この記事の目次
進撃の巨人50話『叫び』のあらすじ
エレンの回想から始まる。
母カルラが生きていた頃の会話、845年に無垢の巨人に食べられたことを思い出す。
当時カルラを助けられなかったハンネスは、再び巨人に立ち向かう。
しかし、健闘むなしく死亡してしまう。
エレンは体力の限界から巨人化ができず、自身の無力さに苦しむ。
ミカサは落ち込むエレンに「マフラーを巻いてくれてありがとう」と感謝を告げる。
エレンは再び奮起し巨人に立ち向かい、巨人を殴る。
その瞬間、ライナー・ベルトルト・ユミルたちにビリビリと電流が走る。
更には大量の巨人たちが密集し、カルラを食べた巨人に襲いかかる。
謎の力で窮地を脱したエレンたちは、そのまま全軍撤退。
ユミルはヒストリアに謝罪し、ライナー達を助けることを選択する。
そして夜。ライナー・ベルトルト・ユミルは、ウォール・マリアのシガンシナ区まで退避する。
進撃の巨人50話『叫び』で発生した伏線・謎
残された謎
進撃の巨人50話『叫び』で解決した伏線・謎
進撃の巨人50話『叫び』の表現・対比
進撃の巨人50話『叫び』の考察・解説
進撃の巨人50話『叫び』の考察・解説動画
サブタイトル『叫び』の意味
カルラの回想
今回はカルラと幼少期のエレンの回想から始まります。次ページでカルラがダイナ巨人に捕食される絶望の場面になります。
エレンの回想からカルラを捕食した巨人であると気づいていることが分かります。
小ネタですが、この回想で片足の靴が脱げているのは第2話「その日」の場面と同じです。細かい演出としては第85話「地下室」でエレンが家に帰った場面でカルラの片足の靴が描かれています。
ハンネスVSダイナ巨人
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
カルラを捕食した巨人はグリシャの前妻ダイナが無垢の巨人になった姿です。ハンネスはカルラの仇を取るために攻撃します。
「見てろよ!お前らの母ちゃんの仇を!!俺が!!ぶっ殺す所を!」
カルラを助けることができなかったハンネスはここで活躍するかと思わせます。しかし、ハンネスはダイナ巨人に捕食され、エレンも巨人の力を使えないという残酷な展開になります。
エレンの自己否定
![](https://takichannel.com/shingeki/wp-content/uploads/sites/10/2024/11/image-1-6.png)
引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
エレンは目の前でハンネスが捕食されている姿を見て絶望します。手には噛みついて巨人化しようとした跡がついています。
「何にも変わってねぇな!!お前は!!なんッッにも!!できねぇじゃねぇかよ!!」
「母さん…オレは何にも…なんっにもできないままだったよ!!」
エレンはライナーたちに誘拐された後で体力が回復していない状態です。よく見ると指がまだ再生途中です。
エレンは巨人化できなくても諦めずに何度も手を噛んで巨人化を試みていたことが分かります。
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引用:TVアニメ「進撃の巨人」
※アニメではエレンがものすごい形相で何度も手を噛み足元が血だらけになる描写が追加されます。そして、ハンネスがダイナ巨人に捕まった時に「今、巨人になんなきゃ意味ねぇだろ!」というエレンのセリフが追加されています。エレンは怒りと焦りで、もはや自分の手を食いちぎっています。
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
「エレンの手」の演出は第2話「その日」でも似た描写があります。母親が食べられた直後、エレンがモノローグで語ります。
「(どうしてこんな目に…人間が弱いから?弱いやつは泣き喚くしかないのか!?)」
幼少期のエレンはこの手には何もない、という無力さや弱さを自覚して泣いています。一方で今回は巨人の力という強さを得たにも関わらず戦うことができなかった手です。
エレンは泣き叫ぶことしかできないままの自分に感情が壊れ笑いだします。そして、泣きながら自分を全否定します。
マフラーをまいてくれてありがとう
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
絶望するエレンを励ますミカサの言葉が感動的です。
ミカサは幼少期、強盗に襲われた所をエレンに助けてもらいました(第6話「少女が見た世界」)。両親も殺害され、帰る場所がないミカサは寒さで凍えています。その時にエレンがミカサへマフラーを巻いてあげます。ここでミカサは生きる力を取り戻し、今までエレンの側で生きてこられました。その過去を踏まえて、ミカサがエレンに語りかけます。
「私と…一緒にいてくれてありがとう」「私に…生き方を教えてくれてありがとう」
「……私にマフラーを巻いてくれてありがとう…」
この励ましは孤独な私を助けてくれた、絶望から救ってくれたのは誰でもない、エレンだよ、ということでしょう。エレンに対してあなたの人生に「何もできない」なんてこはなかったことを伝える愛に溢れた言葉です。愛に溢れた微笑みでエレンを見つめるミカサが可愛らしいです。
ミカサのこの言葉には感謝以外の思いもあると考えられます。ミカサは怪我で戦えない状態であり、最大のピンチです。エレンと最後の会話になるとすればエレンの感謝の言葉を今いうべきと考えたかもしれません。ここで死ぬとしても大好きなエレンと一緒なら悔いはない、というような穏やかな表情にも見えます。ミカサは死を覚悟している上で精一杯の笑顔だと考えると切ないです。
仲間たちが激しく戦っている状況で、エレンとミカサはお互いの声だけが聞こえています。擬音表現が無く無音であることが分かります。
※アニメでも無音の演出がされています。周囲の戦闘や無垢の巨人の動きもスローモーションになっています。その中でキラキラと輝くミカサの笑顔が美しい世界として際立って見えます。
最終話「あの丘の木に向かって」のラストでミカサの「マフラーを巻いてくれてありがとう」の場面が再現されます。
エレンの覚醒
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ミカサの言葉を聞いてエレンが気力を取り戻します。ミカサが死の覚悟をする一方でエレンは立ち上がり前を向きます。
「そんなもん何度でも巻いてやる」「これからもずっとオレが何度でも」
この言葉は生きる力を取り戻したエレンの言葉です。これからも生きてずっとミカサの側にいる、ということであり、絶体絶命の状況でこの言葉が出ることがエレンの強さです。
第10話「左腕の行方」でもエレンは諦めませんでした。
「あ…諦めてためるか…駆逐してやる」「この世から…一匹残らず」「…オレが…この手で…」
巨人に食われエレンは腕を失い胃の中に入ります。胃液には食われた仲間たちの死体が浮かび自分もこれから死ぬ状況でも進み続ける意志力を持っています。エレンはダイナ巨人に対して生身の体で立ち向かい手のひらにパンチを繰り出します。「ペチン」という攻撃をダイナ巨人は手のひらで受け止めます。
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
その中でエレンは「始祖の巨人」の力を発動します。エレンのパンチがダイナ巨人に触れた時、ユミルとベルトルトとライナーという知性巨人を持ったこの3人が「ビリビリ」と何かを感じています。ここで形勢逆転し、無垢の巨人がダイナ巨人に襲いかかり捕食し始めます。その隙にエレンとミカサは逃げることに成功します。無垢の巨人が一斉にダイナ巨人に向かうことで他の仲間や兵士たちも助かりました。
座標とは?
ライナーは「(最悪だ…よりによって『座標』が…最悪の奴の手に渡っちまった…)」とモノローグで語っています。ここでの座標とは「始祖の巨人」を行使する力、と考えると分かりやすいと思います。「座標」や「始祖の巨人の力」と用語がでてきますが、12巻の時点ではまだ謎が多く、明確に言葉が定義されてはいないのです。
「始祖の巨人」の力に関しては、第89話「会議」で「始祖の巨人」の力は王家の血を引く者との接触で発動されるのではないか?とエレン自身がこの場面を振り返ります。第100話「宣戦布告」でヴィリー・タイバーが「『始祖の巨人』を行使できるのは王家の血筋のみ」「王家の血筋との関係は定かではありませんが『始祖の巨人』の能力を発動させる者が現れました」と語られます。
ダイナは王家の血を引く人間だったので「始祖の巨人」を持つエレンが触れたことで「始祖の巨人」の力が発動したのです。
この描写からライナーたちはエレンが「始祖の巨人」の力を持っていることをここで気づいたことが分かります。
ハンネスさんとの思い出
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
第45話「追う者」でハンネスがエレンについて語っていました。「あいつは時々、俺でもおっかねぇと思うくらい執念が強ぇ」「何度倒されても何度でも起き上がる」ハンネスの言葉通り、エレンは最後まで諦めず奇跡的に仲間を守りました。
仲間たちと命からがら逃げていく調査兵団たちの中でエレンは空を見つめてハンネスのことを思い出しています。エレンがハンネスにパンチしようとじゃれている日常の様子です。※アニメではより表情豊かに酒に酔った笑顔のハンネスが描かれます。
ユミルの決断
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
ユミルは壁の中に未来がないことからヒストリアをマーレへ連れて行こうと考えていました。しかし、今回で状況が変わります。エレンが「座標」つまり「始祖の巨人」を持っているのならばパラディ島にも未来がある、マーレ国や諸外国に抗う力を持っているということになります。つまり、壁の中の人類も生き残ることができるのではないかと考えるのです。
「ゴエンア」
ユミルはヒストリアを守りたいと言う気持ちを隠していましたが、ヒストリアはコニーに指摘され、全ては自分を守るための行動であったことに気づきます。ヒストリアはユミルに語ります。
「人のために生きるのはやめよう」「私達はこれから!私達のために生きようよ!!」
「あなたといればどんな世界でも怖くないや!!」というヒストリアは以前の彼女と自分のために生きる強さを持っています。
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引用:TVアニメ「進撃の巨人」
ベルトルトとライナーを助けることを決めたユミルはヒストリアに別れを告げます。
「ゴエンア」
ユミルのこの言葉はヒストリアと一緒にいられなくて「ごめんな」ということでしょう。
エレンが始祖の巨人を持ってるということがわかり、壁内人類にも未来があると考えます。ヒストリアが自分のために生きる強さを持った姿を見届けたユミルは人のために生きる道を選んだのです。
この「人のために生きること」と「自分のために生きること」は相反することのようですが、ユミルにとって「自分のために生きること」は「人のために生きること」だったというのがすごい所です。これがユミルの決断であり、生き方だったということです。
ユミルは後悔がないわけではありません。「くっそ〜〜」「やっちまった…」「何でこんな…」と泣いています。
女神ユミル
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
最後の4ページは単行本で書き足された部分です。
ユミルがベルトルトとライナーを無垢の巨人からなんとか助けてウォール・マリアの壁の上で休んでいます。
ベルトルトがユミルに問います。
「ユミル…何で…僕を助けてくれたの?」
ユミルは「お前の声が聞こえちまったからかな」「お前らがこの壁を壊しに来なければ私はずっと覚めない悪夢を見ていたんだ」「私はただその時に借りたものを返しているだけだよ」と語ります。
「里帰りのお土産になってやってんだよ」というのは「顎の巨人」の力をマーレ国へ返すため、次の戦士に食われる覚悟を決めてということです。
ベルトルトたちの苦しさや孤独を理解できるのはユミルだけです。ユミルの根底にある他者への優しさは誰かを救いたいとか優しくしてあげたい、という気持ちがります。
あって、誰かと言われたからその誰かって誰だろう、今自分しかいないんじゃないかというところで助けたということです。これがベルトルトと104期士、特にユミルとの会話でした。
「女神様もに悪い気分じゃないねと語るのです」
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引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
女神様というのは第40話「ユミル」での言葉です。自己犠牲で人を助けようとするヒストリアに対して皮肉として「女神様」という表現を使っています。自分を犠牲にして人のために行動しているユミルは昔のヒストリアと一緒です。
![](https://takichannel.com/shingeki/wp-content/uploads/sites/10/2024/11/image-1-4-1.png)
引用:『進撃の巨人』(諫山創、講談社)
そんなユミルが「女神様もそんなに悪い気分じゃないね」というのは人のために生きることは馬鹿なことではない、ということです。マーレ国時代に偽りの女神「ユミル様」を演じていたユミルですが、この時はベルトルトとライナーにとっては本当の女神様になったということでしょう。
進撃の巨人50話『叫び』の感想・ネタバレ
進撃の巨人50話『叫び』の感想動画
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