この記事の目次
進撃の巨人63話『鎖』のあらすじ
礼拝堂地下室で、エレンに触れたヒストリアは「幼少期にフリーダという女性と過ごしたこと」を思い出す。
ロッド・レイスは、エレンの父親グリシャが、レイス家を殺し、巨人の力を奪った罪を告げる。
ロッドは、動揺するヒストリアに「姉さんに会いたいか?」と訪ね、巨人化注射を取り出す。
一方その頃、ハンジ達はレイス家の礼拝堂に向かっていた。
リヴァイはミカサに「アッカーマンの力の覚醒」について尋ねる。
時同じくして、エルヴィンが調査兵団の兵士を連れて、礼拝堂を目指して走り出す。
進撃の巨人63話『鎖』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人63話『鎖』で解決した伏線・謎
進撃の巨人63話『鎖』の表現・対比
進撃の巨人63話『鎖』の考察・解説
進撃の巨人63話『鎖』の考察・解説動画
サブタイトル『鎖』の意味
エレンを拘束する鎖
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
グリシャのロッド・レイス襲撃について

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
まず、グリシャがロッド・レイス家を襲撃する場面が回想として描かれます。グリシャはフリーダたちに向かって叫び、結果的に一族を襲撃するという衝撃的な展開です。
しかし、この時点ではグリシャの行動が本人の意思によるものと思われていましたが、物語が進んで第121話「未来の記憶」を読むと、真相が明らかになります。実は、未来のエレンが「進撃の巨人」の能力を使い、過去のグリシャに対して行動を命じていたのです。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
第121話の描写では、グリシャの背後にエレンの姿があり、「今すぐ壁に攻めてきた巨人を殺してください。妻や子どもたちが食われてしまう前に」と懇願するようなセリフが示されます。
グリシャは本来、医師として人命を重んじる人物であり、人を殺すことに強い抵抗がありました。しかし、エレンの干渉によって、彼はフリーダたちを襲撃し、「始祖の巨人」の継承者であるフリーダを捕食します。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
この襲撃によって、ロッド・レイス家の家族はフリーダを含めて5人が殺されてしまいました。唯一、生き残ったのがロッド・レイス本人です。
彼は後に、「家族は叩き潰され、踏みつけられ、握り潰された」と証言しています。その場にグリシャがいたほどの至近距離にいたにもかかわらず、ロッドだけが無傷だったことには不自然さがあります。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
この疑問に対する答えも示唆されます。未来のエレンが「父親(ロッド・レイス)は残せ」と命じたような描写があるのです。実際、グリシャが「エレン、レイス家を殺したぞ。父親以外は。それで良かったのか?」と問いかける場面が存在します。
このことから、ロッド・レイスをあえて生かすよう、未来のエレンが明確に指示していたことが読み取れます。
リヴァイがアッカーマン一族だと気づくまで

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
リヴァイがアッカーマン一族であることは、読者にとっては周知の事実です。しかし、物語内でリヴァイ自身がそれを自覚したのは、ケニーとリーブス商会会長の会話がきっかけでした。
ケニーが会長に「リヴァイ・アッカーマンって知っているか」と語り、「あいつは俺の誇りだ」と述べることで、リヴァイの姓が初めて明かされます。つまり、ここで読者は彼がアッカーマン家の一員であることを確認することになります。
その直前、第15話では、リヴァイが中央第一憲兵の兵士から「ケニー・アッカーマン」という名前を耳にします。その情報を受けて、第16話ではリヴァイがミカサに問いかけます。
「ケニーにも、力が目覚めた瞬間があった。お前にもあったか?」
ミカサが肯定すると、リヴァイも次のように語ります。
「ある時、ある瞬間に、突然バカみたいな力が体中から湧いてきて、何をどうすればいいかが分かった。その瞬間が俺にもあった。」
この発言から、リヴァイはケニーやミカサと同じように“アッカーマンの力”が覚醒した経験があると自覚します。そして自らもまたアッカーマン一族の出身であることに気づくのです。
リヴァイはおそらく自分の姓すら知らなかったため、この気づきは彼にとって大きな意味を持ったはずです。育ての親であったケニーとの関係にも新たな疑問が生まれたことでしょう。
エレンとヒストリアの共通点と葛藤

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
第63話では、ヒストリアを巨人化させようとするロッド・レイス卿の姿が描かれます。彼はヒストリアに向かって「姉さんに会いたいか」と語りかけ、「会いたい」と涙を流します。これは、フリーダ(ヒストリアの姉)の記憶が今もなお生きていることを示す場面です。
このとき、エレンの脳裏に浮かんだのは、自分と父グリシャの記憶でした。幼いエレンに向かって「母さんの仇はお前が討つんだ」と語るグリシャ。そしてそれに「分かった」と応えるエレンの姿。これは、エレンが一方的に役割を押しつけられた過去を象徴する記憶です。
エレンは、ロッド・レイスとヒストリアの姿に自分と父の姿を重ね、ヒストリアに同じ苦しみを味わわせたくないと強く思います。だからこそ、彼は巨人化を止めようとしたのです。
エレンとヒストリアの重なる描写
エレンとヒストリアには、以下のように多くの共通点があります。
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どちらも母親が目の前で死亡している
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突然「巨人の力」という大きな力を与えられている
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一時的に自信を喪失している
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理不尽な父親に一方的な役割を押しつけられている
こうした要素が共通していることから、エレンはヒストリアの立場や心情に深く共感しているのです。だからこそ、自分と同じ道を歩ませたくないという強い思いが、行動の原動力になっていると読み取れます。
ロッド・レイスがエレンにヒストリアと共に触れた理由

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
物語のある場面で、ロッド・レイスはヒストリアと共にエレンに触れます。これはエレンの記憶を呼び起こすためだと説明されていますが、もしそれが目的であれば、ロッド・レイス一人が触れれば十分だったはずです。では、なぜヒストリアも同時に触れる必要があったのでしょうか。
その理由の一つは、ヒストリアを巨人に変身させるために、過去の記憶を思い出させたかったからだと考えられます。後の場面でケニーは、「ロッド・レイスがヒストリアを大切に思っているはずがない」と語っています。もし本当に大切に思っていたのであれば、幼少期からもっと良い暮らしをさせていたはずです。つまりロッド・レイスは、ヒストリアを道具として利用しようと考えていたのです。
ヒストリアがフリーダの記憶を取り戻す意図
エレンに触れたことで、彼自身の記憶がよみがえっただけでなく、ヒストリアにも影響が及びました。彼女はかつて遊んでくれた女性、フリーダ・レイスの記憶を思い出します。フリーダはロッド・レイスの娘であり、ヒストリアの異母姉にあたります。
このことから、ロッド・レイスがエレンにヒストリアを触れさせたのは、ヒストリアの中に眠るフリーダの記憶を呼び起こす目的もあったと推測できます。そして実際にロッド・レイスは、記憶を取り戻したヒストリアに対し「姉さんに会いたいか」と問いかけています。これは、彼の計画の一部としてヒストリアの感情を操作しようとしたことを示唆しています。
始祖の巨人の「記憶消去能力」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
2つ目の注目ポイントは、「始祖の巨人」が持つ記憶消去能力です。
第16話でピクシス司令が語っているように、王政の人間からの情報によって、この能力が実際に存在する可能性が高まります。ピクシスは「レイス家は人類の記憶を都合よく消去できる。ただし、その影響を受けない血族もいるようだ」と語ります。
これは、エルヴィンの父が抱いていた「人類の記憶が改ざんされているのではないか」という仮説を裏付ける内容です。実際、ロッド・レイスも「フリーダはお前(ヒストリア)を気にかけ、時折面倒を見ていた。ただし、自分の存在をお前の記憶から消していた。それはお前を守るためだった」と語っています。これによって、始祖の巨人が人の記憶を操作する能力を持つことが明示されました。
ピクシスの信念と行動原理

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
このエピソードでは、ピクシスが持つ信念も描かれます。彼はエルヴィンやザックレーとともにクーデターを実行しましたが、その動機は他の2人と異なっていました。
エルヴィンやザックレーがある種の「理想」や「個人的な正義」を追求していたのに対し、ピクシスの行動原理は一貫して「人類の生存」でした。彼は次のように語っています。
「わしはお主(エルヴィン)と違って賭け事はこのまま。そして、お主ら(ザックレーたち)と違って、己よりも人類の生存数を尊重しておる。」
この言葉からも分かるように、ピクシスは自己の利益や名誉ではなく、「民間人を含む人類全体の命」を最優先に考える人物です。
他の幹部たちとの違い
また、ナイル・ドークというキャラクターもクーデターに加担します。彼は「家族が巨人に襲われたら困るから避難させろ」と願い出て、結果的にクーデター側に協力します。つまり、彼は「家族を守る」という個人的な理由で動いたのです。
それに対してピクシスは、私情を挟まず、ただ人類全体のために行動するという立場を取り続けています。このように、同じクーデターを起こした幹部たちの中でも、ピクシスだけが唯一「利己的ではない」存在として描かれているのです。
このような彼の立場は、後のマーレ編でも一貫しており、誰の味方というわけでもなく、常に「人類の生存」を最優先に行動していることが分かります。
進撃の巨人63話『鎖』の感想・ネタバレ
進撃の巨人63話『鎖』の感想動画
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