【進撃の巨人】第30話『敗者達』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人30話『敗者達』のあらすじ

ミカサとリヴァイが女型の巨人からエレンを取り戻すべく戦う。
リヴァイの命令を無視してミカサは単独行動し、リヴァイは傷を追う。
なんとかエレンを取り返し、壁外調査から帰ってきた調査兵団だったが、市民の目は厳しかった。
調査兵団は成果を残せなかったため、責任者が王都に収集、更にはエレンの引き渡しも決まった。

【時期】850年
【場所】パラディ島 巨大樹の森

進撃の巨人30話『敗者達』で発生した伏線・謎

Q女型の巨人が涙を流す理由は?
(7巻30話)

A殺したくて殺しているわけではない。エレンを奪うことができずマーレ国に帰ることが遠いのたから。
(巻話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(7巻30話)

A
(巻話)

進撃の巨人30話『敗者達』で解決した伏線・謎

進撃の巨人30話『敗者達』の表現・対比

1少年エレン&ミカサは、壁外調査から帰ってきた調査兵団を見る。
(1巻1話)

2名もなき少年少女は、第57回壁外調査から帰ってくる調査兵団を、輝く瞳で見る。エレンは少年の目を直視できず、目をそらす。
(7巻30話)

進撃の巨人30話『敗者達』の考察・解説

進撃の巨人30話『敗者達』の考察・解説動画

サブタイトル『敗者達』の意味

女型の巨人捕獲に失敗した調査兵団と、エレン捕獲に失敗した女型の巨人。
それぞれが敗者だった。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

 

リヴァイの気持ちが切なすぎる

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

撤退命令後、リヴァイがリヴァイ班のもとへ急いで駆けつけます。リヴァイ班のメンバーは女型を引き付ける役目だったので「無事に逃げられただろうか…」という心配もしていたでしょう。それに何も知らないで囮役のような立場を任せてしまったので精神的にも混乱しているでしょうし「大丈夫だったかな…」と心配している気持ちもあるでしょう。

そんな気持ちでリヴァイ班を見に行くと…全員死んでいる。という展開です。

一人一人の顔を見ていきます。側に近づいて声をかけたり安否を確認したりということはせず、生きているのか死んでいるのかということを判断をして、どんどん進んでいきます。

前回の第29話「鉄槌」の時点でリヴァイはエレン巨人の咆哮を聞き「(この声…まさか…)」とエレン巨人が戦っていることを察しています。女型を逃して、リヴァイ班が全員殺されている、さらにエレン巨人の声もするという状況なので一刻も早くエレンの元に進まなければいけません。

ペトラのエピソード

ペトラの表情を見て何とも言えない顔をしているリヴァイ。リヴァイはペトラに対して特別な感情があったのかもしれません。

ペトラはリヴァイのことを深く尊敬し、慕っていました。その敬意や愛情は上司としてだけでなく恋愛感情としての愛もあったのではないかというエピソードがあります。女型捕獲作戦が失敗に終わり、調査兵団が壁内に撤退した場面でリヴァイにペトラの父親がやって来て語りかけます。

「娘が手紙をよこしてきましてね…腕を見込まれてリヴァイ兵士長に仕えることになったとか」「あなたに全てを捧げるつもりだとか…まぁ…親の気苦労も知らねぇで惚気けていやがるワケですわ」「父親としてはですなぁ…嫁に出すにはまだ早ぇかなって思うわけです…あいつもまだ若ぇしこれから色んなことがー」

このセリフからペトラはリヴァイに全てを捧げる気持ちで仕えていたことが分かります。さらに手紙を見た父親がペトラをリヴァイに嫁に出すということを連想するほどペトラの思いや愛を感じたのではないでしょうか。その現実を突きつけられるリヴァイの絶望的な表情が辛いです。

ペトラの父親の感情

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「リヴァイ兵士長殿!!娘が世話になってます!ペトラの父です!娘に見つかる前に話してぇことが…」と言って調査兵団の元に駆け寄ってくるペトラ父。どんな感情を持っていたのか気になります。

建前としては娘がリヴァイ兵士長にお世話になっているのでどうしても挨拶がしたくて話しかけにきた様子にも見えます。

本音の部分は少し穿った見方をするとペトラがいないことを不安に思って話しかけた所もあるでしょう。ペトラはリヴァイ班に所属しているはずなのでリヴァイの近くにいるはずなのに、見当たらない…。ペトラ父はペトラが死亡したことを考えたくもないでしょう。ペトラ父の引きつったような笑顔と汗をかいている表情は本音と建前が入り混じった表情かもしれません。

アニメオリジナルでより残酷な世界へ

アニメではリヴァイ班のそれぞれの家族が彼らの帰りを待っているシーンが描かれます。エルドは母と恋人、オルオは両親と兄弟たち、グンタは母と祖父です。

調査兵団は女型との戦闘後にリヴァイ班の遺体を持って帰ろうとします。しかし、巨人に襲われやむを得ず放棄するのです。その結果、リヴァイ班の家族は遺体にすら会えなくなってしまします。

リヴァイの想いを考察

リヴァイは別れをたくさん経験しています。リヴァイ班のメンバーをはじめ、調査兵団のメンバーとはいつか別れるが来るのではないか、死んでしまうもではないか、という心持ちでいるのです。その心構えがあるので仲間たちに過度な感情移入をできるだけしないようにしているはずです。

これは憶測ですがペトラに対して好意があったとしても感情を押し殺し、表には出すことはなかったでしょう。この辺りは公式で語られていないので解釈は読者に委ねられています。

未熟なミカサ

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

リヴァイとミカサは女型からエレンを取り返そうとします。リヴァイの「エレンを食うことが目的かもしれん。そうなればエレンは胃袋だ。普通に考えれば死んでる」に対してミカサは「生きてます」と答えます。

生きていることに確信がないことを分かっているリヴァイは「だといいな」と答えるとミカサは「あなたがちゃんとエレンを守っていれば、こんなことにはならなかった」と責めます。

エレンを助けるため協力し合うリヴァイに対してこの態度はエレンを奪われた恨みを解消したい個人的な感情といえます。この時点のミカサは幼く、未熟者とも言えます。

状況を把握したリヴァイが冷静に「女型の巨人を殺すことは無理だ」「エレンを奪還することだけ考えろ」と指示します。

少年漫画的な展開であれば「仲間の仇だ!倒すぞ!」という流れになりそうです。しかし、戦局的に正しいことは何か?優先順位を付けて考えるというのが面白いです。

ミカサの因縁

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

ミカサはリヴァイに対して「あなたがちゃんとエレンを守っていればこんなことにはならなかった」と責めていますが過去にもリヴァイに因縁を付けていることがありました。

1回目は兵法会議でエレンを執拗に殴っていたリヴァイを見て「…あのチビは調子に乗りすぎた…いつか私が然るべき報いを…」と怒っていました(5巻第22話「長距離索敵陣形」)。このミカサの因縁が今後の作戦に影響してきます。

ミカサに責められたリヴァイがなんとも言えない表情をします。この表情の意味は「俺の選択は正しかったのだろうか…」という自問自答にも見えます。

もしも、リヴァイがリヴァイ班と共にエレンを守っていたらエレンは奪われなかったかもしれません。女型を撃退することもできていたかもしれないです。

リヴァイはミカサがエレンの友人であることに気づきます。

「あの時のエレンのなじみか」という「あの時」とは5巻第19話「まだ目を見れない」の兵法会議のことでしょう。リヴァイはエレンを奪還することを決断します。

リヴァイの複雑な表情はエレンが奪われてしまったことへの責任を感じているのか…あるいは、エレンを何としても助けようとするミカサの姿を見て大事な人の為に戦う姿に羨ましさのような感情を抱いているようにも見えます。

アッカーマンの共闘

6巻第23話「女型の巨人」でアルミンは女型を仕留めることは「人間の常識に当てはめた限りでは不可能」と想像しています。同時にミカサとかリヴァイのような常識を超えた強さを持つアッカーマンであれば可能かもしれない、と予想します。

超強いリヴァイ

リヴァイ班が完敗だった女型に対してリヴァは1人で斬り掛かっています。攻撃が速すぎて女型の硬質化が間に合わない、というのがリヴァイの圧倒的な強さを物語っています。

指示を聞かないミカサ

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

ミカサは女型のうなじががら空きであることを見て「殺せる」と、留めをさそうとします。リヴァイが「よせっ!」と言いますが指示を聞きません。「!?」と反応したにも関わらず、指示を振り切って攻撃してしまいます。この時のミカサの表情は「いや。私はやる!」という目をしています。エレンを奪われた怒りに燃えるミカサは感情的になっていますし、リヴァイに対して因縁も持っている状態なので指示を聞かずに行動してしまうのです。

女型のこの時の状態はリヴァイに両目を潰され、肩の筋肉も斬られています。口の中のエレンを救うには充分な損傷を与えられています。

目が見えない女型は感覚だけで抵抗します。肩にミカサのアンカーを刺された女型は「ピクン」と反応し、うなじを狙われていることを察します。それをリヴァイ兵長は見ていたのでミカサを制止しようとしたのです。

女型はわずかに上がる前腕と手首を使ってミカサを払い落とそうとします。結果的にリヴァイが身代わりになり、足を負傷する展開になります。感情が先立ってしまったミカサに対して、リヴァイは「作戦の本質を見失うな」「自分の欲求を満たすことの方が大事なのか?」と諭します。

リヴァイの「お前の大切な友人だろ?」のセリフでミカサのハッとした表情が描かれます。次ページでミカサが小声で「ちがう」「私は…」と呟いていますが、これは感情的になって指示を聞かなかった行動に対しての「ちがう」なのか、それとも「大切な友人」というエレンとの関係性に対しての「ちがう」なのか、どちらの解釈とも取れるように描かれています。

※アニメでは女型がミカサにうなじを狙われることを予想して硬質化をしています。その他のアクションシーンなどからもミカサの攻撃速度はリヴァイに及ばないということが分かります。アニメオリジナルで無垢巨人に襲われる場面が描かれます。調査兵団がやむを得ず、リヴァイ班の遺体を囮として手放しますがリヴァイのこの怪我がなければ無垢巨人を討伐できたかもしれません…

「女型の巨人」の涙

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

 

女型の涙には「作戦に失敗してしまった」という悔しさや故郷に帰る可能性が遠のいてしまったことも悲しさもあると思います。さらに、あれほど激しい戦闘をして捨て身で戦ったのに何の成果もなかったという思いもあるでしょう。

アニは「女型の巨人」として多くの人々を殺していましたが、全ては作戦成功の為に夢中で戦い続けていたのです。そして、戦いが一段落し、疲弊し切って冷静になったアニは全て無意味だったことを実感します。

第31話「微笑み」でアニは「普通の人間」と思われたいと語っています。「か弱い乙女」という言葉も出てきます。「普通の人間」でありたいアニですがそうではなくなった、ということを実感したシーンなのだと思います。

リヴァイが涙を見ている理由

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

エレンを奪還してリヴァイが振り返ると女型が涙を流している様子が描かれています。女型が涙するシーンは読者だけが見ているのではなく、リヴァイが振り返り「!?」と反応しているのです。このリヴァイが女型の涙に気づくシーンはあえて描かれているように思います。女型の悔しさの涙であれば読者だけが見ていても成り立ちます。それらを踏まえて女型の涙の意味をさらに考えてみます。

第27話「エルヴィン・スミス」でリヴァイがこんな質問をしてました。

「お前は確か色々なやり方で、俺の部下を殺していたか、あれは楽しかったりするのか」

この質問をされたときは女型は拘束されていましたし、言葉を発することができない女型は返事はできません。

女型の涙はこのリヴァイの「問い」に対する「答え」という見方もできます。人を殺すことが楽しいのか?に対しての返答としての涙は「やりたくてやっているわけではないんだ」ということです。読み返してみると、アニのマーレ戦士としての使命や戦うことでしか生きられない状況、悲しみや苦しみ、罪悪感など…様々な感情が表されている場面なのです。

設定の現実味

エルヴィン率いる調査兵団の目的は「壁内の敵を見つけること」「エレンという大事な巨人の力を守る」ということです。さらに、今回の作戦を成功させて兵団の上層部や王政に対しエレンが人類にとって有用であることを示すことも必要です。

そのために壁外調査という名目で女型の巨人捕獲作戦を実行したわけですが、失敗に終わります。この失敗というのが実は深刻な問題でなのです。

壁外調査というのは多額の税金で行われているのです。調査兵団の食料等補給物資、武器や兵器の開発費用なども含まれています。馬についても細かな設定があります。調査兵団の馬は特別に品種改良された馬であり非常に高価であり、馬1匹の値段は平均的な庶民の生涯年収に相当する、とあります(第5巻『現在公開可能な情報』10.調査兵団の馬)。その馬も負傷・死亡しています。

とにかくお金が掛かっている上に多くの兵士が死亡しているので市民から反感をかっています。

『今回の壁外遠征に掛かった費用と損害による痛手は調査兵団の支持母体を失墜させるのに十分であった』『エルヴィンを含む責任者が王都に招集されると同時にエレンの引き渡しが決まった』 

と、あるように調査兵団がエレンを管理し人類の味方であることを示すことは叶わなくなった、ということです。エレンの身柄が引き渡されるということはエレンの生存も危ぶまれてしまうということです。巨人対人間だけでなく、背景に政治的な問題も描かれているのがリアリティがあって面白いです。

進撃の巨人30話『敗者達』の感想・ネタバレ

進撃の巨人30話『敗者達』の感想動画

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27話『エルヴィン・スミス』
28話『選択と結果』
29話『鉄槌』
30話『敗者達』

31話『微笑み』
32話『慈悲』
33話『壁』
34話『戦士は踊る』

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