【進撃の巨人】第76話『雷槍』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人76話『雷槍』のあらすじ

シガンシナ区内(外側) ※ハンジ・アルミン達 vs 鎧

エレン巨人と、鎧の巨人の戦い。
硬質化を身に着けたエレン、更には鎧をも貫く新兵器「雷槍」を使う調査兵団メンバーは、優位に立つ。

ウォール・シーナ壁内(内側) ※エルヴィン・リヴァイ達 vs 獣

調査兵団新兵は、退避用の馬を死守するために、安全な場所に馬を移そうと努める。
リヴァイやディルク班が新兵を援護することで、無垢の巨人の襲撃をなんとか凌ぐ。

エルヴィンは団長として戦局に目を向けながらも、「地下室に行けば叶う、自身の夢」についても考えてしまう。

【時期】850年
【場所】パラディ島

進撃の巨人76話『雷槍』で発生した伏線・謎

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(19巻76話)

A
(巻話)

進撃の巨人76話『雷槍』で解決した伏線・謎

進撃の巨人76話『雷槍』の表現・対比

ライナーの「待って」発言

進撃の巨人76話『雷槍』の考察・解説

進撃の巨人76話『雷槍』の考察・解説動画

サブタイトル『雷槍』の意味

調査兵団の新兵器「雷槍」が初登場
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

ポイント

屍の上に立つエルヴィンの葛藤

調査兵団団長エルヴィン・スミス。その姿は、理知的で冷静、あらゆる非情な判断すらも遂行する指揮官として描かれてきました。ですが第76話では、そのエルヴィンの心の内側に潜む葛藤と人間性が明らかになります。

この回、エルヴィンは戦場の最前線に立つわけではなく、戦局全体を見下ろせる壁の上に立っています。リヴァイやエレンたちが命を懸けて戦っているその風景を見つめながら、エルヴィンが考えていたのは「グリシャの地下室」でした。そこに世界の謎を解く手がかりがあると信じているからです。

エルヴィンの「夢」とその矛盾

ザックレー総統と二人きりで語った回想の中で、エルヴィンは幼少期の夢――父の仮説を証明したいという個人的な願い――を思い出します。訓練兵時代には、仲間にその仮説を語り、調査兵団に入ってその真実を証明すると誓っていたのです。

しかし現在の彼は、多くの部下を率い、「人類のために戦え」と命じています。けれど自分自身は夢のために戦っている。この矛盾に苦しみながら、自分を騙してきたことを自覚します。

「私は騙してきた……仲間を。そして自分自身を……」

その言葉と共に語られるのが、「屍の上に立っている」という心象です。ミケやゲルガーといった有能な兵士たちが次々に命を落とす中、その屍の上に自分の地位は築かれている。そして、その屍たちが自分のことを見つめていると、そう語ります。

現実と心象風景の一致

ここで描かれる風景が秀逸です。エルヴィンは壁の上、戦況全体を見渡せる高所に立っています。地上では仲間たちが巨人と戦い、命を落としています。その現実の高さと、エルヴィンの心の高さ(=屍の上)とが重なっているのです。

これは心理描写と現実描写がシンクロした、極めて象徴的な演出です。そして、その高所から彼が見つめているのは、グリシャの地下室。団長としての責務と、夢を叶えたいという個人的欲望。その間で揺れ動く姿は、人間としてのエルヴィンを深く描き出しています。

雷槍という革命兵器

もう一つの76話の注目要素は、新兵器「雷槍(らいそう)」の登場です。これは中央第一憲兵団が隠し持っていた技術を、ハンジたちが奪取・応用することで完成したもので、鎧の巨人の硬質化すら貫ける唯一の武器として開発されました。

ハンジが技術官に「せめて槍と言ってくれよ」と言うように、この兵器の登場はまさにRPGゲームのアイテム入手イベントのようなワクワク感があります。

また、17話のクーデター編で手に入れた「中央の封印されていた技術」がここで花開くのも、『進撃の巨人』らしい中長期的な伏線回収です。

通過儀礼としての「ライナー殺し」

雷槍を携えて再登場するのが、新生リヴァイ班――104期生たちです。

彼らはかつて、中央第一憲兵との対立で「人殺し」を経験しました。しかし今回の敵は、かつての仲間、ライナー・ブラウンです。かつて同じ釜の飯を食ったライナーを、「殺す」必要があるという事実。

ジャンはサシャに対して、こう発破をかけます。

「お前らこうなる覚悟は済ませたはずだろ。やるぞ!」

この場面は、104期生たちにとって再び訪れた通過儀礼のようなものです。ただの兵士ではなく、「仲間を殺す」という極限の選択を迫られる、成長と喪失の儀式とも言える重要な描写です。

エレンVSライナー、第2ラウンド

そして同話では、エレンとライナーの因縁の対決が再び描かれます。以前、エレンがベルトルトと共に連れ去られそうになった際に戦ったのが第1ラウンド。今回は第2ラウンドとなります。

エレンは前回同様、アニから学んだ格闘術を駆使し、さらには新たに習得した硬質化パンチを使ってライナーを圧倒します。この硬質化パンチは、ハンジが名付けた少しダサいネーミングですが、戦術的には大きな意味を持つ攻撃です。

雷槍とエレンの新技、そして覚悟を決めた104期生たち――この三要素が合わさり、物語は再び大きな転機へと向かっていくのです。

まとめ:76話の見どころ

エルヴィンの人間らしい弱さと夢への執着
屍の上に立つという哲学的テーマ
雷槍という革命的兵器の登場
104期生たちの再びの通過儀礼
エレンとライナーの因縁の第2戦

エルヴィンの精神的な高み、仲間たちの覚悟、新技術の登場……第76話は、戦闘というよりも精神と思想のぶつかり合いが印象深い回です。これこそが『進撃の巨人』が単なるアクション作品にとどまらない所以でしょう。

進撃の巨人76話『雷槍』の感想・ネタバレ

進撃の巨人76話『雷槍』の感想動画

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