この記事の目次
進撃の巨人97話『手から手へ』のあらすじ
回想(847年~850年?)
訓練兵として過ごすライナー・ベルトルト・アニ。
アニは夜な夜な、中央に忍び込む。
中央第一憲兵のケニーに見つかるなど、危険な橋を渡りながら、情報を得るために暗躍していた。
一方で、ライナー・ベルトルトは兵士として、平穏な日常を送っていた。
ライナーはエレンの頼れる兄貴として、エレンに「ただ進み続ける それしかねぇだろ」と助言をする。
現在(854年)
ライナーの回想が終わる。
精神が限界を迎えたライナーは銃を口に入れて、引き金を引こうとしていた。
しかし、ファルコが偶然立てた物音によって、我に返り、自分にはまだ戦士候補生を見守る役目があることを自覚する。
ファルコは、大切なガビを戦士にさせたくなくて、焦りを覚える。
そんな中、以前助けた腕章を逆につけた負傷兵と再会。
彼の「進み続けるしかない」という言葉を心に強く刻み込み、前向きになる。
更には、負傷に頼まれて、収容区の外のポストに手紙を投函する。
タイバー家当主ヴィリータイバーがマーレ軍本部を突然訪問する。
ヴィリーは、マーレ戦士隊の隊長であるマガトを認め、協力を仰ぐ。
進撃の巨人97話『手から手へ』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人97話『手から手へ』で解決した伏線・謎
進撃の巨人97話『手から手へ』の表現・対比
進撃の巨人97話『手から手へ』の考察・解説
進撃の巨人97話『手から手へ』の考察・解説動画
サブタイトル『手から手へ』の意味
ライナーがエレンに「進み続ける」意思を伝える。
その気持ちがエレンからファルコにも続いていく。
一方、エレンはファルコに手紙を託す。
マガトはヴィリー・タイバーの手を取り、マーレ国の立て直しに協力する。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
ポイント
ケニーとアニ
アニが「私、あなたの子供かもしれない」とケニーに語った際、ケニーは「妹に誓ってねえな。それは俺が一番笑えねえ類の冗談だ」と答えます。この言葉の背景には、ケニーの妹クシェルの過去が深く関わっています。
クシェルは売春宿で客との間に子をもうけ、その後悲劇的な人生を歩みました。そんな妹を思うケニーにとって、アニの発言は冗談では済まされないものでした。中央第一憲兵団に入ったアニの存在をケニーが覚えていれば、彼女はただでは済まなかったはずです。その意味でも、ケニーはギリギリの綱渡りをしていたと言えるでしょう。
ライナーの心の崩壊と「進み続けろ」の真意
ライナーの精神状態が限界を迎える場面は読者に強烈な印象を残します。パラディ島への再出発が決まった時、「またあの島に行くのか…」という言葉には、地獄を見た彼の本音が滲んでいます。
この回想の中で、彼はかつて自殺した農夫の話と自分の過去を重ね合わせます。その農夫が「子供を捨てた」と語ったのと同様、ライナーもまた「誰かを見捨てた」という罪を背負っているのです。そして、自分を二重人格のように分裂させながら兵士としての仮面をかぶり続けてきました。
かつてエレンが泣き崩れ「何もできないまま終わるのか」とつぶやいた時、ライナーは彼に「進み続けろ」と語りかけました。これは、ライナーがかつて自分自身に言い聞かせた言葉だったのです。
英雄という幻想にすがったライナー
ライナーが「進み続けろ」と語った背景には、かつて抱いていた「英雄になる」という幻想があります。自分の力で母親を救い、名誉マーレ人としての地位を確立し、エルディア人を誇り高く生きさせたいという願い。
しかし、そのすべてが崩れ落ち、ライナーは「自分で自分の背中を押した人間が見る地獄」に身を置くことになります。これは諫山先生が描く進撃のテーマの一つであり、「誰かに押された地獄」ではなく、「自分で選んだ地獄」を歩む姿です。
エレン・ライナー・ファルコに継がれる「進撃する意思」
興味深いのは、ライナーがかつてエレンにかけた「進み続けろ」という言葉が、今度はエレンからファルコへと引き継がれる点です。ファルコもまた「自分には力がない」「このまま終わるのか」と自信を失いかけた瞬間がありました。
しかしエレンは、かつて自分がライナーからもらった言葉を今度はファルコに投げかけます。これにより、ファルコは次第に表情を取り戻し、「やるべきことをやるだけ」と前を向くようになるのです。
地獄を見る者たちと、それでも進む者たち
エレンは「こんな世界、誰も戦場に行かなかったら、こんなことにはならなかった」と語りながらも、「進み続けるしかない」と言い切ります。これは、父グリシャがかつて「こんな代償が必要なら、自由なんて求めなかった」と後悔した言葉と通じています。
進撃の巨人の物語では、理不尽な現実に直面した者たちが、それでもなお進む姿を描いています。ライナーも、エレンも、ファルコも、それぞれの立場で「前に進むしかない」ことを理解しているのです。
ケニーの哲学とライナーの苦悩
「みんな何かに酔っ払っていないとやってられなかった」——ケニーのこの言葉は、ライナーの生き様を表すものでもあります。ライナーは「英雄になる」という幻想に酔っていなければ、生きていくことができなかったのです。
兵士としても戦士としても評価されず、罪を背負ったまま生きるライナーは、それでもなお「進み続ける」ことを選びました。誰よりも矛盾を抱えながら、前へ進むその姿に、進撃の巨人という物語の核心が垣間見えます。
このように、ライナーという人物の内面に深く踏み込んでみると、彼がただの「敵キャラ」ではなく、エレンと同じように自分の意志で地獄に足を踏み入れた存在であることが分かります。読者の皆さんも、ぜひ彼の視点から物語を再読してみてください。新たな発見があるはずです。
進撃の巨人97話『手から手へ』の感想・ネタバレ
進撃の巨人97話『手から手へ』の感想動画
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