【進撃の巨人】第31話『微笑み』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人31話『微笑み』のあらすじ

憲兵団に入団したアニたち新兵は、調査兵団の王都召喚似辺り、ストヘス区の護衛を任される。
腐った憲兵団を正そうとするマルコや、同室のヒッチたちに対してアニは自分の思いを語る。
任務の途中、アルミン・ミカサ・エレンが「エレンを逃がすことに協力してほしい」とアニに頼む。
しかしアニは、アルミンの狙いを見破り、自身が女型の巨人であることをカミングアウトする。

【時期】850年
【場所】パラディ島 ストヘス区

進撃の巨人31話『微笑み』で発生した伏線・謎

Qアニがアルミンの提案に乗りながらも、指輪をつけた理由
(8巻31話)

A指輪の中の刃物を使えば、指先だけ動かして、巨人化が可能。アルミンの提案に乗った時点で、アニは最悪のケースを考えていたと分かる。
(8巻32話)

Qアニとアルミンの恋心(「良い人」「傷つくよ」発言)
(8巻31話)

A
(巻話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(8巻31話)

A
(巻話)

進撃の巨人31話『微笑み』で解決した伏線・謎

進撃の巨人31話『微笑み』の表現・対比

進撃の巨人31話『微笑み』の考察・解説

進撃の巨人31話『微笑み』の考察・解説動画

サブタイトル『微笑み』の意味

嘘を付く必要がなくなって解放されたアニの微笑み
参考進撃の巨人作者のブログ記事
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

疲れているアニ

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

今回の話は巨大樹の森の戦いから数日後のことです。アニが「女型の巨人」であることが物語冒頭から色々と示されているので注目です。ヒッチが「あんたのさぁ…寝顔が怖くて起こせなかったんだ」「ごめんねーアニ」と言うと虚ろな目をした疲れ切った表情のアニが倒叙うします。珍しく髪の毛がはねて寝癖も付いています。アニは壁外調査に行った調査兵団たちを「女型の巨人」として襲いエレンを捕獲しようとしました。アニの作戦は失敗し、その過程で多くの人を殺しています。アニ自身も命からがら逃げてきたのです。この「寝顔が怖い」という表現はアニが悪夢を見ている、ということを示唆しています。

憲兵団の仲間、ボリスが「アニはあのトロスト区から来たんだぞ」「まだ癒えるわけがないだろ地獄を見てきたばかりなのに」とアニをフォローします。

この言葉は半分当たりで半分間違いです。実際に見てきた地獄というのはトロスト区での出来事ではなく、自らが女型として戦いに行った壁外調査での地獄だからです。

自分の背中を押して地獄を見たという話です。数日の出来事なので「地獄を見てきたばかり」「精神的・身体的に疲れが癒えていない」という部分は当たっています。

エレンの行方を気にするアニ

憲兵団の上司が「調査兵団の一行が王都へ召喚される件だ」と言ったときにアニが「…!」と反応します。これは調査兵団の同期が心配なわけではなく、エレン巨人の行方を気にしているからです。

マルロ・フロイデンベルク

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

おかっぱ頭のマルロ・フロイデンベルクという兵士はエレンと同様に特殊な人間です。マルロは腐った憲兵団を自分が正すという考えを持っています。彼が大真面目な人間だと分かるコマがあります。憲兵団の上司が敬礼をするマルロたちに「いーってそんなの」と言います。敬礼を辞める仲間の中でマルロだけは敬礼を崩しません。そんな姿から少し変わっている人間だということが分かります。兵団のために本気で心臓を捧げていて、正義のために戦う意思を感じます。後にマルロは王政のやり方に異を唱え、調査兵団に身を捧げる人物です。

腐った憲兵団

憲兵団の上司は新兵に仕事を任せて飲酒やカードゲームをしています。

アニメオリジナルでは憲兵団の備品を横流しして金銭を受け取っています。その様子をマルロたち新兵に見られ、「市民の血税であり備品の横領はいけない」と指摘されます。激昂した上司たちはマルロを殴ります。それをアニやヒッチのフォローや市民から見られていることもあり場は収まります。

「憲兵団を正しくするために来た」と語っていたマルロは嘆きます。

普通の人間になりたい

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「ただ普通の人間に戻す…それだけだ」「人本来の正しい姿に……」と語るマルロに普段、無口なアニが語ります。

その会話の中で普通の人間の定義がマルロとアニで違うという部分がポイントです。マルロは自分のこと以外も考えるのが正しい姿であり、普通の人間の姿である、ということ。そこから堕落して自己中心的な人間は理性の無い動物と同じだと言います。

アニはそんなマルロの考えを否定はしていません。そして、自分の都合や自分のことだけ考える人間は正しくはないけれども、それも普通の人間なんじゃないの?と問いかけます。

つまりアニは「自分も普通の人間だ」と主張しているのです。この「普通の人間」に関してマルロとアニでは意見の相違があるのは確かです。アニの心理に踏み込むとさらに意味が変わってきます。

「私は…ただそうやって流されるような弱いヤツでも人間だと思われたいだけ…」「それだけ」

このアニの言葉の裏には、自分は残虐非道で人間性がない巨人ではなく、普通の人間だと思われたい、ということが含まれているのでしょう。

アニはマーレ国で生まれ、戦士として育てられました。それはマーレ国の事情や与えられた教育によって成り立っています。つまり、時代や環境という大きな流れに流された結果、女型の巨人として人を殺すことになったのです。流されるような弱いヤツ、とは自分のことであり、アニも人間だと思われたい、と心の内を語っています。

※マルロがアニの話を聞いて「(変わるべきなのは人じゃなくて…仕組みの方なのか…?)」とモノローグで語ります。これは市民や兵団も知らない裏の部分がある、というような含みを持たせた表現であり、王政編へ繋がる伏線にも見えます。アニメでは当時の時点では重要視されなかったのかカットされています。

エレンを尊敬

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

この時に「大きな流れに逆らうってとても勇気がいることだから」「尊敬するよ」と言っています。この時、アニの脳裏にはエレンが浮かんでいます。この様子からアニはエレンを尊敬していたことが分かります。

アルミンがアニの協力を仰ぐ

女型捕獲作戦失敗により、エレンの引き渡しが決まった調査兵団はなんとかエレンを逃がそうとしています。

表向きの作戦

現在はジャンがエレンの影武者として馬車で移送されている状況です。その間、エレン、ミカサ、アルミンは審議会勢力から身を隠そうとしています。一見、調査兵団のマントのように見える羽織ですが「荷運び人」の変装をしています。

ここでアルミンが憲兵団のアニに検問所の突破を頼みます。もし、アニの協力がなければ立体機動装置で逃げるつもりだったと語ります。ストヘス区内に入ったのも入り組んだ地形が替え玉作戦を成功させること、従順に振る舞って警戒を解くこと、とアルミンがとっさに嘘をついてアニを説得します。

裏の目的

以上が表向きの作戦で、本来の目的は女型の巨人の正体のあぶり出しです。その疑いのかかっているアニを捕獲するつもりで調査兵団全体で動いています。

アルミンの賭け

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

アニとの会話の冒頭、アルミンの表情が曇っています。これは嘘をついていることへの罪悪感があるのかもしれません。「エレンが殺される」の部分は真実なので目に力が入り、熱量も感じられます。

アニは一度、アルミンの頼みを断ります。エレンが身を隠している間、アルミンは「審議会勢力をひっくり返す材料を揃える」と言うのです。「根拠は?」と汗をかきながらアニが問うと「ごめん言えない…」とアルミンは答えます。巨人に関する情報、特に女型の情報であるならば、アニやマーレ戦士にとっては不利な話です。

「良い人」と「悪い人」

アルミンの頼みを断るアニが「私がそんな良い人だと思うの?」と問います。それにアルミンが「自分にとって都合の良い人をそう呼んでいるだけであって、すべての人にとって都合が良い人なんていないと思う…」と語ります。良い人、悪い人というのは根っこの問題ではなく、立場によって定義が変わるものだということです。

アルミンは、この交渉に応じないということは「アニは僕にとって悪い人になるね…」という脅し文句で賭けに出ます。つまり、敵である疑いがかかるけどいいよね?ということでしょう。

その言葉を聞いたアニは何かを考えたあとに「いいよ」「乗った」とアルミンに協力することを決めます。アニはアルミンが自分の正体が「女型の巨人」であることを見破っていて、戦いになる可能性があると感じています。そうなった時のために巨人になれるようにトゲがついた指輪を装着します。

この時点のアニはまだアルミンが自分の正体を見破っていると確信はありません。それにアルミンの良い人でありたいという気持ちがあったと思います。指輪を使わずに済む可能性も信じていたでしょう。いずれにせよ、アルミンの推理により疑惑が縣けられている可能性があるならば逃げることは得策ではなく、有事に備えることが精一杯という状況です。

追い詰められるアニ

エレン、ミカサと合流したアニは、アルミンに地下通路を通るように誘導されます。地下通路を通る理由については第32話『慈悲』で語られます。

か弱い乙女

地下通路に入るのを拒むアニにエレンは「まさか暗くて狭いところが怖いとか言うなよ?」と言う場面でアニは「そうさ怖いんだ。あんたみたいな勇敢な死に急ぎ野郎にはきっとか弱い乙女の気持ちなんてわからないだろうさ」と語るのです。

マルロとの会話でもあったようにアニは普通の人間だと思われたいという気持ちがあります。この「か弱い乙女」というのも冗談のように聞こえますが、普通の人間でありたい、か弱い乙女でありたい、という気持ちの表れなのだと思います。

死に急ぎ野郎

第23話『女型の巨人』でアルミンが女型との戦いでトラップ的に仕掛けた「死に急ぎやろう」という言葉がここでも使われています。

104期生しか知らないエレンのあだ名に反応したことがきっかけで女型の本性がアニへと絞られている様子も第32話『慈悲』で語られます。

アルミンを殺さなかったアニ

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

アニ自身もアルミンを殺さなかったことに関しては悔いています。「心底そう思うよ。まさかあんたにここまで追い詰められるなんてね」「あの時…何で…だろうね」と言っています。今思えば殺しておけばよかった、と思っているアニは人間性を捨てきれてなかったことが分かりますし「何でだろうね」という言葉からそれらは無自覚だったということです。

アルミンとアニの関係はお互いを認め合う仲であり、お互いに信じたいと思っている仲でした。第21話『開門』でアニはアルミンが調査兵団に入ることに対して「あんた弱いくせに根性あるからね」と認める発言をしています。アルミンもまた「アニってさ…実はけっこう優しいね」と返していました。この場面でアルミンはアニが死亡したマルコの立体機動装置を持っていたことに実は気づいていました。それでもアルミンはその情報を報告しませんでした。アルミンはアニと友人関係でいたいという気持ちがあったからでしょうしょう。

アニ側もアルミンが友人として自分を信じてくれているだろうという気持ちから女型としてアルミンと対峙した際にあえて殺さずに見逃したのだと思います。

最終的にアルミンはアニが女型の本性なのではないかと推理をしてエルヴィンに報告し、現在に至ります。

アルミンが賭けに勝った

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「アルミン…私があんたの…良い人でよかったね」「ひとまずあんたは賭けに勝った…」とアニは語ります。ここで言う「良い人」とはアルミンの言う「都合が良い人」のことをであり、ここで皮肉を言っています。これがこのアニとアルミン駆け引きで非常に面白かったところです。

「戦士に成り損ねた」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「進撃の巨人」の世界では「兵士」と「戦士」という言葉が度々登場します。「兵士」はエレンたちのようなパラディ島の兵団の人々です。一方で「戦士」はマーレ国の知性巨人の力を与えられた者のことを指します。

アニはマーレ国から来た戦士であり、パラディ島では兵士の振りをして過ごしていました。「私は戦士になり損ねた」の意味はアルミンを殺さなかったことやパラディ島の兵士として感情移入したこと、人間性を捨てきれなかったことを表しています。

19巻第77話「彼らが見た世界」でトロスト区奪還作戦をマーレ戦士の目線で描かれます。マルコがライナーとベルトルトの会話を聞いてしまったことで口封じの為にアニが立体機動装置を外します。パラディ島の兵士たちに情が移っていることをライナーに指摘されたアニは「戦士」である証明の為に辛い役回りを引き受けたのです。ライナーは「それでこそ戦士だ」とアニを褒め称えていました。

「兵士」と「戦士」については読み返してみるとその使い分けに納得します。10巻では第39話「兵士」、第42話「戦士」とサブタイトルに使用されています。

アニの笑顔

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

正体がバレたアニの「ニチッ」という笑顔が印象的です。

このアニの表情は、とても難しかったとのこと。様々な感情がない交ぜになった、微妙な表情に苦労したそうだ。

(進撃の巨人 INSIDE 抗、諫山創、講談社)

漫画でのこの笑顔はアニメ版では高笑いとして表現されています。

諫山先生のブログ

このアニの笑顔の表現について諫山先生のブログ「現在進行中の黒歴史」の「アニメ23話の質問に関して」の記事に詳細があります。

単行本が世に出た後でも、もっとこうしたかったという
心残りが強くあったので、こんな風に提案させていただきました↓

という文章とともに監督に送ったという絵が添えられています。アニの「あは…」という笑顔から「やんちゃにニチッ」という笑みを浮かべるアニの口元が描かれていました。さらにメモの文章には以下のように書かれています。

「今まで作ってきた厨二のキャラを指摘されたように悲しく開き直る『照れ笑い』」

「もうウソをつく必要がなくなった開放感」

「普通の16才の女の子のようになる」

「罪悪感・孤独感・恐れ」

一番のポイントは嘘をつく必要がなくなり普通の16歳の女の子になったので、この笑顔を見せたという所です。

ブログではさらにこのように書かれています。

要するに、アニにはあそこで素になるべきだと思ったのです
あれだけのことをやった怪物の正体が
ただの悪い奴に見えるのではなく
「普通の人間」だったって感じにしたかったんです

後のインタビューでも語っています。

諫山「嘘をつけない性格の人が、嘘をつき続けるしかない状況にあった。その辛さから開放されたのが、あの時の笑いなんです。」(進撃の巨人 ANIMATION SIDE 吼 、諫山創、講談社)

「アナと雪の女王」の覚醒したエルサようにありのままの姿をさらけ出すカタルシスのようなものを感じます。ありのままの自分をさらけ出して素になった笑顔や笑いが表現されています。

ストヘス区の場所

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

8巻以降、地理関係も複雑になります。地理関係の解説記事はこちら

基本的にアニとエレン達がいるのがウォール・シーナ、東城壁都市の中のストヘス区という所です。アニが憲兵団として所属しているのがストヘス区支部という部署になります。

調査兵団たちはエレンの身柄を引き渡すため、ウォール・シーナの中の王都、つまり壁内の中心へ向かっている所です。

 

進撃の巨人31話『微笑み』の感想・ネタバレ

進撃の巨人31話『微笑み』の感想動画

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