【進撃の巨人】第139話『あの丘の木に向かって』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』のあらすじ

地鳴らし3日目(アルミンの回想 / パラディ島〜オディハ)

パラディ島からオディハに向かう船の中で、アルミンは「道の世界」に呼ばれていた。
エレンが死んだことで、アルミンはその時の記憶を思い出す。

エレンとアルミンは、子供の頃夢見た「氷の大地、炎の水、砂の雪原」を巡る。
エレンは自分の気持ちをアルミンに語る。

「アルミンたちを英雄に仕立て上げるために行動していた」
「地鳴らしで人類の8割は殺される」
「始祖ユミルはフリッツ王を愛していた」
「ミカサがユミルを開放する」
「地鳴らしを何でかわからないけど、やりたかった」
「ミカサに男ができるなんていやだ」

そして、最後に別れを済ませ、アルミンに人類を救うことを託す。

地鳴らし4日目(スラトア要塞)

エレンの死によって、104期生の仲間たちは「道の世界」に呼ばれて、エレンと話した記憶を思い出す。
またユミルの解放によって、巨人の力は消え去り、巨人と化していたエルディア人達は人間の姿に戻る。

リヴァイは、調査兵団の亡霊たちに「心臓を捧げよ」の姿勢で、別れを告げる。
ジャン・コニーは、微笑むサシャの亡霊が消え行く姿を見届ける。
ファルコは、人間に戻ったガビに抱きつこうとするが、照れ隠しに投げられてしまう。
ライナーは、母カリナからの謝罪を受け、愛情を感じ、涙する。

アルミンは、ミカサとエレン(の首)に別れを告げる。
そして、目の前で巨人化したエルディア人を信じきれないミュラー長官の説得を試みる。

ミカサは始祖ユミルに別れを告げて、エレンの首を抱えて一人パラディ島へ向かう。

天と地の戦いから3年後(857年)

リヴァイ、ガビ、ファルコ、オニャンコポンは、オニャンコポンの故郷にて暮らしていた。

パラディ島(エルディア国)は、イェーガー派が取り仕切る軍を結成する。
ヒストリアは3歳になった子供を愛し、幸せな家族生活を送る。

アルミン達は、和平交渉の連合国大使として、パラディ島に3年ぶりに帰還。
パラディ島では、ヒストリアとキヨミたちが、彼らの訪れを待っていた。

一方ミカサは、一足先にパラディ島に帰還。
木の下に小さな墓を作り、エレンの埋葬を秘密裏に済ませていた。
涙を流し、孤独を感じるミカサのマフラーを、鳥がそっと巻いて去っていく。
ミカサは一人つぶやく「エレン…マフラーを巻いてくれてありがとう…」

その後の世界の様子(単行本化筆)

ミカサは老衰し、死ぬ直前まで、エレンの墓を訪れていた。
エルディア国は年々発展を続けるが、その果てに待っていたのは戦争だった。
文明は崩壊し、人も住まないその地に、少年がやって来る。
見つめる先は、エレンの首が埋まる地で成長を続けた、一本の大樹であった。

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』で発生した伏線・謎

Q
(34巻139話)

A
(巻話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(34巻139話)

A
(巻話)

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』で解決した伏線・謎

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』の表現・対比

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』の考察・解説

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』の考察・解説動画

サブタイトル『あの丘の木に向かって』の意味

丘の木で泣いているミカサのもとに、鳥となったエレンが訪れる。
世界を救ったアルミンたちも、パラディ島の丘の木に向かう。
天と地の戦いから長い時が経ち、丘の木は始祖ユミルが落ちた巨大樹のように成長していた。その丘の木に少年が訪れて…。
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

エレンとアルミンの対話

幼少期のエレンとアルミンが「道」で対話する場面から始まります。これは時系列的には131話「地鳴らし」で幼少期のエレンが「ついに…辿り着いたぞこの景色に、なぁアルミン」と言ってアルミンを「道」に呼び出した時のことでしょう。
131話ではその後、船の上でアニとアルミンが会話しますが、アルミンは何が起きたか覚えていない様子でした。

「道」の光景

「道」の世界では風景が次々と変わっていきます。
最初の場面はパラディ島の壁の中のエレンとアルミンが川沿いで本を読んでいた場所でしょう。2人が本を読み夢を語る場面は4話「初陣」・94話「壁の中の少年」・131話「地鳴らし」などで描かれます。そして、2人がいつか探検しようと約束していた
「炎の水」「氷の大地」「砂の雪原」を対話しながら回っていきます。
10歳頃の姿で「炎の水」の場面で始祖ユミルについて語ります。
15歳頃の姿で「氷の大地」を歩きながら会話を続けます。アルミンが凍えている姿があります。
19歳頃の姿で「海」のに辿り着きます。
その後に壁外巨人殲滅の象徴として、最終的に地鳴らしの跡地に行きます。幼少期の2人が見たかった光景の次に自由の代償を描いている。2人の夢と現実の旅路をダイジェストで描いているのだと思います。

夢と貝殻

アルミンがエレンに貝殻を渡していました。
この貝殻は何なのかと言うと90話「壁の向こう側」のラストで海に到達した時に拾ったものです。その時にはエレンはこの貝殻に見向きもせず「向こうにいる敵…全部殺せば…オレ達自由になれるのか?」と言います。
ここに関しては諫山先生が『キャラクター名鑑』で詳しく語っています。
「海を臨んだ時、アルミンは“海にしかない物”象徴である貝殻を手に、エレンに「これ見てよ」と語りかけます。でも、肝心のエレンはそれに見向きもしない。アルミの手にぽつりと残された“見向きもされなかった貝殻”に“夢に終わり” というか“少年期の終わり”という意味を込めています。」
というシーンだったようです。
エレンと共有できなかった外の世界への関心であり心の繋がりでもあります。
他にも諫山先生の言葉で、
「海を見るシーンは、構想当初から嫌な予感を漂わせたかった。何なら「ここで最終回でもいいんじゃないか。」って。今後の物語で、いつかあのシーンの持つ意味合いが変わってくればいいなと思ってます。」
と言っています。

エレンの本音

冒頭でアルミンが「どうして僕をボコボコにしなきゃいけなかったの?」と質問します。112話「無知」にてパラディ島内紛時、レストランでの幼馴染3人とガビとの会話(圧迫四者面談)のことです。
当時は会話の目的が不明でしたがエレンは「お前達を突き放すことに必死で…」と語ります。嫌われることで自分を見捨て、助けに来ないことを狙っていたことが分かります。結果的にボコミン・ナグラレルトさんになってしまったのは痛々しかったです。
「道」の世界の海の場面でミカサについて「エレンを忘れて幸せに生きていけると思う?君が臨んだ通りに…」の質問に「…さぁ、わかんねぇ」と答えた途端、アルミンがエレンを殴っていました。エレンの殴られて顔が歪む姿も新鮮です。
そして、「そんなの嫌だ!!一生オレだけを想っててほしい!!ミカサに男ができるなんて…!!オレが死んだ後もしばらく…10年以上は引きずっててほしい!!」とエレンが珍しく、子供のように本心をさらけ出します。
ミカサへの「嫌い」発言もでたらめで、愛しているからこその態度だった、ということが明確に分かる場面です。

エレンの計画

「突き放した僕らをエレンを討ち取り人類を滅亡から救った英雄に仕立て上げるためなの?」とアルミンが聞いていました。
エレンは「…そうだ」と言います。エレンの計画について解説します。

地鳴らし

123話「島の悪魔」で世界のユミルの民に向けて地鳴らしを宣言していました。自分が悪の存在と示すためです。
さらに世界の八割の人を殺し、軍事施設の破壊を行いました。130話「人類の夜明け」で世界連合艦隊が壊滅する描写もあります。地球上に存在しうる最も巨大な大砲のほぼすべてが集結した奇跡の艦隊と説明されています。また「これを止める手段は…もう人類に存在しえない」とも語られています。
134話「絶望の淵にて」でミュラー長官は「ここが…人類に残された最後の砦となる…」とも言うように物理的にパラディ島への復讐は厳しいという状況がわかります。
そんな中でアルミンたちがスラトア要塞に来て地鳴らしを止めるために戦う様子を群衆が見つめる。
アルミンたちが英雄になるための下地を整えていたということが分かります。アルミン達を英雄にするため自分が犠牲になるエレン。例えるなら「泣いた赤鬼」のようなストーリーでしょう。

一方でエレンは「地表をすべてをまっさらな大地にしたかった…」と語ります。「なんで?」と問うアルミンに対して「なんでかわかんねぇけど…やってみたかったんだ…」とも答えます。131話「地鳴らし」にて雲の上から見る光景を見て「自由だ」と光悦とする表情を見ると幼少期の原初的欲求もあったのではないか、とも感じます。

人類を救うのはアルミン

「道」での会話で「お前なら壁の向こうに行ける」という言葉。これは131話「地鳴らし」でアルミンが言っていた「まだ僕らが知らない壁の向こう側があるはずだと…信じたいんだ」というセリフにリンクします。そして「人類を救うのは…アルミンお前だ」という言葉も84話「白夜」で「人類を救うのはオレでも団長でもない!!アルミンだ」というエレンの言葉とも重ねています。
約百年前の巨人大戦で仕立て上げられた英雄、へーロスと重なる部分もあります。語源としてはギリシア語の英雄「ヘロス」から来ているとも思います。

お前は自由だ

情熱大陸のインタビューで取り上げられた「エレンお前は自由だ」というコマ。当初は最終コマと予定されていましたが、139話の途中で登場しました。グリシャが赤子のエレンを抱きかかえています。
グリシャはマーレ国ではエルディア復権派でした。そして、子供であるジークをエルディア復権のための道具として育て、裏切られ後悔することになります。パラディ島では後悔からエレンは自由に育てました。

121話「未来の記憶」にてジークに対して「父親がオレをそうした訳じゃない、オレは生まれた時からこうだった…」と言います。25話「噛みつく」でリヴァイも「コイツは本物の化け物だ、『巨人の力』と無関係にな」と語ります。エレン自身が自由を求める意識は誰にも服従させることはできない。それは教育や環境ではなく、生まれつきそういう人間にだったということです。

最後の戦い

光るムカデ

一つ目。光るムカデと巨人の力の終わりなんですけれども、光るムカデは爆発を食らっても死ななかったですが結局は宿主エレンの死亡で消滅したんじゃないかなと。
今まで始祖の巨人の保持者が死んだことって恐らくなかったんじゃないかなと思うので光るムカデもいつの間にか消滅していました。
で奇しくもと言いますかエレンが最初に望んでいた通り巨人を駆逐する物語となっていったという感じです。

巨人の力が消える

超大型異巨人の爆発でも死ななかった光るムカデが消えました。宿主である始祖の保持者エレンが死んだためでしょう。奇しくもエレン「巨人を駆逐する」物語になっていきました。
コニーとジャンが無事に人間に戻ったのが良かったです。コニーの母親も人間に戻れるといことで嬉しい結末となりました。
そして、コニーとジャンが見たサシャの幻影。恐らく敬礼をしながらいつもの笑顔でこちらを見ています。服装は飛行艇で亡くなった当時のままの姿、そして消えていく…それを見て涙ぐむコニーとジャンは肩を抱き合います。

それぞれの再会

巨人の力が消えたことでそれぞれのキャラクターが再会します。

ファルコ・ガビの再会

ガビも人間に戻ったことを泣きながら喜ぶファルコが思わずガビに抱きつこうとします。しかし、ファルコはガビに投げ飛ばされてしまうのです。直前のガビの赤らんだ顔から照れ隠しのような印象も受けます。118話「騙し討ち」でファルコはガビに「お前が好きだ。オレと結婚して幸せでいるためにお前に長生きしてほしかった」と告白しているのでガビはファルコのことを意識しているでしょう。

アニ

アニにとってはすべては戦いのすべては父親と再会するためでした。138話「長い夢」では再会があと一歩で叶いませんでしたがここでやっと再会し抱擁します。父親の「おかえりなさい」アニの「…ただいま、お父さん…」というやりとりができました。本当によかった…。

ライナー

ライナーも母親と再会します。ライナーの母カリナは地鳴らしの光景やミュラー長官の演説を受けて子供を復讐の道具にしていたことを悔いていました。ライナー自身も鎧の巨人の継承者であることが自分の価値であり母親が認めてくれていると信じていました。再会した時の一言目が「母さん…俺、もう…鎧の巨人じゃないみたいなんだ…」と発したのはそのためです。カリナの返答はライナーの想像した言葉とは違いました。「本当かい?それは良かった」これは13年の寿命ではなくなったことを良かったと言っています。「ずっとごめんねライナー、これ以上何もいらなかったんだよ…」と謝罪し、無条件の承認と愛情を示すカリナにライナーは驚き、涙を見せます。

リヴァイと調査兵団の幻影

リヴァイは今までエレンをずっと守ってきました。仲間が死んでもそれが人類が生きる希望として信じて進み続けていました。
そして調査兵団の幻影を見ます。微笑んでいる調査兵団の仲間たちの姿です。ただハンジさんは心配しているような表情をしています。リヴァイの弱った姿を見ていましたし複雑な思いがあったでしょう。
特別編「リヴァイ兵士長」では名もなき兵士を看取る際に「約束しよう俺は必ず!!巨人を絶滅させる!!」と語りました。結果としてその約束も果たされました。
そして調査兵団の幻影と共に「心臓を捧げよ」のポーズをします。調査兵団の大きな物語の終着点であり死者に意味を与えるために心臓を捧げてきたリヴァイの物語の終わり、そして仲間への弔いの気持ちも感じます。そしてリヴァイが泣いているような描写、これに気づくと更に泣けてきます。

アルミンとミュラー長官

エルヴィンの代わりに生き残り、エレンに人類を救う役割を託されたアルミンの活躍も注目です。

アルミンがミュラー長官を説得する場面は第3巻11話「応える」のキッツ隊長(子鹿隊長)を説得する場面のリフレインです。どちらの場面でもアルミンは立体機動装置を捨ててから対話に向かいます。当時は「攻撃の意思がないこと」の意思表明でしたが、巨人の力が去った今は「この世界に暴力は必要のないこと」の表現にも見えます。

その場面では、エレンの身を守るために「エレンは巨人としての戦術価値がある」と説得しました。それを受けてキッツ長官はアルミンの言葉に対して「ヤツらの巧妙な罠に惑わされるな!!」と否定する言葉を返していました。アルミンはその姿に「考えることを放棄している…」と感じます。

今回はエレンの願いを守るために「我々は人である」と説得しました。ミュラー長官も目の前で巨人化したエルディア人に恐怖していました。しかし、信じたい気持ちもありました。134話「絶望の淵にて」で「私は誓う、皆も…どうか誓って欲しい、二度と同じ過ちは繰り返さない…憎しみ合う時代との決別を、互いを思いやる世界の幕開けを…」と人々に語ります。その誓いがあったから「頼む…証明してくれ」と肯定するための質問をしていたのでしょう。そしてミカサの代わりにエレンを討伐した者として名乗り出ます。

去っていくミカサ

地鳴らしの元凶であるエレンは首だけとはいえ、このまま見つかれば埋葬させてはもらえないでしょう。死者の尊厳を守るため、埋葬して弔うためにミカサはエレンの首を抱いてパラディ島へ去っていきます。

3年後の様子

時代は変わり、「『天と地の戦い』と呼ばれたあの日から3年…」というヒストリアの手紙から場面は始まります。

ヒストリア

134話「絶望の淵にて」でヒストリアの出産シーンを最後にヒストリアは登場しませんでした。ここで無事に娘を出産していたことが分かります。そして、ケーキのろうそくが3本であること、「天と地の戦い」から3年ということから3歳に成長していたことも分かります。女王の娘の誕生日ケーキであるにも関わらず質素な食事をしていることから贅沢をせず慎ましく暮らしている様子がわかります。

パラディ島の様子

島のその後としてイェーガー派が取り仕切る「軍」が軍備増強に力を注ぐ様子が描かれます。「自由の翼」のエンブレムは「銃の翼」へ変わっています。市民たちの狂信的な様子に対してあくびをするヒッチ、冷ややかな目のフレーゲルの表情が対照的です。他にも過去の登場人物としてリコ、ブラウス厩舎の人々、ニコロ、新聞記者のピュレとロイなど過去に登場した人々も描かれています。

リヴァイとファルコ・ガビ・オニャンコポン

オニャンコポンの故郷なのか、パラディ島とは違う人種の国のようです。
リヴァイはパラディ島へ戻らず、ファルコたちと異国で過ごす様子が描かれます。調査兵団の仲間達である大事な人を失ったことや、癒えない体の傷、不自由なこともあるかもしれません。そんなリヴァイが人類最強の兵長としての役割を降り、1人の人間として生きる姿が描かれます。(町並みからしてロンドンであれば大好きな紅茶を飲むのかな?と想像します。)

空を見る元調査兵団たち

リヴァイは異国で車椅子に乗りながら空の飛行機を見ます。そこにはハンジさんの面影を感じさせます。なぜなら、見開きで次ページを見ると船に乗るアルミンが飛行機と同じ角度で空を飛ぶ鳥を見ます。鳥は羽を落とし、アルミンが優しく受け止めます。自由に空を飛ぶ鳥にエレンを重ねているように感じます。飛行機は文明の象徴であり、理解することを諦めないハンジの姿を彷彿とさせます。アルミンがエレンを想像したようにリヴァイもハンジを想像していると感じさせるページです。

元マーレの戦士たち

ライナーやアニ、ピークは始祖奪還作戦のために845年にはすでに巨人を継承していました。ライナー達はそこから5年後、調査兵団に入団しましたが始祖奪還に失敗してマーレへ帰国。ライナーは4年間マーレの戦士として戦場で活躍します(94話「壁の中の少年」より)。93話「闇夜の列車」でファルコがライナーに「あなたの任期はあと2年ですから」と言います。
3年後も生きているということは、ライナーにとって13年の寿命を超えたこと、つまり「ユミルの呪い」が解けたことを表します。

エレンの墓標

壁が無くなったパラディ島では遠くの景色まで見渡せるます。よく見ると壁の跡に瓦礫が残り、シガンシナ区の形が分かります。
ミカサはエレンが1話「二千年後の君へ」で昼寝をしていた木の根元に墓標を作ります。
墓標には「最愛の貴方、ここで永久(とわ)に居眠りにつく。854」とあります。「永久の眠り」ではなく「永久の居眠り」というのがエレンがいつまでもそこに存在している、という感じがします。エレンが穏やかに居眠りをしている姿を見ていたミカサだからこその表現なのでしょう。この墓標はミカサがエレンの存在を理解し、愛していることを表しているのでしょう。

鳥とマフラー

エレンから「捨ててくれ」と言われたマフラーですが、ミカサは今も大切に首に巻いていました。涙を流し「またあなたに会いたい…」とうつむくミカサのマフラーがほどけます。その時、鳥が現れてマフラーを嘴にくわえて巻き、鳥は飛び去ります。
50話「叫び」でミカサが「マフラーを巻いてくれてありがとう」と言うシーンの再現です。ミカサは同じ角度でエレンと鳥を見つめ、涙を浮かべ微笑みます。
この場面はエレンのあの言葉を思い出します。「そんなもの何度でも巻いてやる」というセリフですが、これには続きがあります。
「これからもずっとオレが何度でも」
『エレンはいつまでもミカサの傍らにいる』ということが示されていると思います。

単行本加筆ページ

ミカサが始祖ユミルに話しをするシーンが追加されます。
本誌では「エレン、マフラーを巻いてくれてありがとう」で終わっていましたが、単行本ではパラディ島のその後の世界が描かれます。

ミカサの頭痛

エレンの首を抱きかかえ1人パラディ島へ向かう途中でミカサの前に始祖ユミルが現れます。
ミカサは「あなただったのね…ずっと私の頭の中を覗いていたのは…」と言います。
ミカサ頭痛の原因は始祖ユミルがミカサの頭の中を覗いていたからだったのでしょう。なぜ始祖ユミルはミカサを見ていたのか、エレンの言葉から考えます。エレンは「ユミルは愛の苦しみから解放してくれる誰かを求め続け…ついに現れた、それがミカサだ」と言っています。
もう少し噛み砕いて考えてみます。始祖ユミルは地鳴らしをするエレンにフリッツ王を重ねて、エレンを愛するミカサに自身を重ねて見ていたのではないかと思います。エレンを愛するミカサの行動を覗き見ていたのでしょう。

フリッツ王の死亡

122話「二千年前の君から」で始祖ユミルがフリッツ王を庇って死亡するシーンがあります。
追加描写では始祖ユミルがフリッツ王を庇わなかったシーンが描かれます。
可能性としては、ユミルの心境の変化でこの光景を願った。ミカサがエレンに手をかける姿を見て「愛する」ということは彼の命令に従うことだけではない、と感じた。
別の可能性としては3人の娘たちと抱き合う姿から家族の愛、に気づき影響された。
いずれにしても、過去に戻って始祖ユミルが違う選択をしていたら、巨人の力は引き継がれずに消滅したでしょう。
過去も未来もない「道」の世界であれば不可能ではないかもしれません。
一方でエレンが死亡した時点で巨人の力が消えているようにも見えるので他の可能性も考えられそうです。

あの丘の木

パラディ島の「丘の木」から見た「世界の変化・時間経過」が描かれます。パラディ島の発展と崩壊が描かれます。
エレンの墓の木である、「丘の木」がかなり成長しています。854年ではミカサ5人分くらいの高さでしたが、ミカサの晩年には100人を優に超えています。時間の経過と木の異常な成長を感じます。

ミカサとジャン

ミカサの肩を抱く隣の男性は襟足と顔の長さからしてジャンでしょう。しかし、ミカサが抱く子供は2人の子供なのか、近くにいるのは孫なのか?それは分かりません。敢えてセリフが無いことでどちらとも取れる描かれ方をしているのだと思います。

その後のミカサの人生

車椅子でエレンの墓を訪れるミカサの姿があります。そして、お花を添える手の描写。皺の入った手、手首の包帯から年老いたミカサで間違いないでしょう。

エレンはアルミンに対する本音で「オレが死んだ後も10年は引きずっていて欲しい」と言っていました。そして、108話「正論」でも104期の仲間に「長生きしてほしい」と言っていました。エレンの願い通り、ミカサは天寿を全うしました。ミカサが亡くなったときの棺桶の中にマフラーが入っていることから生涯エレンを大事に思っていたことが想像されます。

パラディ島の平和

アルミンたちの和平交渉はおそらく成功したのでしょう。少なくともすぐに戦争は起きていないですし、ミカサが死ぬ60年〜80年くらいまでは文明は発達し続け、平和が維持されていることが分かります。

争いはなくならない

ミカサたち登場人物が天寿を全うした後、戦争が起き文明は滅んでしまいます。アルミンたち物語の語り部がいなくなった後に戦争が始まったのでしょう。
パラディ島が攻撃される理由としては謎です。もしかしたら、地鳴らしの報復かもしれませんし、パラディ島にある貴重な地下資源の氷爆石を巡る争いかもしれません。
アルミンが言っていた通り「アニ…争いはなくならいよ」ということが真実だったということです。

結局、パラディ島が滅ぶのであれば今までの行いは無意味だったのか、とニヒリズムを感じる部分もあります。しかし、104期生がいるうちは平和が維持されましたし、巨人の力が消えたことは意味があった、と思いたいです。

少年と犬

ラストページの追加描写です。
パラディ島の文明が滅びて数千年後、あるいは数万年後でしょうか。(※ナウシカ「火の七日間で千年経過」、Dr.STONE「人類の石化から3700年後」なので千年単位で作品が描かれることはあり得ることです)

崩れた建物が自然に飲み込まれる風景の中に少年と犬が登場します。この少年の格好からして旅をしている、あるいは冒険をしているのでしょう。一本だけ極端に大きく育った木に好奇心を駆られ、訪れたのかもしれません。
犬の描写は始祖ユミルと重ねて描かれているのでしょう。犬に追われていた始祖ユミルと対比的に少年と犬は友好的な関係であることが分かります。

そして、少年が見上げる木の構図は122話「二千年前の君から」の始祖ユミルが木を見上げる構図と同じです。
このことから色々な想像が膨らみます。
このあと始祖ユミル同様、樹洞に足を踏み入れて光るムカデに寄生され、巨人の力を得てしまうのではないか?エレンの首が埋まっていることで光るムカデの残滓のようなものがあるのではないか?ならば歴史を繰り返すのか?
それとも違う歴史が紡がれるのか…?

この木の描写があることで「あの丘の木に向かって」というタイトルが別の意味を持つというのもとても面白いです。

進撃の巨人のスクールカースト

エンドロールと書かれた最後のスクールカーストでは幼馴染3人が映画を見ています。
注目なのは「信じらんねぇよな、100年前本当に巨人がいたなんて」という部分です。この言葉から「進撃の巨人」本編の100年後の世界という解釈ができます。エレン達は「進撃の巨人」というドキュメンタリー作品を映画館で見ていたことになります。
その解釈を元に時系列を考えると…巨人の力がなくなり、ミカサが死亡。約100年後にスクールカーストの世界、そして再び戦争が起こり文明が崩壊。長い時を経て「少年と犬」の場面、となります。
そうであれば、120話「刹那」でのスクールカーストのミカサとアルミンのコマが回収されます。しかし、スクカーエレンの記憶を本編エレンはどうやって見たのか?という疑問が生まれます。
更に言うと100年は無事だったけど、スクカーエレンたちの日常は結局は滅んでしまうのか…。本編1話「二千年後の君へ」のように平和な日常を壊す何かが起こってしまうのではないか?という感じもします。

スクカーの細かな描写をさらに見ていきます。
マルコが1コマ目にいます(おなじみの幽霊の姿です)。
ポップコーンのカップの絵が超大型巨人が描かれています。
始祖ユミル親子が仲睦まじく街を歩く姿、ユミルの口元が微笑んでいます。

エゴサして得た読者の声の代弁とも思えるセリフも面白いです。
ミカサの「よかった、伏線回収された」、アルミン「予想通り・期待を裏切ってくれない」という声は読者の声の代弁かもしれません。それに対してエレンが「お前らと映画見られて楽しかった、もし次回作があればまた見に行こうな」これが諫山先生のメッセージではないかと思います。遠回しに「次回作があったら、また読んでね」という風にも受け取れます。

全体的にこれらの単行本加筆描写ミカサが言う通り、想像の余地を残した描き方のためにセリフがあまりなかったのだと思います。
皆さんの解釈も聞かせてもらえると嬉しいです。

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』の感想・ネタバレ

進撃の巨人139話『あの丘の木に向かって』の感想動画

関連記事

135話『天と地の戦い』
136話『心臓を捧げよ』
137話『巨人』
138話『長い夢』
139話『あの丘の木に向かって』

3 COMMENTS

T

ハルキゲニアが自らの生存のために人類と共生して来たのなら、
人類が理不尽に攻撃してきた時点で、手加減なしで反撃するんじゃ?

ハルキゲニアは特権モードで地鳴らしを単独で再開できるだろうし、
壁の巨人を動員してストッパーズを殲滅出きるだろうと思う。
#巨人システムをエミュレートしている存在ができない理由が
 あるようにはみえない。

怒ったハルキゲニアが9つの巨人を回収して、残りの巨人を
結晶化して去って、巨人は駆逐されました、一匹残らず、
て感じでしょうか。で、農夫がヒストリアの子を抱いて
「お前は自由だ」で終わり。

返信する
人間

エレンの駆逐完了=野良巨人&自分&アルミンたち(知性巨人)が消えることだよね。もし光るムカデが死ぬことでの巨人の駆逐じゃなくて、自分の死。そして、ムカデ道ずれの巨人が消える。(巨人のちからがつかえなくなる、野良巨人が人間に戻る)そんな感じかな。  

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