【進撃の巨人】第78話『光臨』考察・解説・感想【ネタバレ】

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進撃の巨人78話『光臨』のあらすじ

シガンシナ区内(外側) ※ハンジ・アルミン達 vs 鎧

樽に入っていたベルトルトが、姿を表す。
アルミンが再び「話し合い」を持ちかけるが、ベルトルトの心は揺るがない。
ライナーを助けるため、104期生たちのもとを離れて、巨人化。
仰向けになった鎧の巨人の近くにいたハンジ班は、超大型巨人の爆風によって死亡してしまう。

ウォール・シーナ壁内(内側) ※エルヴィン・リヴァイ達 vs 獣

戦局に変化なし。

【時期】850年
【場所】パラディ島

進撃の巨人78話『光臨』で発生した伏線・謎

Qアルミンがベルトルトに話し合いを持ちかける。エレンはその行為を理解できない
(19巻78話)

A
(28巻112話)

関連進撃全話の伏線・謎まとめ

残された謎

Q
(19巻78話)

A
(巻話)

進撃の巨人78話『光臨』で解決した伏線・謎

進撃の巨人78話『光臨』の表現・対比

進撃の巨人78話『光臨』の考察・解説

進撃の巨人78話『光臨』の考察・解説動画

サブタイトル『光臨』の意味

神の如き「超大型巨人」が光臨(降臨)した
関連進撃全話のサブタイトルの意味を考察

ポイント

アルミンの交渉姿勢とベルトルトの覚悟

アルミンはなぜ交渉を望んだのか

アルミン・アルレルトという人物は、物語を通して一貫して対話と理解による解決を模索するキャラクターとして描かれています。彼は『進撃の巨人』ファンブック「Answers」にて「グローバリズム的思考を持つ人物」と評されています。

彼の視線は常に世界全体を見据え、壁の内と外にいる者たちが互いに理解し合う可能性を信じています。その姿勢は、かつて女型の巨人と化したアニに対して「話してよ、アニ。僕たちはまだ話し合える」と語りかけた場面にも表れています。

そして第78話、アルミンはベルトルトに対し、最後の交渉のチャンスとして真正面から語りかけます。

「これが最後の交渉の機会です」とハンジに伝えた上で、彼はベルトルトの元へと向かいました。

ベルトルトの内面にあった「確認」の思い

この時、ベルトルトはすでに覚悟を決めていました。

「僕らの目的はエレンの引き渡しと、壁内人類の死滅だけだ。」

この発言に、アルミンは「誰がそれを決めたんだ?」と問い返します。するとベルトルトははっきりと、「僕だ」と答えます。これまで周囲に依存していたベルトルトが、自分の意志で決断を下した瞬間です。

では、なぜベルトルトは交渉に応じたのか?

本来であれば、即座に攻撃へ移るべき状況でした。にもかかわらず、彼は時間を割いてまで会話に応じた。その理由は「確認」でした。

・再び弱さに負けてしまわないか

・かつてマルコを自らの手で殺さず巨人に委ねたあの時と同じ後悔を繰り返さないか

・アルミンの言葉に心を乱された過去の自分はもういないか

これらを自らに問い直すためだったのです。

「君たちは大切な仲間だ。だから、ちゃんと殺そうと思ってる。」

この発言にこそ、ベルトルトの決意と覚悟がにじんでいます。

アルミンの「ゲスミン化」と精神攻撃

交渉が不調に終わったと判断したアルミンは、次なる手段に出ます。読者の間で「ゲスミン」と呼ばれる、精神攻撃による攪乱です。

「それは残念だよ。僕はもうアニの悲鳴は聞きたくなかったのに。」

「アニは家畜の餌にされようとしてるんだ。助けられるのは君だけだったのに。」

アルミンの言葉は事実ではありません。アニは現在、水晶体の中で完全に守られており、拷問の対象にはなっていない。しかし、かつてベルトルトがアルミンの「アニは拷問されている」という挑発に動揺し、敗北に繋がった過去があるのです。

今回はベルトルトが揺らがない。

それは、彼が心の弱さを乗り越えた証であり、成長の現れでもありました。

エレンとアルミンのすれ違いの始まり

この交渉シーンは、エレンとアルミンの価値観の違いを際立たせる伏線としても機能しています。

アルミンは「理解できない敵」とも対話の可能性を信じて行動しますが、エレンはそれを理解できず、「何やってるんだ、アルミン……」という表情を見せています。

このすれ違いは、後の物語において決定的な亀裂となり、やがて対立へと発展していきます。

第28話ではエレンがこう語っています。

「今じゃ二言目には話し合おうだと? 前は……今見てるやつはあんな甘っちょろいやつじゃなかった。必ず俺たちを正解に導く決断力を持っていたのに……!」

アルミンの「交渉への信念」とエレンの「絶対的な力による解決」――この二人の間にある思想の差は、後の展開を考える上で極めて重要な視点となります。

ベルトルトの「悪魔」発言の変化

第19話で語られたテーマの一つが、「悪魔とは何か」です。

ベルトルトはかつて、壁内人類を「悪魔の末裔」と呼んでいました。

しかしアルミンに問いかけられた時、彼はこう答えます。

「いいや、君たちは誰も悪くない。悪魔なんかじゃないよ。」

これは非常に重い一言です。つまり、「悪魔」という存在は、誰かの視点によって作られた幻想に過ぎないということが明かされるのです。

たとえば中央第一憲兵のサネスも、視点を変えれば悪魔とされ、または善として語られることもある。悪魔とは絶対的な存在ではなく、誰かの都合や教育によって生み出されたレッテルに過ぎない。

それでもなお、ベルトルトは言います。

「君たちは悪魔じゃない。でも……世界はこんなにも残酷じゃないか。」

悪魔ではない者たちが、残酷な世界で殺し合うしかない現実。この矛盾こそが、『進撃の巨人』という物語が読者に投げかける本質的な問いなのです。

ミカサの攻撃と、超大型巨人の覚醒

交渉の後、ミカサはベルトルトに直接斬りかかりますが、返り討ちに遭います。これまでミカサの力に敵う者はほとんどいませんでしたが、この時のベルトルトは覚醒状態にあり、ミカサですら敵わなかったのです。

「本当にあれがベルトルトなのか……?」

ミカサの心中には、彼の変化に対する疑念と畏怖が入り混じっていました。

もともとベルトルトは高い潜在能力を持っていましたが、性格の弱さゆえに発揮できずにいた。それが覚悟を持ったことで一気に開花したのでしょう。

そして、彼が超大型巨人となって放った爆風は、ハンジ班を壊滅させるほどの威力を持ち、多くの命を奪いました。

最後に:悪魔ではなく、人間として生きること

ベルトルトの「君たちは悪魔じゃない」という言葉は、ただの赦しではありません。それは戦場に立つ者同士が互いに人間として向き合おうとした最後の瞬間でもありました。

交渉は決裂し、戦いは避けられない。

それでも、そこに至るまでの会話の中に、希望の欠片が残っていた――そう思わずにはいられません。

交渉という行為一つをとっても、キャラクターの成長や思想の違い、さらには物語のテーマにまで繋がっているのが『進撃の巨人』の奥深さです。

進撃の巨人78話『光臨』の感想・ネタバレ

進撃の巨人78話『光臨』の感想動画

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