この記事の目次
進撃の巨人123話『島の悪魔』のあらすじ
853年(ミカサの回想)
ミカサの回想回。
調査兵団がマーレ国に初上陸し、その文明驚く。
その中で、エレンだけは1人浮かない顔をしていた。
エレンはアズマビト家での話し合いから1人抜け出し、難民キャンプにて涙を流す。
探しに来たミカサに対して、エレンは「俺はお前の何だ?」と問い、ミカサは「家族」と答える。
その夜、調査兵団メンバーは、リヴァイの財布を盗んだ難民ラムジー達と、宴を開催。
翌日、最後の頼みの綱だった「ユミルの民保護団体」もパラディ島の味方ではないことが判明。
エレンは失踪し、単独行動を始める。
地鳴らし1日目
3重の壁が崩壊し、壁内巨人たちが地ならしを開始する。
ミカサとアルミンは動揺し、立ち尽くす。
そんな中、エレンが道を通じて、すべてのユミルの民に対して「パラディ島の外の世界を滅ぼす」と告げる。
進撃の巨人123話『島の悪魔』で発生した伏線・謎
(31巻123話)
Aアルミンたちがエレンを討伐し「英雄」とするために、自らが「巨悪」であることを印象づけた。
(34巻139話)
残された謎
進撃の巨人123話『島の悪魔』で解決した伏線・謎
進撃の巨人123話『島の悪魔』の考察・解説
進撃の巨人123話『島の悪魔』の考察・解説動画
サブタイトル『島の悪魔』の意味
パラディ島にいる人々が「島の悪魔」であるという世界の認識。
エレンが「悪魔」のような形相で、世界を滅ぼすことを告げた。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
ポイント
言葉を超えた「宴」から見えるエレンの心情
壁外の地で行われた、名もなき民族との飲み会。この場面は、エレンたちにとって最後の穏やかな一夜とも言える象徴的なシーンです。
まず注目したいのは、エレンの無警戒な姿勢です。相手は言葉の通じない異民族であり、少年ラムジーの使う言語は横文字で表現され、エレンたちの言語とは異なります。にもかかわらず、エレンだけが躊躇なく飲み物を口にする描写があります。
これは、得体の知れない飲み物に対する信頼、つまり相手を「敵」と見なしていない心の表れです。
さらに、食べ物を通じてキャラクターの心情を描く「フード理論」の観点から見ると、エレンが飲み干す姿には、心の開かれ方の違いが見えてきます。ジャンやコニーたちが後に続くように飲み始める中、エレンだけが頬を赤らめていない。つまり、酔うことを自分に許していないという意思のあらわれです。
また、ネクタイを最後まで締めているのもエレン一人。心からくつろぐことができず、心の底で「別れ」を悟っているかのような切なさがにじんでいます。
ラムジー少年の貧しさと一夜の夢
少年ラムジーは貧困に苦しむ民族の子供です。冬を越せず命を落とす人が毎年出る中で、スリをしながら生き延びてきた彼とその家族が、エレンたちに精一杯のおもてなしをします。
食卓に出された料理や割れたコップからは、持てるものすべてを差し出してくれた誠意が伝わってきます。ジャンやコニーが酒を持ち帰ってお礼をしたのも、そんな彼らのもてなしに心を打たれたからこそです。
この夜は、ラムジー少年たちにとっても夢のような時間だったはずです。だからこそ、その後彼らが命を落とすことの理不尽で耐え難い残酷さが浮き彫りになります。
ラムジー少年の再登場と「涙の理由」
ラムジー少年が初めて登場したのは第120話。そのときはすでに顔に痣があり、肩にエレンの手が置かれていました。実はこれは時間軸としては後の出来事であり、33話でマーレ人に暴行を受けた後、エレンに助けられた回想が描かれます。
そして第131話で再登場し、スリを働いてリヴァイに捕まりますが、その場の優しさで許されます。しかしその後もスリをやめることはできず、右手を切断されてしまうという過酷な運命を辿ります。
そんな少年を見て、エレンが流した涙。その理由は二重です。
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被害者としての共感
「自由を奪われている子供」として、自分自身と重ねた。 -
加害者としての自覚
自らの地鳴らしで、ラムジーの命を奪う未来を知っている。
この涙には、**エレンの中にある「人間らしさ」**と、「それでもやらねばならない現実」との間で揺れる感情が詰まっているのです。
エレンとライナー、「加害者の苦しみ」を共有する者同士
このエレンの葛藤は、レベリオでのライナーとの対話シーンでさらに際立ちます。
「お前、ずっと苦しかっただろう」
この言葉は、ライナーに向けたものでもあり、自分自身に投げかけた言葉でもあります。エレンは、ライナーのように被害者も加害者も理解し、そしてそれでも進まなければならないことを、痛いほど知っていたのです。
幼馴染3人の回想に込められた「もう戻れない時間」
この物語では、エレン・ミカサ・アルミンという幼馴染3人の回想が連続して描かれます。
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アルミンの回想(第106話)
「もしあの時、別の道を選べたら」と、後悔をアニに語りかける。 -
ミカサの回想(第123話)
「もし別の答えを選んでいたら」と、エレンの問い「俺はお前のなんだ?」に「家族」と答えたことを悔やむ。 -
エレンの回想(第130話)
「全ては俺が望んだこと」と、自分の行動を未来の記憶に導かれた結果だと語る。
ここで明確なのは、ミカサとアルミンは「過去をやり直せたかもしれない」と考えているのに対して、エレンは「すべては定められていた」と認識しているという点です。
言葉にできなかった「もう一つの選択肢」
エレンがミカサに尋ねた問い「俺はお前のなんだ?」には、「恩人」か「家族か」という二択しか提示されていませんでした。
しかし、本来あるべきもう一つの選択肢――**「好きだから」**という感情が、そこには存在していなかった。あえて触れなかったことが、二人のすれ違いを象徴しています。
エレンの成長と恋愛感情の気づき
エレンはウォール・マリア奪還作戦の際、ヒッチの恋心を理解できませんでした。しかし、ファルコに「優秀な候補生って女の子?」と尋ねたりする描写から、エレン自身も恋愛感情に対する理解が芽生え始めていたことが伺えます。
この4年間の間に、エレンの中でも心の変化があったことが示唆されています。
失われた希望と残酷な現実
ハンジやアルミンたちは、ヒストリアを犠牲にせず、パラディ島を守る方法を模索していました。その一環として、エルディア人の人権擁護団体と会見します。
しかし、そこで返ってきたのは、
「エルディア人の中でも、パラディ島の悪魔こそが罪深い存在」
という偏見でした。
わずかな希望を信じていた彼らにとって、その否定はあまりに残酷な現実だったのです。
細かな描写に込められた意味
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ミカサに届いた始祖の放送
アッカーマンは巨人科学の副産物でありながら、記憶の改ざんは受けずとも、始祖からの放送は届いたという事実。これは、**ミカサが「ユミルの民の特殊な変種」**であることを裏付けます。 -
エレンとアルミンのすれ違い
アルミンは「外の世界に来られた」と純粋に喜びますが、エレンはすでに未来の記憶でそれを知っている。「海の向こうはこうなんだ」と冷めた目で言うその姿に、二人の決定的なズレが描かれています。 -
キヨミ様の「冷静な視線」
ハンジが全力を尽くす中、キヨミは「左様でございますか」と距離を置いた返答。しかし第133話で「後悔が絶えることはありません」と語っており、あの時点では冷静に振る舞っていたものの、真意は別にあったことが示唆されます。 -
エレンの手紙の中身
ファルコを通じてパラディ島へ送られたエレンの手紙。その中身は「ジークにすべてを委ねる」といった淡々とした内容でした。大きな方針の転換が、手紙の一文に込められていたのです。
進撃の巨人123話『島の悪魔』の感想・ネタバレ
進撃の巨人123話『島の悪魔』の感想動画
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