この記事の目次
進撃の巨人129話『懐古』のあらすじ
地鳴らし3日目(パラディ島港)
マガトは、ここで飛行艇を飛ばす準備はできないと判断し、マーレ国オディハに船で向かう作戦に変更。
狙いに気づいたイェーガー派はアズマビト家の整備士、飛行艇を牽引する船を狙うが、巨人たちに阻まれる。
鎧の巨人、女型の巨人、顎の巨人に続き、ファルコが顎の巨人として参戦する。
巨人の力を操りきれないファルコだったが、ピークとマガトによって救援される。
更には、イェーガー派にとって頼みの綱だった増援の列車も、キースによって爆破されてしまう。
戦いの末、ハンジ達調査兵団、ライナー達マーレ残党、更には義勇兵とアズマビト家を乗せて、船は無事に出港する。
マガトとキースが殿を務め、巡洋艦を爆発し、命を落とす。
進撃の巨人129話『懐古』で発生した伏線・謎
(32巻129話)
Aファルコ巨人はジークの脊髄液(獣の巨人&王家の血)によって巨人化した。鳥の巨人の記憶を頼りに、飛ぶ巨人になった
(34巻135話)
残された謎
進撃の巨人129話『懐古』で解決した伏線・謎
進撃の巨人129話『懐古』の表現・対比
(1巻1話)
2ガビが「マガト隊長は?」と聞いて、ピークが「元帥だってば」と訂正する。殿を務めて死ぬことを知らないガビの顔、知っているピークの顔が切ない。
(32巻129話)
進撃の巨人129話『懐古』の考察・解説
進撃の巨人129話『懐古』の考察・解説動画
サブタイトル『懐古』の意味
マガトが、人生を振り返り「教え子たちとの何気ない日常」を思うこと。
また、ガビやピークもマガト隊長と歩んだ日々を思い起こしたはず。
読者からすると、過去の場面と重なる懐かしい描写があった。
勢力図
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殿としてのマガトとキースの見せ場
マーレ軍元帥 テオ・マガト
マガトはマーレ軍を率いる重要な人物として活躍していました。さらに、エルディア人を島の悪魔と罵ったり、偏った意識のもと強い責任感とともにマーレ戦士の育成もしてきました。ガビが調査兵団たちに身を挺して協力を求める姿を見て、自身の行いを振り返り謝罪しました。
ガビのことを心配していた場面から、本心ではマーレ戦士の候補生である子ども達のことを大切に思っていたことも伝わってきます。今回は、ファルコ・グライスのことも「ファルコ」と名前で呼んでいました。このファルコを傷つけないように、料理人のような刀さばきで巨人から、スーっと救出する姿が印象的です。
そこから、殿を務めることを決意していたからこそ、最後の別れの挨拶として「ファルコお前はよくやった」と褒めるのです。
訓令兵団教官 キース・シャーディス
この窓から見ていたのは、なんとキースだということが判明しました。キースはアニたちが協力関係になる前のシーンです。訓練兵時代のアニ達の姿を見て、彼らの行動意図を指したと。スルマたちに、いつか立ち上がるべき日が来ると言うが、キース自身の立ち上がるべき日が来たということでしょう。
ライナーとアニが瀕死の状況で機関車を壊す、というファインプレイもやっていました。自らのことを「傍観者」と語っていたキースが確かに歴史に関与した、そんな瞬間でした。
名前だけ語る最期
この二人は、歴史に名が刻まれなくてもその行為は信念に従ったものでした。マガトとキースは、共に教える者、教え子たちへの信条というところも切なかったです。最後の時をこの二人が、共に過ごすのは船の弾薬庫の中です。
最期の会話としてお互いに名を名乗る場面も名シーンです。
「キース・シャーディス、アンタは?」「テオ・マガト」とだけ答えます。肩書きで語り合わないのがポイントです。元帥など、元調査兵団団長という形ではなくて、一個人として互いに認識しているのです。エルディア人やマーレ人という人種でもなく、所属でもなく、立場でもなく、名前だけを伝え合う、それで充分なのです。自分の信念に従って、ただの一人の人間として死にゆく姿が見て取れます。
さらには、このマガトは壁を破壊するように命じた側です。キースは最愛の人のカルラが死んだ原因はマーレ国の攻撃によるものということを把握しているはず。
しかし、今は恨まず殺さず、お互いに認め合って役割を果たし共に死にました。しかし、キースがアニの姿を見ていなかったら…、マガトが自身の行動を顧みることがなければ…、もしも出会うタイミングが違えば殺し合っていた仲かもしれない、いわば奇跡的な瞬間です。さらに言うと、二人とも調査兵団の自由の翼をつけて最後は死んでいきました。キースにおいては、元調査兵団の団長であることを踏まえると胸が熱くなるシーンでした。
104期生の共闘
ジャンとミカサ
調査兵団たちはライナー、アニと共闘します。ライナーとアニのことを仲間と認識していることが分かります。倒しているのは同じ島民であり、元仲間ということを考えると、複雑な気持ちになります。
ミカサの覚悟もありました。32巻第128話「裏切り者」の時には敵を殺すことはしていませんでした。しかし、今回では多くの敵を殺していきます。ミカサの「(こうなったら…もうイェーガー派を殲滅するまでやあるしか…)」というモノローグ後、マガトとハンジが敵を銃殺することで救われます。そして「ためらえば仲間が死ぬ」というセリフとともに容赦なく敵を殺していきます。このセリフはアニメで「躊躇えば地鳴らしは止められない」に変更されています。そして、ミカサがオーバーキル気味に敵をどんどん殺していき、血の雨で血まみれになる様子も描かれました。
コニー
この戦闘においてコニーの存在は重要になります。32巻第128話「裏切り者」でやむなくダズとサムエルを殺したので、一足先に通過儀礼を済ませていました。だからこそ、アニとライナーを助けるために敵を斬ることにも躊躇いはなかったのです。その姿に影響を受けて、ミカサとジャンもやるしかないんだ、と覚悟を決めることができたようにも見えます。
アニとライナーが味方という観点で考えると、コニーが二人を助ける場面は恩返しの意味もあります。2巻第9話「心臓の鼓動が聞こえる」ではコニーが巨人に襲われた時に、アニに助けてもらって命を救われました。ライナーには10巻第39話「兵士」でウトガルド城の仲で巨人に襲われた時に助けられた命の恩人です。恩返しとして戦っていること自体は胸熱ですが、一方で殺している相手はパラディ島の兵士であることは残酷であり複雑な心境です。
ミカサとアニ
ミカサとアニは因縁だらけの二人です。7巻第30話「敗者達」のミカサvs女型の巨人戦、8巻第33話「壁」の戦闘シーンでも直接、戦うシーンが描かれます。
直近の32巻第127話「終末の夜」でも調査兵団とマーレ組が対話する中でミカサとアニが一触触発になります。ミカサの「つまり私を殺すべきだと?」の問いにアニは巨人化するときの指輪の棘を出して周囲を驚かせました。そんな2人が共に戦い、ミカサが負傷したアニに肩を貸すところで、この2人の相互理解も徐々に進んでいくように思えます。
注目の戦闘シーン
ファルコの巨人化
ファルコの見た目は、特殊で今までの「顎の巨人」と全然違います。「獣の巨人」の脊髄液が入っている影響で鳥の仮面を付けた顔面とカギ爪、体毛が特徴的でした。
ファルコは初めての巨人化で我を失っている状態です。そんなファルコをピークが抑えることでマガトがファルコを救い出します。ピークがいなければファルコは死んでいたかもしれません。この助け合いのシーンはレベリオ強襲の場面と関連させるとより胸熱です。26巻第103話「強襲」、第104話「勝者」でボロボロになったピークにトドメを刺そうとするジャンに対して、ファルコが身を挺して守る場面があります。ピークのことを武器も持たないファルコが助けていたのです。
ファルコは巨人化して応戦しようとしていました。それを見たピークは「知性巨人の最初の巨人化は上手くいかない」とファルコを止めます。制止を聞かず巨人化したことで仲間たちに危険が及びます。仲間を守ろうとするファルコをピークが守り、助けるというのも感動的です。
ガビの狙撃
26巻第105話「凶弾」でサシャがガビに撃たれ死亡しました。ガビは瞬時に敵の胸元を撃つ、高い狙撃能力があります。今回も船艇に穴を空けようとするフロックをガビが銃で狙撃しました。この場面は、ハンジたち調査兵団側に感情移入して見ると「ナイスショット!」と言いたくなります。
しかし、フロックがかつて仲間だったことを考えると手放しで喜べない部分もあり、感情を揺さぶられる回です。
海と雷槍
アルミンが夢見ていた「海」にダズたち死んだ仲間たちが海に落ちていくシーンも辛いです。アニメでは海が血で赤黒く染まっていました。まさにフロックが語る「血の海」です。
雷槍はかつて「鎧の巨人」であるライナーを倒すためにハンジが開発した武器でした。その武器が調査兵団を襲い、仲間になった巨人に致命傷を負わせることになる、という展開も残酷です。
フロックの鼓舞
フロックは「人類を救えるやつは誰だって聞かれた時に、それは俺だと思ってしまった」と語っています。悪魔がエルディアを救ってくれる、と考えていたフロックでしたが、最終的に「エルディアを救うのは俺だ」という覚悟を決めます。
悪魔であるエレンの元、フロックはエレンの地鳴らし遂行を支援していました。現在の状況は調査兵団たちがエレンを止めに行こうとしていて、エレンが殺される可能性もあります。イェーガー派のボスとして戦っている自分がなんとしてでも食い止めなければいけないという責任感を持っているのです。
フロックが演説をするシーンも印象的です。「心臓を捧げよ!」と兵士たちを鼓舞する場面はエルヴィンの影響を受けているでしょう。しかし、エルヴィンと違う要素もあります。エルヴィンは詐欺師の方弁を使って、兵士たちを先導していることに自覚的でした。一方、フロックは兵士たちに仲間として心の底から言葉を語っている側面が大きいのです。
小ネタ
状況把握が分かりやすい
様々な陣営が交錯し登場人物も多い状況で複雑な回でした。さらに「飛行艇」「船」「蒸気機関車」などのワードも多く出てきます。ここで理解の助けになるのがフロックのモノローグです。アズマビト家の整備士を連れ出す様子を見て、飛行艇でエレンを殺しに行く気だと察します。飛行艇は整備されていないので、飛行艇を飛ばすにはアズマビト家の整備士が必要なのです。
そして、調査兵団たちは飛行艇を積んだ船ごと脱出を試みている、という状況です。
機関車での増援も何者かに破壊された!ということを語っています。
この回は陣営全体の対局を描いているのがスゴイ所です。バトル漫画的な個別のキャラクターによる勝敗とは違う面白さがあります。
横並びのコマ割り
キースとマガトの描き方に注目です。同一人物に見える化のようなコマ割りはお互いに協力関係にあるという示唆にも見えます。
横並びのコマは他にも31巻125話「夕焼け」でもアルミンが混乱している状況で使われています。
表情の対比という面で注目すると21巻83話「大鉈」でエルヴィンとアルミンのどちらを生き返らせるか?という状況でエレンとリヴァイの表情が並べられる場面があります。覚悟を決めたリヴァイと涙を流すエレンが対比的に描かれています。
「元帥だってば」
マガトは隊長から元帥に変わった後も仲間から「隊長!」と呼び続けられるギャグが何度かありました。しかし、これが最後に使われることで切ない表現になっています。ガビが「マガト隊長は?」と聞いてピークが「…元帥だってば」と涙を浮かべて答えます。ガビたちにとっては「元帥」というよりも長い時間を過ごしてきた「隊長」だったのです。
アニメではガビが爆破される船に向かって何か言葉を叫んでいるシーンがあります。察するに「マガト隊長ー!」叫んでいるかもしれません。
火の七日間
地鳴らしが全ての大陸を踏み潰すのに4日かかるだろう、という話がありました。これは「風の谷のナウシカ」の「火の七日間」を思わせる状況です。諫山先生は「風の谷のナウシカ」からも影響を受けているという話があるので意識している可能性もあります。諫山先生に影響を与えた作品についてはこちら。
進撃の巨人129話『懐古』の感想・ネタバレ
進撃の巨人129話『懐古』の感想動画
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