【進撃の巨人】第36話『ただいま』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人36話『ただいま』のあらすじ

巨人発見から8時間後(エルミハ区:ウォール・シーナ南区)

東班の調査兵団兵士が、ウォール・ローゼ内に巨人が発生した事実を伝える。

巨人発見から8時間後(トロスト区:ウォール・ローゼ南区)

南班の調査兵団兵士が、ハンネスと打ち合わせをしているピクシス司令に、巨人が発生した事実を伝える。

巨人発見から5時間後(ダウパー村に向かう道中)

北班のサシャたちが、ダウパー村の途中にある村を訪れる。
ほぼすべての住人は退去済み。しかし、少女カヤと足の悪い母親だけが残されていた。
サシャは勇気を出し「自分の言葉」を発して、少女カヤを奮い立たせる。
巨人を倒すことはできなかったが、偶然通りかかったサシャの父親がサシャとカヤを救う。

進撃の巨人36話『ただいま』で発生した伏線・謎

Qサシャが助けた少女カヤ
(9巻36話)

Aサシャが助けた少女カヤは、サシャの家族が住むブラウス厩舎にお世話になっていた。サシャを殺したガビは、カヤとサシャの関係を知らないまま、カヤと接することに。
(27巻109話)

Q巨人がサシャの予想以上に早く村にたどり着いている。奇行種か?
(9巻36話)

Aサシャの予想よりも早く北上していたのは、出現した場所がウォール・ローゼではなく、ラガコ村だったため。
(11巻46話)

Qサシャ父は「王政から対価を支払う代わりに馬を育てろ」と言われている
(9巻36話)

Aサシャ一家はダウパー村を出て、ブラウス厩舎で馬を育てている。
(27巻109話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(9巻36話)

A
(巻話)

進撃の巨人36話『ただいま』で解決した伏線・謎

進撃の巨人36話『ただいま』の表現・対比

進撃の巨人36話『ただいま』の考察・解説

進撃の巨人36話『ただいま』の考察・解説動画

サブタイトル『ただいま』の意味

故郷に帰ったサシャの最後の台詞
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

今回のポイント

今回の話は北班のサシャが故郷のダウパー村付近の住民の避難に向かう話です。その中で訓練兵になる前のサシャやサシャの父親について語られます。さらにカヤという少女が登場します。カヤは後に重要なキャラクターになるので見ていきましょう。

カヤという少女

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

カヤの初登場シーンは「進撃の巨人」史上、屈指のグロテスクなシーンです。これはカヤが自分の母親が巨人に食われていて、この状況を直視できず放心状態で壁を見つめている状態です。無垢の巨人が淡々と母親を食っているというのが恐ろしいです。

注目なのは次ページで風景が移り変わる所です。カメラで言えば視点を引いて、一見のどかな村が映し出されます。それはのどかというには静かすぎるのが不自然であり、人が誰もいないというのが不穏さを感じます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

さらに次ページでは鳥が虫を捕食しているコマが描かれています。

日常の光景ですが、先ほどのカヤの母親が食べられているという描写の後に映ることで世界は残酷であること、弱肉強食の世界を表していることが分かります。

そんな残酷な世界の中でサシャがカヤを助けに来ますが、すべて救われる訳ではありません。カヤの母親は捕食されて意識が朦朧としています。サシャは助けられないと判断し「ごめん…なさい」と言ってカヤを助け出します。

人間の残酷さが分かる現実としてカヤの村の人々はカヤの母親とカヤを置いて逃げたということが判明します。サシャが助けに来る場面は希望ですがその原因は人間の残酷さが生んでいたのです。

カヤの再登場

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

カヤは第108話「正論」で再登場します。見た目も精神的にも成長したカヤがマーレ国のガビと対峙します。カヤの考え方や生き方はサシャが大きく影響していることが分かる名場面です。

サシャの父親

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

サシャへの教育

サシャの父親は世界を俯瞰して見ることのできる人物です。それが分かるのが第111話「森の子ら」です。サシャを殺したガビの行為を「赦す」という展開があります。

サシャの父親は憎しみが連鎖する殺し合いの状況を「森」という比喩表現で語ります。そして、子どもたちを「森」から救うことが大人の責任だと語ります。

そんな人格者のサシャの父親がサシャに対する教育について冒頭で描かれます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

訓練兵になる前のサシャが登場します。食欲に抗えず備蓄の肉を強奪するサシャに対してを父親は呆れます。そして、サシャに世界について語ります。

「お前はこの世界がどうなってるか考えたことがあるんのか?」「なぜここ数年森が減って獲物が獲れなくなってきとるか…考えたことはあるか?」

サシャは返します。

「よそ者が来て森や獲物を横取りするからやし…だからハラ減る」

サシャの父親は自分達の森と世界はつながっていることを語ります。サシャの言う「よそ者」という人々は同じ世界の住民であるということです。

森を切り開いて穀物を植える方が多くの人の腹を満たすことができるので、自分たち狩人の一族も狩りをやめて、農耕の為に森を明け渡すべきかもしれないと言っています。

サシャは、狩りをやめたら自分たちではなくなる。なんで他人の為に自分の行動を変えなきゃいけないのかと語ります。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「我々は世界に生かしてもらっとるからなぁ…」「人間は群れで生きる動物だ。違う生き方をしている人間も限られた環境の中では同じ群れに入って人と関わらなきゃいけない」

人間は群れで生きる動物だから他の群れとも協力して、生きていくことが必要だ、とサシャの父親が言います。世界は繋がっていることを受け入れるよう説得します。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「世界と繋がる」というのは「進撃の巨人」全体に通じるテーマとも言えます。パラディ島の人々が外の世界と繋がれるのか?世界から受け入れてもらえるのか?力を持ったエレンが世界と繋がっていけるのかという話にも繋がっていきます。

サシャ

訓練兵団に入った理由

サシャは父親から問われます。

「お前は他者と向き合うことは…お前にとってそんなに難しいことなんか?」

他人に自分を見せるのが怖いんだろう、ということを言われてサシャは「そんなことない!」ということで故郷の森を飛び出していきます。そして訓練兵に入団したのです。

敬語で話す理由

サシャは同期にも常に敬語で話すキャラクターです。その理由は方言が出てしまうことへの不安があるからです。森で暮らしていた自分が世間知らずであることや知識不足であることがバレて馬鹿にされるのではないか?という怖さもあるのでしょう。

そのため他者と向き合い関係を築いたり、自分の言葉で話すということを避けてきたのです。

ちなみにサシャの方言は日田弁が使われています。

受け入れられたサシャの言葉

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

サシャは調査兵団の104期生の仲間と仲良くなったあとも敬語で会話しています。その理由としてサシャがカヤを助ける場面で訓練兵団時代の回想がヒントになります。

ユミルとクリスタ(ヒストリア)との会話の中で、ユミルが「なんでお前は敬語なんだ?気持ち悪い」「お前はずっと人の目を気にして作った自分で生きていくつもりかよ」「そんなのはくだらないね!いいじゃねぇか!お前はお前で!!お前の言葉で話せよ」と言います。

サシャはこの言葉に「お前はお前でいい」「自分の言葉で話す」ということに衝撃を受けます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

さらにクリスタが「サシャにはサシャの世界があるのだから、今だってありのままのサシャの言葉でしょ?私はそれが好きだよ!」と語るのです。

ユミルが言った「敬語やめろ」という言葉とヒストリアの「敬語のままでもいいんだよ」という言葉にサシャの様々な不安や恐怖の気持ちが溶かされていきます。サシャは「自分が受け入れられなかったらどうしよう」という不安な気持ちをずっ抱いていました。森から出て外には出たものの、受け入れられなかったら怖い、という気持ちから敬語を使って自分に壁を作ることを自然としていたのです。

そんな状況でユミルに言われたのは「自分が受け入れられなかったらどうしようとかって悩んではいけない。悩みながら一生生きていくのは辛いだろう?受け入れられなくてもいいから自分らしくあれよ!」とサシャに言います。一方でクリスタは「今の状態もひっくるめて、サシャはサシャのままでいいよ」と承認をしています。サシャを承認するということについては二人が言っていることは一緒です。

ユミルが「物はいいようだな…」と言うようにありのままのサシャを承認している二人の言葉は一見違うように見えて本質は一緒なのです。

サシャという人間の無条件の肯定がここで描かれてます。これはサシャが特別な能力があるから認められるというものではありません。ユミルとクリスタはサシャという人間そのものを認めてくれる仲間ということです。奇しくもこの時の三人はずっと人の目を気にして生き方を変えてきた3人だったというのが深くて良いシーンです。だからこそ、ユミルもクリスタもサシャの気持ちが分かるのでこのような言葉をかけてあげられたのでしょう。

サシャの成長

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

食われる母親と取り残された少女、カヤを助ける場面でサシャの成長を感じます。

サシャはカヤに対して敬語を使っています。心を閉ざしたカヤにサシャの言葉は届いていません。そんな状況で先程の回想が挟まります。

サシャはユミルとクリスタの承認によって世界と繋がることは怖くないという気持ちに気づきます。それによってサシャはカヤにこんな風に言葉をかけます。

「ねえ、聞いて。大丈夫だから。この道を走って。弱くってもいいから。あなたを助けてくれる人は必ずいる。」

先ほどまで敬語を喋ってたサシャが自分の言葉でカヤに語りかけます。「助けてくれる人は必ずいる」という言葉は世界や他者を信じているから出る言葉です。サシャは世界と繋がることができているという場面です。

村の人に見捨てられ、他人を信じることができなくなったカヤは絶望で瞳の光を失っています。しかし、このサシャの言葉によってカヤの瞳に光が灯りはじめます。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

そして、サシャの「走らんかい!!」という言葉でカヤの心は生きる力を取り戻します。絶望とショックで動けなかったカヤは助けてくれる誰かを信じて力強く走り出す、という展開になります。

他者を信じ、受け入れられるようになったサシャの変化はカヤへ影響を与えました。サシャの変化がカヤに受け継がれたというエピソードです。

父へ「ただいま」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

サシャは父親に「まともな人間になるまでは帰ってくるな」と言われたとコニーと語っていました。今回のエピソードではサシャがサシャの父親と会って、こんな言葉をかけられる。

「サシャ立派になったな」と言葉をかけられます。サシャは「ただいま」と返す。この話のタイトルも「ただいま」というのがここで分かります。サシャの成長の物語でした。

小ネタ

裏話

サシャはネームの段階ではカヤを助けたタイミングで死ぬ構想だったらしいのです。その後、諫山先生が考えを変えて「一見それだと格好良いけど死ぬのはここじゃない、もっとふさわしい場所があるのではないか」ということで、この後もしばらく生き延びたという裏話もあります。編集者である川窪さんのインタビューでも語られています。

構図

冒頭にサシャが父親から肉を強奪する場面があります。右手で相手の顎を押さえて動きを封じる技です。結果的にこの技でサシャは肉を食べることできました。この技を同じ構図で無垢巨人相手に繰り出します。これは自分が食われないようにする技として登場するのが面白い演出です。ぜひ見返してみてください。

進撃の巨人36話『ただいま』の感想・ネタバレ

進撃の巨人36話『ただいま』の感想動画

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