この記事の目次
進撃の巨人62話『罪』のあらすじ
王政転覆の日の昼
市民たちは、フリッツ王政転覆のニュースを受けて、王がいない現状で誰を信じるべきかと戸惑う。
エルヴィンとザックレー総統は、二人きりの密室で、自身の個人的な夢、野望について本音を打ち明ける。
王政転覆の日の夜
ハンジはエルヴィンから受け取った報告書から、ロッド・レイスが礼拝堂にいると推測。
エレンとヒストリアを取り戻すべく、一同は礼拝堂に向かう。
一方その頃、礼拝堂の地下で、ヒストリアとロッドは、拘束されたエレンの背中に手を伸ばす。
記憶の蓋が開いたエレンは「父親がレイス家を襲ったこと、自分が巨人化し父親を食べたこと」を思い出す。
進撃の巨人62話『罪』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人62話『罪』で解決した伏線・謎
進撃の巨人62話『罪』の表現・対比
進撃の巨人62話『罪』の考察・解説
進撃の巨人62話『罪』の考察・解説動画
サブタイトル『罪』の意味
グリシャの犯したレイス家殺しの罪。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察
エルヴィンとザックレーの会話

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
王政転覆が成功した後のエルヴィンとザックレーが2人きりで会話します。
「ここ数日の私の思いは…仲間とは別の所にありました」
エルヴィンはピクシスに協力を要請したり、ハンジに単独行動させたり王政転覆へ向けて動いていましたが、自分でもなぜこの道を選んだのか、本当にこの選択で良かったのか分かっていない心境です。
エルヴィンが言うように客観的に見れば人類のためであれば、エレンを王政に託してした方が良かったのではないかと語ります。100年以上、壁の中の平和を維持することができたのは、王政が人類を統治する知識や経験があったからであり、王政に命運を委ねるほうが人類のためだったのではないか、と語っています。
ザックレーとエルヴィンの会話

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ザックレーの意外な本音
エルヴィンがザックレーに問いかけたとき、ザックレーはこう答えます。
「私がなぜ王に反旗を翻したのか? それは昔から、奴らのことが気に食わなかったからだ。」
この一言は、非常に個人的で率直なものでした。
革命に対する無関心と本音の切り替え
さらにザックレーは続けます。
「この革命が人類にとって良いことか悪いことかなんて、私には関係ない。これは、生涯の趣味だったんだ。」
彼のこの発言により、エルヴィンの心にも変化が生まれていきます。
この場面で注目なのは、ザックレーの態度の「切り替え」が非常に巧みだという点です。
二人の関係性と立場の違い
ザックレーとエルヴィンは、ともに高い地位にある人物です。
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ザックレー:三兵団(駐屯兵団・憲兵団・調査兵団)すべてを統括する総統。
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エルヴィン:壁外調査を担当する「調査兵団」の団長。
ふだんであれば、こうした高位の人物同士の会話は、公的な場で、公的な立場を意識して行われるはずです。
しかしこの場面では、二人きりの密室という非公開の状況の中で、ザックレーはあえて個人的な感情を語り出します。
「私はヤツらが気に入らなかったんだ。」
この言葉によって、エルヴィンもまた、自身の本音を引き出されていきます。
つまり、ザックレーが自ら「プライベートモード」に切り替えたことで、エルヴィンも本心を話していいのだという雰囲気が生まれたのです。
ザックレーの言葉がエルヴィンを言語化する
その流れの中で、ザックレーはエルヴィンの気持ちを代弁するかのように、こう語ります。
「君は……死にたくなかったんだよ。」
この一言が、エルヴィン自身の本音を言語化し、彼の内面に深く切り込むのです。
エルヴィンの夢とその自覚

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
エルヴィンは、人類のために戦うという大義の一方で、「自分が生き残って父親の仮説を検証したい」という個人的な願望も抱いていました。その2つの狭間で、彼はこの数日間、ずっと葛藤していたのです。
彼は「私には夢があります」と語ります。これは、かつてザックレーが「気に食わない奴らに復讐するのが私の生涯の趣味だった」と語ったことへの直接的な返答ではありませんが、それに対するエルヴィン側の内面の主張だと受け取れます。
この「エルヴィンの夢」について、諫山先生がインタビューで語っています。
「無自覚だった夢を自覚することで、人間として今まで以上に安定した面はあったでしょうね。ただ、だからといって夢を最優先するような人物ではないんですよ。やっぱり最終的には責任を果たすために、いざというときには夢を諦めてベストな選択をできるのがエルヴィンなんです。(諫山創「進撃の巨人 ANSWERS」、講談社)
おそらく、その“夢を自覚した瞬間”はこのザックレーとの会話の場面ではないかと考えています。
自覚と選択:夢か責任か
エルヴィンは自分がなぜ、ハンジの自由な行動を許し、ピクシス司令に協力を仰いだのかを振り返ります。そして、「ああ、自分には夢があり、そのために生きたかったのだ」と気づいたのです。
この自覚があったからこそ、彼はその夢を“自分の思考のテーブル”に置き、初めてそれを選ぶ対象として認識できたのだと思います。つまり、「夢を追うか、責任を果たすか」という選択肢を、ようやく明確に持てたのです。
この夢の自覚があったからこそ、最後の選択である獣の巨人戦(第80話「名もなき兵士」)でエルヴィンが最後の選択をします。
「俺は地下室に行きたい」とリヴァイに語り、葛藤しますが、最終的には「夢」ではなく「責任」を選び、命を捧げる決断を下します。
こうした選択ができたのは、先ほどの「夢を自覚した会話」があったからだと思います。
ザックレーとの会話が示すもの
このエルヴィンとザックレーの会話は、物語全体のバランスを取る役割も果たしているように思います。王政は利己的で悪として描かれますが、ではエルヴィンたちに純粋な大義があったかというと、そうとも言い切れません。
ザックレーは単に王政を転覆したかっただけであり、エルヴィンも「このまま死ぬのは嫌だ」という思いが動機の一部にありました。彼らの行動が本当に正しかったのか、あるいは間違っていたのかを一概に判断することはできません。
その曖昧さこそが、エルヴィンとザックレーの会話の深みであり、『進撃の巨人』という作品の魅力の一つでもあるのです。
ロッド・レイスの懐柔

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ヒストリアの過去と孤独
ヒストリアは、かつて母親や祖父母から疎まれ、愛されずに育ちました。その後、父ロッド・レイスに「クリスタ」という偽名で生きるよう命じられ、自分を偽った苦しい人生を送ることになります。
そんな中で彼女は、唯一の親友であるユミルとの関係を通じて自分自身を取り戻そうとしますが、ユミルもすでにいなくなってしまいました。
ロッド・レイスの策略
そんな孤独で不安定な状態のヒストリアに、ロッド・レイスは優しい言葉をかけます。
彼は「いつもお前のことを思っていた」「こうして抱きしめることを夢見ていた」と語り、ヒストリアを抱きしめます。
今まで誰からも愛されなかった彼女にとって、これは強烈な感情的な揺さぶりとなります。
揺れるヒストリアの心
リヴァイたちからは突然「お前が王になれ」と迫られ、物理的にも精神的にも圧力を受けてきたヒストリア。
そのような不安定な状況下で、父親からの優しさに触れた彼女がロッド・レイスの言葉に心を動かされてしまうのは、無理もないように思えます。
王政編から広がる伏線

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
この物語では、王政編のあたりから「始祖の巨人」の歴史や、それに関する多くの伏線が明らかになってきます。
とりわけ今回、衝撃的だったのは、エレンがグリシャの記憶を目にする場面です。
その記憶とは、グリシャがレイス家を襲撃する場面でした。

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
この場面は、エレンの記憶の中に現れるもので、自分の体験ではなく父グリシャの記憶であると分かります。
グリシャはレイス家の人々を次々と殺害してしまいます。そして、幼少期のエレンを巨人化し、無垢のエレン巨人に捕食される所で記憶は終わります。
ロッド・レイスの評価
ロッド・レイスがヒストリアを抱きしめる描写もあり、「もしかしていい人なのでは?」という印象を受けます。
しかし、この回想でロッドは、家族が助けを求めている中で自分だけが逃げてしまうのです。
この一場面で、「やはり彼は善人とは言えない」と感じさせられます。
シャーディス教官との接点

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
また、この回想の中で、グリシャがシャーディス教官と会っていたこともさりげなく示されます。
この情報も後のエピソードですぐに伏線回収されるので注目です。
ピーチ姫のようなエレン

引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
最後に、エレン自身が語る「俺はさらわれるの、これで何回目だよ…」という発言があります。
まるでゲーム『スーパーマリオ』に登場する「ピーチ姫」のように、エレンは何度も敵に連れ去られています。
具体的には以下の通りです。
エレンがさらわれた回数
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森で女型の巨人に捕まる
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ライナーとベルトルトに連れ去られそうになる
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リーブス商会によってさらわれかけ、結果的に中央第一憲兵に連行される
このようにエレンは、まさに「さらわれキャラ」として物語内で何度も翻弄されているのです。
進撃の巨人62話『罪』の感想・ネタバレ
進撃の巨人62話『罪』の感想動画
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