この記事の目次
進撃の巨人68話『壁の王』のあらすじ
オルブド区外壁までやって来たロッド・レイス巨人。
その体は、超大型巨人すら凌駕するほどの大きさだった。
駐屯兵団の砲撃は効かない。
しかし、エレン巨人が口内に爆弾を投げ込み、うなじ付近の爆発に成功。
無理やり前線に出たヒストリアは、父親ロッドの本体に、とどめを刺す。
そして市民たちに対して、「ヒストリア・レイス この壁の真の王です」と宣言する。
進撃の巨人68話『壁の王』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人68話『壁の王』で解決した伏線・謎
進撃の巨人68話『壁の王』の表現・対比
進撃の巨人68話『壁の王』の考察・解説
進撃の巨人68話『壁の王』の考察・解説動画
サブタイトル『壁の王』の意味
ヒストリアが壁の中の女王になる宣言をする
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
ヒストリアの覚悟と即位の瞬間

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社
前回の物語では、ヒストリアが「壁の王」となる覚悟を固め、リヴァイに対して自らの意思をはっきりと表明しました。
そして今回、エルヴィン団長に対しても自身の考えを主張する姿が描かれ、心の強さが一層際立っています。
その後、ロッド・レイスの討伐を成し遂げたヒストリアは、民衆の前で次のように宣言します。
「ヒストリア・レイス。この壁の真の王です。」
この討伐の瞬間、ヒストリアの中にロッド・レイスの記憶が流れ込みます。
この記憶継承の場面は、彼女の成長と物語の核心に関わる重要な描写であるため、次に詳しく見ていきます。
ロッド・レイスの生涯と弱さを解説

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社
進撃の巨人に登場する「ロッド・レイス」は、物語において非常に重要な立場にある人物です。しかし彼の人生を丁寧に追ってみると、特別な力を持った英雄ではなく、「ただの普通の人間」であったことが浮かび上がってきます。
ヒストリアに託された記憶
ロッド・レイスがヒストリアに倒される直前、彼の記憶が断片的にヒストリアの中に流れ込む描写があります。
理由は明言されていませんが、血縁関係による現象と考えられています。
「巨人を今すぐ一匹残らず殺せばいいんだよ!!何で!?何でわかってくれないんだ!?」
このセリフは、ロッドが父親に願いを訴える場面です。しかしその願いは叶えられず、父は始祖の巨人の力を弟・ウーリに継承させました。
弟ウーリと娘フリーダへの希望
弟ウーリは「僕ならきっと大丈夫だ」と語り、始祖の力を引き継ぎます。しかし、彼も初代王の思想に取り込まれてしまい、人類を巨人から救う夢は叶いませんでした。
続いてロッドは、自分の娘・フリーダに希望を託します。
彼女も「私に任せて」と力強く語りますが、結局は初代王の思想に支配されてしまいます。
このようにロッドは、父・弟・娘の三人に「人類を巨人から解放する」という願いを託しながら、いずれも失敗に終わったのです。
ヒストリア誕生と人間的な弱さ
ロッドは、ヒストリアの母である使用人アルマに「君だけが僕をわかってくれる」と涙を見せる場面もありました。
その結果、ヒストリアが誕生することになります。
この行動はロッドの「逃げ」や「甘え」とも取れますが、彼がいかに追い詰められ、弱さを抱えていたかがうかがえます。
諫山先生が語る「普通の人」
諫山先生は、ロッド・レイスについて次のように語っています。
「ロッド・レイスというキャラクターはいわゆる”普通の人”なんですよ。レイス家の生き残りになってしまったことで、非常に重要な役割を担うことになった”普通の人”だから、その重責に耐えられなくなって、浮気に走ったり、神様に頼ったりするんです。特別な役割を全うできる選ばれた人間ではなく、ごくごく普通の人間だったんです。」(諫山創「進撃の巨人 ANSWERS」、講談社)
この視点で彼を見つめると、数々の失敗や迷いも、決して特別ではない人間の「等身大の姿」として理解できるのではないでしょうか。
祈りにすがる姿と信仰への逃避

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社
物語の回想では、弟ウーリが始祖の力を継承する代わりにロッドへ「祈ってくれ」と託す場面があります。
失敗を繰り返す中で、ロッドはしだいに「祈ること」こそが自分の使命だと考えるようになります。
ロッド・レイスの行動に見える「人間らしさ」

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社
「私の使命は神をこの世界に呼び戻し、祈りを捧げることにある」
この言葉には、自らの無力さを受け入れきれず、“信仰”という形で逃避しようとするロッドの姿が映し出されています。
浮気や信仰にすがる姿は、ロッドの弱さの象徴です。
ですが、巨人を倒したいという強い想いがありながら、行動には移せなかった。だからこそ、他者に希望を託し、失敗を重ねた結果、「祈り」にすがるようになった――それは、責任に押しつぶされそうになった一人の「普通の人」の選択だったのかもしれません。
まとめ:ロッド・レイスは弱さを抱えた「普通の人間」だった
ロッド・レイスは英雄ではありません。たまたま重い責任を背負わされ、それに抗うことも、成功することもできなかった人物です。
しかし彼の人生には、「愚かだけど理解できる」人間らしさが滲んでいます。
リフレイン描写に込められた演出意図
初期の物語と同様の構図が繰り返し描かれており、いわゆる“リフレイン演出”が随所に見られます。
その代表的な例が、壁の外から現れる巨人の描写です。エレンたちが初めて超大型巨人を目撃したシーンと同じ構図で、今度は名もなき子どもたちがロッド・レイスの超大型巨人を目撃する場面が描かれています。画面構成や視線の向きまでも一致しており、意図的な演出であることがわかります。
諫山先生は「物語の冒頭に登場したアイテムが再登場することで結末の近さを感じる」ということを語っています。
このような手法は『プライベート・ライアン』など、映画でもよく用いられています。伏線というよりは、物語のクライマックスを際立たせるための視覚的な演出として機能しているといえるでしょう。
北と南の地理的・戦力的格差
今回ロッド・レイスの巨人が襲撃してきたのは、「北の領地」にあたる地域です。これは従来のパターンとは異なり、重要な意味を持っています。
というのも、これまで巨人は基本的に南側から侵攻してきました。たとえば、トロスト区やピクシス司令が配属されている南部地域は、戦略的にも防衛的にも重要な拠点として位置づけられてきたのです。
一方、北側は兵力が手薄で、防衛面でも脆弱であることが描写されています。これにより、次のような地域格差が明確になります。
北と南の比較ポイント
-
南側(トロスト区など)
→ 巨人出現率高、重要拠点。ピクシス司令など指揮官も優秀で戦力が充実 -
北側(オルブド区など)
→ 巨人出現率低、防衛が弱く、襲撃への対応が遅れがち
この地理的対比は、「壁内人類が築いてきた秩序や防衛体制の偏り」も浮き彫りにしています(地図はこちら)。単なる位置関係ではなく、物語全体の構造や緊張感を補強する重要な要素として機能しています。
まとめ:演出と地理設定が物語に深みを与える
今回のエピソードでは、構図の再利用による終末感の演出と、北と南の地域格差の明示という、異なる側面から物語に深みが与えられています。
それぞれの要素が単なる描写にとどまらず、キャラクターたちの行動や物語のテーマに結びついている点に注目することで、『進撃の巨人』の構造的な魅力をより深く味わうことができます。
進撃の巨人68話『壁の王』の感想・ネタバレ
進撃の巨人68話『壁の王』の感想動画
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