『大列車強盗』(The Great Train Robbery)の感想・解説・見る方法を紹介します。
目次
『大列車強盗(1903)』とは?
『大列車強盗(1903)』概要
- 『大列車強盗』(The Great Train Robbery)
- 脚本 エドウィン・S・ポーター
- 原作 スコット・マーブル
- 1903年公開
- 製作国はアメリカ
- モノクロサイレント映画
- 12分と短め
世界初の西部劇映画と呼ばれている(後述)。
アメリカ映画では初めて「本格的なプロット」を持った作品としても知られている。
監督はエドウィンSポーター。
エジソン社でエジソンのもとでカメラ技師として映画製作をしていたが、監督として本作を手掛けることになった。
USJのバックドラフトの入り口で流れている「アメリカ人消防士の生活」という作品を作ったのも彼だ。
※Youtubeで見られる(こちら)
最初に断っておくと、『大列車強盗(1903)』は面白くない。
しかし「今に通じる映画技法がこの時生まれたんだな」と思って見ると楽しめる。
『大列車強盗(1903)』のスゴいところ
映画独自の技術をふんだんに使った最初の映画の一つである。
- ロケーション撮影
- 縦の構図の利用
- 並行描写
- パン撮影
- クローズアップ
これらの技法がどこで使われたかは、あらすじと共に後ほど語る。
『大列車強盗(1903)』のラストシーンの逸話
印象的なのがラストの「カウボーイハットをかぶった男が観客に向けて銃を撃つ姿」だ。
実はこの「アップで銃を打つ映像」は上映館の判断で「冒頭」に持ってくることも可能だったそうだ。制作元のエジソン社の遊び心が感じられる。
『大列車強盗(1903)』のあらすじと解説
ざっくり言うと
- 停止中の列車に強盗が侵入する
- 強盗は乗客から金品を奪い、馬に乗って逃亡
- しかし、町の自警団により捕らえられてしまう
という話。
14のシーンの詳細はWikipediaを見てもらったほうが早い。
大列車強盗の「並行描写」
「シーン②:4人の強盗が列車に乗り込む」の後、
- シーン③:強盗(チームA)が金を奪う
- シーン④:強盗(チームB)は列車を停止させる
の場面で、並行描写がされている。
今となっては当たり前だが、2箇所で起こっている出来事をシーンを繋げて観客に伝えている。
大列車強盗の「パン撮影」
シーン⑨の「強盗が列車から山へ逃亡するところ」で、パン撮影が行われている。
強盗団の姿からカメラがパンして、逃走用の馬が隠されていたと分かる。
大列車強盗の「縦の構図」
シーン⑬の「強盗と警官隊の銃撃戦」で、縦の構図が効果的に使われている。
大列車強盗の「クローズアップ」
印象的な最後のシーン⑭。
強盗のリーダーが観客側に向かって発泡するシーンは、他のシーンとことなり唯一の「クローズアップ」だ。
『大列車強盗(1903)』の感想
時代的に仕方ないが、純粋なエンタメ作品としては面白くなかった。
※映画の歴史を見る目的じゃなきゃ、見なかっただろう。
ただ、この映画を通じて「昔はこんな素朴なシーンの構成で作られていた」と今とのギャップを楽しめた。
「今にも通じる映画の撮り方が、この時できたのか」というのも感慨深い。
当時は恐らく、舞台演劇が「人が演じる物語」を見せる上での一つのフォーマットだっただろう。
しかし、クロスカッティングなどの技法で、観客にとっては瞬間的に「場所を超越した体験」ができるようになったというのは衝撃だったのではないかなあ、とも。
あとは最後の「強盗のクローズアップ」はちょっと意表を突かれた。
ずっと遠巻きに撮影していて、近くに人が来るのは今でも使える手法だ。
突如メタ的に、観客の方に語りかける手法とも通じる。
『大列車強盗(1903)』は世界初の西部劇映画?
「映画史上、最初の西部劇」と知られている本作。
しかし近年「西部劇ではないのでは?」という声もある(参考文献)
西部劇100選のエドワード・バスカムは「最初の西部劇ではない、あるいはそもそも西部劇ではない」と語っている。
代表的な理由としては、
- 撮影場所が東海岸ニュージャージー州(西じゃない)
- 紀行映画、強盗映画が元である(西部劇ではない)
- この映画以前にキット・カーソンなどの西部劇があった
など。
ただし、西部劇の基本要素ともいえる
- カウボーイ
- 拳銃
- 馬
- (列車強盗)
を備えている作品なのは間違いない。
なおバスカムは「西部劇かどうかはさておき、西部劇というジャンルの発展に最大級の影響を与えた作品だ」とも語っている。
私としては、基本的には「西部劇映画」と思って良いと思う。
ただし映画評論家、映画通のような人が「違う」と言ってきたら、「西部劇というジャンルに最も大きな影響を与えた映画だ」と答えれば良いと思う。
『大列車強盗(1903)』を見る方法(Youtubeで無料)
『大列車強盗(1903)』は著作権切れなので、無料で見ることができます。
Youtubeにアーカイブがあるので、サクッと見るのがおすすめ。