【進撃の巨人】第94話『壁の中の少年』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人94話『壁の中の少年』のあらすじ

現在(854年)

エルディア人兵士たちは、4年ぶりに故郷の「マーレ国レベリオ収容区」に帰ってくる。
ファルコは腕章が逆の負傷兵に手を貸し「もうあなたは…戦わなくていいんですから…」と優しさを見せる。

ガビとライナーは、親戚一同で、食卓を囲む。
ガビは中東連合での自身の活躍を嬉々として語る。
一方ライナーは、パラディ島潜入時代の思い出を懐かしみながら話すが、家族の反応は冷たかった。

回想(840年代)

ライナーは実家のベッドで、戦士候補生時代を思い出す(回想)。
ライナーが戦士を志したキッカケは「母カリナが、別れたマーレ人の父親と、再び暮らせるため」だった。
過酷な訓練の末、7人の戦士候補生に選ばれたライナーは、9つの巨人継承者を目指す。
しかし「9つの巨人」の数は6つだけ。ドベを避けて、巨人を継承する戦士を目指してライナーは訓練を続ける。

少年ライナーが「悪魔を成敗し、世界を救う、世界一の自慢の息子になる」ことを夢見るその頃、
少年エレンは毎日に退屈し「何か起きてほしい」と願っていた。そこへアルミンが本を持ってきて…。

進撃の巨人94話『壁の中の少年』で発生した伏線・謎

Qマガトがエルディア人兵士たちとその家族を見つめる
(23巻94話)

A
(32巻129話)

Qファルコが右腕に腕章をつけた謎の男を助ける
(23巻94話)

A
(25巻99話)

Qマガトのエルディア人の呼び方「豚の末裔」
(23巻94話)

A
(30巻122話)

Q戦士候補生時代のアニが虫を踏み潰す描写
(23巻94話)

A
(31巻125話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(23巻94話)

A
(巻話)

進撃の巨人94話『壁の中の少年』で解決した伏線・謎

進撃の巨人94話『壁の中の少年』の表現・対比

進撃の巨人94話『壁の中の少年』の考察・解説

進撃の巨人94話『壁の中の少年』の考察・解説動画

サブタイトル『壁の中の少年』の意味

レベリオ収容区の壁の中にいるライナー&ベルトルト。
パラディ島の壁のにいるエレン&アルミン。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

ポイント:ライナーの絶望と「悪魔」の正体

マーレ編に潜む希望なき継承

ガビと重なるライナーの苦悩

ライナーがレベリオ収容区の実家に帰還した場面で、ガビが「あなたはきっと誰よりも立派な戦士になるわ」と笑顔で語るシーンがあります。

その言葉に対し、ライナーは複雑な表情で見つめています。

両親は戦士となった息子を誇らしげに迎えますが、ライナーはその「戦士」という肩書の裏側にある地獄を知っています。

ライナーの心には、かつて自分が母親に送り出された日の記憶と、ガビの姿が重なって見えていたのでしょう。

自らが体験した「壁内の地獄」を家族に語る場面では、「壁の中の人間は悪魔なんかじゃなかった」と明かしますが、母親はそれでも「島の悪魔が滅びればいい」と口にします。

このように、現実と理想、教育と経験、真実と嘘の狭間で苦しむライナーの葛藤が、静かに浮かび上がります。

理解されない孤独と、かすかな希望

ライナーの絶望には、「誰にも自分の苦しみを理解されない」という孤独感が深く根付いています。

しかし、わずかにその痛みを汲み取ってくれたのがガビでした。

「ライナーだって辛いんだから」と語るガビの言葉に、ライナーは少しだけ希望を感じますが、すぐに「島には悪魔が住んでいる」とまた語られてしまい、理解されかけた気持ちは否定されてしまうのです。

かつてはベルトルトという親友が側にいたライナー。しかし今はもういない。

誰にもわかってもらえない苦しみの中で、ライナーはひとり耐え続けています。

ライナーの心情を物語る「悪魔」という言葉

このエピソードでは「悪魔」という言葉が繰り返し登場します。

・ベルトルトの「悪魔の末裔」

・中東連合兵の「汚れるぞ、悪魔」

・ライナーの母の「島の悪魔が消えればいい」

「悪魔」とは何なのか?

世界側の人々にとっては、巨人化能力を持つユミルの民全体を指す言葉。

一方、マーレ政府の教育を受けたエルディア人は、パラディ島の民だけを悪魔と呼んでいます。

これは、「悪魔」が主観的で、教育や立場によって意味が変わることを示しています。

ライナーの母親は「自分たちは善良なエルディア人だ」と主張しますが、それ自体が差別を受け入れてしまっている構造の一部でもあります。

この構図こそが『進撃の巨人』における「呪い」とも言えるテーマの一端です。

「英雄になる」夢がもたらした地獄

ライナーが語った「俺は英雄になる」という願い。

それは純粋な少年の夢でした。

しかしその夢の代償はあまりにも大きく、ライナーを深い絶望へと突き落としました

この対比は、エレンとの描写によってさらに浮き彫りになります。

空を通して繋がるエレンとライナー

本話のラストでは、幼少期のエレンとライナーが空を見上げるシーンが対比的に描かれます。

・エレンは「何か起きねぇかな」と壁の向こうの世界に憧れを抱く

・ライナーは「俺は世界一の息子になれるのに」と夢に胸を膨らませる

壁の中と外、敵と味方、島と大陸。

それらを隔てたはずの空を、同じ空として描くことで、彼らの純粋な想いの共通性が強調されます。

彼らは「自由」や「英雄」といった理想を掲げましたが、その理想のために地獄を味わうことになります。

ライナーの変化と成長

・ライナーの身長は4年間で3センチ伸びたが、体重は12キロ減少

 → 肉体的な変化が、彼の心の消耗を象徴しています。

・ライナーは戦士候補生の中では最下位の成績

 → しかし「マルセルの代わりになる」と決意してから努力し、104期生ではミカサに次ぐ実力者に。

この「無能から努力で成り上がる姿」は、エレンとも共通する点です。

レベリオ収容区の現実とマーレ人の冷たい視線

戦地から帰還したライナーたちを迎えるマーレ人たちの視線は、冷たく、差別的です。

彼らは命を懸けてマーレのために戦ってきたにもかかわらず、エルディア人であるというだけで見下されているという現実があります。

一方で、家族たちが収容区にまとめられているのは、人質として戦士たちを縛るためでもあります。

ジークの伏線:未完の勤め

祖父母に「立派な勤めを果たした」と言われたジークは、「まだだよ」と答えます。

これは一見、獣の巨人としての任務が終わっていないという意味に思えますが、ジークの本当の「勤め」は安楽死計画にあります。

このさりげないやりとりも、後の展開を知った上で読み返すと、深い含みがあった伏線として機能します。

伏線:エレンとファルコ、初めての邂逅

エレンは精神病院に潜伏しており、ファルコと偶然のように接触します。

この病院にはジークの祖父が勤務しているため、ジークとエレンの接触も自然に見せることができるという設定。

伏線として、「逆側の腕章」や「左手の欠損」なども丁寧に描かれています。

アニの再登場と命への価値観

アニの過去回想では、虫を潰す無表情なシーンが描かれます。

この行動は、アニの命に対する希薄な価値観や、父親からの抑圧といった背景を象徴しています。

「命というものに価値があるとは思えなかった」と語るアニの心理は、後の決意や変化への伏線として機能しています。


まとめ:ライナーは「誰よりも人間らしい悪魔」だった

ライナーは、悪魔と呼ばれる者たちの中で、最も人間らしく、最も苦しみ、最も誰かを救おうとした人物の一人です。

彼の絶望と、そこに芽生えたかすかな希望。

それらを通して、『進撃の巨人』が描く「悪魔とは何か」「人間とは何か」という問いかけが、読者の胸を強く打つのです。


進撃の巨人94話『壁の中の少年』の感想・ネタバレ

進撃の巨人94話『壁の中の少年』の感想動画

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