【進撃の巨人】第45話『追う者』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人45話『追う者』のあらすじ

トロスト区

ピクシス司令、エルヴィン達が待つトロスト区。
ウォール・ローゼの壁の穴を確認しに行った先遣隊が帰ってきて「異常なし」と報告をする。
途中で遭遇したハンジ率いる調査兵団から聞いた情報を共有する。
104期生の中の3名(ユミル、ライナー、ベルトルト)は巨人だったこと、そしてエレン巨人が連れ去られたことが告げられる。

ウォール・ローゼ壁の上

超大型巨人の落下攻撃で、戦局は一変。
エレン巨人は鎧の巨人に敗北し、連れ去られてしまう。
エレン誘拐から5時間が経過して、ミカサは目を覚ます。
ハンネス、エルヴィンらも合流し、エレン奪還に向けて調査兵団&憲兵団が動き出す。

進撃の巨人45話『追う者』で発生した伏線・謎

Qミカサの頭痛
(11巻45話)

A
(34巻138話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(11巻45話)

A
(巻話)

進撃の巨人45話『追う者』で解決した伏線・謎

Qベルトルトがユミルと一般兵士を捕食した理由は?
(11巻43話)

Aユミルの奪われた「知性巨人」をマーレに持ち帰るため。一般兵士の方は、立体機動装置を奪うため。
(11巻45話)

進撃の巨人45話『追う者』の表現・対比

進撃の巨人45話『追う者』の考察・解説

進撃の巨人45話『追う者』の考察・解説動画

サブタイトル『追う者』の意味

ライナー・ベルトルトにさらわれたエレン。
ミカサとアルミンはエレンを追う決意を固める。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

時系列

今回の話は異なる場面で物語が展開していくので状況を整理します(地図・あらすじはこちら)。基本的な場面はウォール・ローゼ南の壁上で、エレンを奪われた調査兵団は馬を移動させるエルヴィン率いる兵団連合軍(調査兵団と憲兵団)とリフトを待っている状態です。

漫画で描かれるは以下の順です。

  1. ハンネスの目線で超大型巨人落下の場面
  2. トロスト区のピクシス&エルヴィン、リヴァイ、ジャンたち
  3. ミカサとアルミンをハンネスが励ます
  4. エルヴィンが調査兵団&憲兵団を連れて壁上へ合流
  5. 巨大樹の森のエレンとライナーたち

アルミンの「5時間は経ってる」というは大体1.〜4.までの時間です。話の中身を詳しく見ていきます。

ハンネスが合流

ハンネスは第36話「ただいま」でウォール・ローゼに巨人が現れたという報告を受けてからずっと壁の穴を探していました。第38話「ウトガルド城」で壁の穴に近づいたはずなのに巨人に遭遇しないことを不思議に思っています。そして第42話「戦士」で壁に穴がないことをハンジに報告しにきたのです。そして、ライナー、ベルトルトの巨人化に巻き添えをくらい調査兵団と待機していたのです。駐屯兵団先遣隊のもう一人の兵士はユミル、ライナー、ベルトルトが巨人であったことをトロスト区へ報告に行っています。

エルヴィンとピクシス司令

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

エルヴィンがトロスト区にいる理由

ストヘス区から出発した調査兵団と憲兵団はエルミハ区を経由して2班に別れます。

ハンジ率いるエレンたち調査兵団は104期生たちの援護のためにウォール・ローゼ内を移動しウトガルド城へ向かいました。

エルヴィン率いる調査兵団&憲兵団の一行はトロスト区へ向かいました。ここにリヴァイとジャンも待機しています。そして、先程の駐屯兵団先遣隊の兵士の報告を受けてエルヴィンたちが壁上へ動き出します。

エルヴィンとピクシスの会話

「例のねずみっ子を一匹捕らえたらしいの」

ピクシスのこの発言は敵のアニを捕獲したことを意味しています。

「女型の巨人」をストヘス区で捕獲する作戦は秘密裏に進められていたのですが、ピクシス司令はエルヴィンの思惑を知っていた可能性もあります。ピクシスは南側領土の最高責任者として冷静に判断し、勝機を見出してきました。「女型の巨人」の捕獲を聞いて「例のねずみっ子」という表現をするのは敵が潜伏していたことの暗喩でしょう。

エルヴィンはアニから情報を引き出せなかったことについて「あと一歩及びませんでした」と返します。それについてピクシスは成果はあったと励まします。

「しかしあれで中央の連中は考えるであろうぞ」「古臭い慣習と心中する覚悟が自分にあるのかをの」

これは今後の王政編への布石を打つ発言として秀逸です。エルヴィンとピクシスの高度な会話は深い信頼関係があることも分かりますし、考え方も似ています。

ピクシスは後の王政編でエルヴィンの決意に触れて王政転覆への立役者となりますが、この時点でその役を担う可能性が予感されます。

ミカサがマフラーを巻く

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

エレンが連れ去られてから既に5時間が経過しています。そして、そのエレンを誰も追っていないことにミカサは絶望して頭痛を感じています。

ミカサの心情としては「また家族を失ってしまうのか」「また一人きりだ」そんな不安や孤独を感じています。そして、ミカサはマフラーを自ら巻き直します。

ミカサは家族を失った時の「寒さ」を思い出しているのでしょう。この「寒さ」というのは単なる外気温の寒さだけでありません。「恐怖」「不安」「孤独」などの感情を表しています。それらを温めてくれたのがエレンという存在であり、マフラーだったのです。

「何で…エレンはいつも私達から遠くに行くんだろう」「…私はただそばにいるだけでいいのに」「…それだけなのに…」

巻いたマフラーを握り、体を縮こませるミカサの目には涙が溢れています。

これも自由を求めるエレンとただそばにいたいというミカサが明確に違うということを表しています。アルミンはエレンのことを「そういう星の下に生まれついたんだよ…エレンは」とエレンを理解し認める発言をしています。エレンは誰にも止められないということを知っているのです。

この場面は3人の関係が徐々にすれ違っていくことが分かる切ないシーンです。エレンが不在の中、アルミンとミカサも別々の方向に体を向けている姿は今後、3人の方向性が分かれていくことの示唆のようにも見えます。

前向きになるミカサとアルミン

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「なぁお前ら、腹減ったろ?」「ほら食え、まぁいつもの野戦糧食しかねぇが」

エレンを失って泣いているミカサと何もできずうつむくアルミンにハンネスが近づき、野戦糧食を渡します。ハンネスが2人に語りかけた内容は、エレンは昔から相手の人数かまわずケンカに突っ込んでいった。執念が強く諦めず、負けて降参した所は見せない人間だった。そんなエレンが連れ去られたとしても力の限り暴れまくるだろう、ということです。

「相手が誰であろうと手こずらせ続ける」「俺やお前らが来るまでな」「エレンはいつもそうだろ?」

幼少期のエレンを知るハンネスがミカサとアルミンに語ることで説得力が生まれています。そして、これを聞いたミカサとアルミンの心が動きます。

野戦糧食

引用:TVアニメ「進撃の巨人」

ハンネスの励ましによりミカサとアルミンの気持ちは諦めないぞ、頑張るぞ、という前向きな気持に変化していきます。ここで重要なのが食事をするシーンです。ここで食べたのが野戦糧食です。

野戦糧食とは「調査兵団で採用されている高栄養食。
高カロリーのクラッカーと缶詰が基本で、必要なエネルギーを火を使うことなく素早く補給できる。味も工夫されており、不味くはない。」(現在公開可能な情報より)

エレンを救う覚悟を決めたミカサとアルミンが「バリバリボリバリ」と野戦糧食を食べるシーンは食事を通じて生命力を取り戻し、生きるために食べるというポジティブな表現です。

この場合の食事は味わうためではなく、戦うための栄養補給としての行動です。エレンを救うために巨人を追撃し必ず生きて帰る、この決意と覚悟を「食べる」という行為によって表しています。

カロリー保存の法則

「食べる」という行為があることでキャラクターが生身の人間であるリアルさも伝わってきます。諫山先生はこの場面について福田里香先生とのインタビューでも語っています。

諫山先生「福田先生の話を聞いてから、キャラクターたちが1日ぶっ続けで働きずくめで、途中で何か飲んだりはしてるだろうけど、そこが見えないと安心できないという気持ちになてきて、どこかで補給とか寝る時間があるということを描き足したいなと思って描きましたね。」(福田里香、「漫画キッチンおかわり」、太田出版)

奴隷の幸福・地獄の自由

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

「奴隷の幸福」と「地獄の自由」ということを語られています。奴隷でいることは自由はないが安心して暮らせる。ハンネスのような生き方です。一方で自由は自分の力で生きなきゃいけないこと、約束された安心がないという所で地獄でもある、ということです。この観点において、ハンネスとエレンは考え方が違う人物として描かれています。エレンは壁の外に出ること、巨人たちを駆逐して自由を掴むことを夢見ています。一方でハンネスは何も起こらない日常こそが幸せだという考えです。

「俺はあの日常が好きだ…エレンに言わせりゃそんなもんはまやかしの平和だったのかもしれないが…」

「やっぱり俺は役立たずの飲んだくれ兵士で十分だったよ」「あのなんでもない日々を取り戻すためだったら…俺は何でもする」「どんだけ時間がかかってもな」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)

この発言は第1話「二千年後の君へ」の対比の表現です。

パラディ島の壁内に超大型の巨人が襲来する前にエレンとハンネさんが掛け合いをしています。

「そもそもヤツらと戦う覚悟なんかねぇんだな!?」「ねぇな!」

「もう『駐屯兵団』なんて名乗るのやめて『壁工事団』にしろよ!!」「それも悪くねぇ!」

ハンネさんがたしなめます。

「しかしなエレン…兵士が活躍するってことはそれこそ最悪の時だ…」「オレたちが役立たずの『タダメシ食らい』って馬鹿にされてる時の方がみんなは平和に暮らせるんだぞ?」

エレンはその言葉にハッとしつつも毅然と返します。

「一生壁の中からでられなくても…メシ食って寝てりゃ生きていけるよ…でも…それじゃ…」「まるで家畜じゃないか…」

自由を求める主人公の姿は格好良く見えますし、エレンの言うことも最もです。一方で自由を求めるには代償があることが後の展開でも分かります。

平和な日常を大事に思うことの尊さも描かれいます。「飲んだくれの兵士」の態度は考えものですが…「あの日常が好きだ」という気持ちも理解できます。そして、あの日常を取り戻すためなら何でもする、つまり「戦う」と言っているハンネスの姿は戦うことを恐れていた人物ではないことも分かります。

作品内では自由を求めるエレンの姿がメインで語られていますが、それが正しいこととは描かれていないのです。少なくともこのハンネスが平和を尊ぶ気持ちを良いセリフとして描いている場面を見るに作品としてはどちらの主張もバランス良く尊重されているように思います。そして、あなたはどちらの道を選びますか?ということを作品を通して常に問われてるようにも思います。

進撃の巨人45話『追う者』の感想・ネタバレ

進撃の巨人45話『追う者』の感想動画

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