この記事の目次
進撃の巨人99話『疾しき影』のあらすじ
タイバー家の宣戦布告が始まる直前、アズマビト家がヴィリーのもとを訪れる。
当主のキヨミは挨拶を済ませ、イベントを見ないで、帰路につく。
ヴィリーは演劇仕立てで、エルディア帝国とマーレ国の歴史を語る。
そして、この世界を脅かす敵はパラディ島に住む「エレン・イェーガー」だと告げる。
一方その頃、イベント会場近くの地下室で、エレンとライナーは4年ぶりの再会を果たす。
ファルコ・ライナーは予想外のエレンの存在に動揺を隠せない。
顎髭の長身兵士は、ガビとピークを嘘の用事で呼び出し、落とし穴にはめる。
宣戦布告の裏で、それぞれの思惑がうごめく…。
進撃の巨人99話『疾しき影』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人99話『疾しき影』で解決した伏線・謎
進撃の巨人99話『疾しき影』の表現・対比
進撃の巨人99話『疾しき影』の考察・解説
進撃の巨人99話『疾しき影』の考察・解説動画
サブタイトル『疾しき影』の意味
疾しい気持ちを持っていて裁かれたいライナーや、開拓地のおじさん。
ヴィリーの演説で出てくる偽りの歴史を表す影絵。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
おすすめ
今回の第99話「疾しき影」と第100話「宣戦布告」はセットで読むことをおすすめします。ライナーとエレンの会話、ヴィリーの演説などが第99話〜第100話に跨って描かれています。今回の解説も第100話に関しても触れています。(第100話「宣戦布告」解説記事はこちら)
エレンとライナーの会話
ファルコ伝いに地下室に呼び出されたライナーはエレンと対面します。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
エレンは、ライナーたちが置かれた状況をあらためて整理するように語ります。彼らは幼い頃からマーレの洗脳教育を受け、何も知らないままパラディ島へ「始祖奪還作戦」に送り込まれました。
その事実を踏まえて、エレンは「何も知らなかっただろう…」と語りかけます。第100話では、さらに「無知」や「環境」のせいで地獄に足を踏み入れてしまった、そして「仕方なかった」と続けます。運命的なものであり、世界の構造上避けられなかったのだと、理解を示しているようにも聞こえます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
作中にたびたび登場する「この世界は残酷だ」という言葉。この視点で考えると、自分を優先すれば誰かが犠牲になるという構図が浮かび上がります。それでも、誰かが選択をしなければならない。それをエレンは「仕方ないよな」と語っているのです。
ライナーの表情

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ライナーとエレンの会話では、ライナーの表情が細かく描き分けられており、注目すべきポイントです。
・不用意な発言はできない
・エレンが何を考えているのか
・何を言うべきか
──そんな思案をめぐらせながら、ライナーはエレンの言葉に耳を傾けています。
ライナーの大義
ライナーが動機として持っていたのは「世界を救う」という大義よりも、「英雄になりたい」「母親に褒められたい」「家族と普通に暮らしたい」といった、きわめて個人的な理由でした。
もちろん、世界を救いたいという思いがなかったわけではないでしょう。しかし、パラディ島に潜入したのちは、自分を正当化するために「世界を救う」という大義名分を後付けしていたとも考えられます。
これは現実世界における「成功した起業家が後になって立派な動機を語る」ような構造に似ています。──本当は「金持ちになりたい」「有名になりたい」という動機だったものを、後になって「社会の役に立ちたかった」と語るような欺瞞。それにライナー自身も気づき始めていたのです。
このあたりの詳細は、次回の第100話でさらに明らかになっていきます。
鋭いピーク

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ポルコとともにイェレナに呼び出されたピークですが、彼女はこの状況に強い疑念を抱いています。「どこの所属ですか?」と尋ねたり、顎髭について探るような質問をして、イェレナがボロを出すのを待っています。
この「付け髭」の伏線は、第105話「凶弾」で明かされます。また、ピークがパンツァー隊にさりげなく助けを求める描写も注目です。イェレナに怪しまれないよう気を配りつつも、仲間を頼る慎重な行動が描かれています。
世界の歴史
フリッツ王や巨人大戦について真実が明らかになっていきます。
145代フリッツ王がしたこことは…

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
・タイバー家と結託
・英雄へーロスを裏から支援
・巨人大戦を内戦に変える
・エルディア国民をパラディ島に移住させる
・不戦の契りにより始祖の力を封じる
これらの真実は、ヴィリー・タイバーの演説によって明かされます。しかし同時に、彼の演説は「事実」と「物語」を使い分けています。
タイバーの語る「真実」は、あくまで都合のよいストーリーでもあるのです。これは第95話「嘘つき」でジークが語った「大事なのは物語(ストーリー)だ」という言葉とも響き合っています。
なぜエレンはファルコに話を聞かせた?

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ライナーの居場所をファルコが他人に漏らすことを防ぐ意図もありますが、それ以上にファルコに「話を聞かせる」こと自体が重要だったように思えます。
この構造は、後のエレン・ミカサ・アルミンの話し合いの場に、あえてガビを同席させるという演出にも共通しています。
「次世代の象徴である子どもたち」に語ることで、エレンは未来に何かを託そうとしていたのではないでしょうか?
──たとえば:
・憎しみの連鎖を止めたい
・壁の中も壁の外も同じ存在である
・洗脳された教育は、当人には自覚できない
・エレン・イェーガーをただの悪者として扱う構図に気づかせたい
などが考えられます。
キヨミの思惑と行動

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
この時点でヒィズル国のキヨミがどこまで知っていたのかは明らかではありませんが、彼女がエレンやジークを繋げる協力をしていたことは後に分かります。
ヴィリーとの挨拶の後にすぐ場を離れていることからも、襲撃が起こることを事前に知っていた可能性は高いでしょう。
ヴィリーとの会話

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
アニの父親

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
タイバー家は作戦をどこまで知ってた?

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
舞台に登場する前のヴィリー・タイバーは、明らかに汗をかいていました。彼はマガトと協力し、幹部たちを一箇所に集めるなど画策していました。レベリオ収容区の住民や国の大使といった要人、そして自らの犠牲も厭わず、世界に向けて宣戦布告する覚悟を持っていたのです。しかし、予想を超える事態が起こったことは間違いありません。
【アニメ解説記事について】
アニメの対応話数はファイナルシーズンPart1-5(64話)「宣戦布告」です。こちらの記事でも詳しく解説しています。
進撃の巨人99話『疾しき影』の考察・解説
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