うことができず、その意志に完全に支配されてしまうという特性もあります。ロッドはそれを恐れていたとも考えられます。

諫山創先生のインタビューでもロッド・レイスについて語っています。

「もともと自分は観測者であるという思いや、レイス家の血筋を残すために、自分が子供を増やさなくてはならないと思っていたのかもしれません。『始祖の巨人』を次ぐことで初代王の思想に抗えなくなってしまうことも危惧していたんでしょう。」(諫山創「進撃の巨人 ANSWERS、講談社」)

これらは示唆されていた内容と一致しています。一方で、もっと単純に「巨人になるのが嫌だった」という個人的な感情が理由であった可能性も否定できません。

なお、最終的にロッド・レイスは自ら巨人化し、奇行種になってしまいます。この行動は、自分ではなくヒストリアに始祖の巨人を継承させる計画が失敗したため、やむを得ず取ったものと見られます。ただし、この“奇行種化”の正確な動機や理由については、作中で明確には語られていません。

いずれにせよ、「自らは巨人にならず、神に祈る存在であるべき」という信仰的な理由と、「初代王の支配から逃れるため」「死を避けるため」という現実的な理由が、ロッド・レイスの判断に影響を与えていたと考えられます。

エレンの自己否定

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

エレンは物語の序盤から「巨人を駆逐してやる」と強く願い続けてきました。自分には特別な力があると思い、その力で巨人を滅ぼす使命を果たそうとしていたのです。しかし物語が進むにつれ、彼はその“特別さ”が自分自身のものではなかったことを知ります。実際には、父グリシャが奪った始祖の巨人の力を偶然受け継いだに過ぎなかったのです。つまり、エレンは「特別な力を持った特別な存在」ではなく、「特別な父を持った普通の人間」に過ぎなかったと気づいてしまうのです。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

この事実に衝撃を受けたエレンは、自分が信じてきたもの、夢見てきたものの価値さえ見失っていきます。加えて、父グリシャが世界の平和を歪めた存在であり、自分もまたその後を継ぐ存在であると感じてしまうことで、ますます自己否定の感情を深めていきます。

そのタイミングでヒストリアが「私はエレンを送って姉さんを取り戻す。世界の歴史を継承し、この世から巨人を駆逐する。それが私の使命よ」と語ります。この言葉を聞いたエレンは、はっとした表情を浮かべます。彼女の使命感は、かつての自分と全く同じものでした。エレンは、自分がやらなくてもヒストリアが代わりに果たしてくれるのではないかと感じ、自分の存在意義すら揺らぎ始めます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

その後エレンは「俺には償いきれない。いらなかったんだよ。あの訓練の日々も、壁の外への夢も」と語り、自分のこれまでの人生すら否定してしまいます。そしてついには「俺はいらなかったんだ」と、自身を完全に否定する言葉を口にします。これは、彼の深い葛藤と自己嫌悪の表れです。

しかしこの重い言葉に対して、ヒストリアは「そんなことないよ」と優しく返します。この一言は、エレンの否定に対する救いのようなものであり、物語における大きな転機のひとつとも言えるシーンです。

ケニーのかっこよさと「生きる意味」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

今回の話ではケニーの人間味と格好よさが際立つ印象的な場面があります。私自身、ケニーというキャラクターがとても好きなのですが、特にこの回では彼の魅力がよく表れていました。

野望を抱きながらも、その夢が自らの手では実現できないと悟ったケニーは、ロッド・レイスから「自由に生きろ」と告げられます。しかし、それに対してケニーはこう返すのです。「寿命が尽きるまで息してろって、それが“生きている”って言えるのか?」——このセリフは、夢や目的を失った人間の虚しさを率直に表しており、非常に重みのある言葉です。

この言葉には、エレンの抱える苦悩や「自由を求めて生きること」の意義とも共通する部分があります。ケニーもまた、自分の信じた目標や生きる意味を追い求め、最後にはその限界に直面した人物でした。だからこそ、彼の言葉には深い共感が込められていて、ただ格好いいだけではなく、心に残るものがあります。

このセリフを通して、ケニーというキャラクターの本質や、『進撃の巨人』という作品全体に流れる「生きることの意味」や「自由とは何か」といったテーマを改めて感じさせられました。

記憶の中のフリーダ

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社

ヒストリアの回想に登場するフリーダは、当初は優しい姉のように描かれていますが、ヒストリアが鼻血を流している描写や、「柵の外に出ちゃダメ」という冷たい口調から、暴力や初代王の思想に影響された別の一面があった可能性が示唆されます。これにより、フリーダの中に「優しい人間」と「初代王の意思に支配された存在」という二面性があったと考えられ、王家の呪いや記憶操作による人間性の崩壊が、あの回想シーンに象徴的に表れていると言えます。

進撃の巨人65話『夢と呪い』の感想・ネタバレ

進撃の巨人65話『夢と呪い』の感想動画

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