映画『月世界旅行』感想・解説【世界初のSF映画とポンキッキーズへの影響】

世界初のSF映画『月世界旅行』の感想・解説です。

監督の紹介や見る方法についてもまとめました。

世界初のSF映画『月世界旅行』とは?

月世界旅行の概要

  • 題名:『Le Voyage dans la Lune』(英:A Trip to the Moon)
  • 監督:Marie Georges Jean Méliès (1861-1938)
  • 1902年公開
  • 世界最初のSF映画
  • モノクロサイレント
  • 15分と短め

この映画は、

  • ジュール・ベルヌの著書「月世界旅行」
  • H.G.ウェルズの著書「月世界最初の人間」

を基に、月旅行への憧れがテーマとなっている。

 

監督ジョルジュ・メリエスとは?

監督は、映画の魔術師ジョルジュ・メリエス。

メリエスは、リュミエール兄弟が発明した映画(シネマトグラフ)を見た影響から映画監督を志し、世界で初めての職業映画監督となった。

もともと、マジシャンであった彼は、様々な映画表現を作品に取り込む。

月世界旅行の中でも

  • 人を消す(月に住む住人を消す)
  • 宇宙船を消す
  • 爆発させる

などを駆使して、世界初のSF映画映画を成り立たせる。

ちなみに彼は、「監督・脚本・撮影・演出」など撮影に関すること全般を行っており、更には主演もしている。

 

映画『月世界旅行』あらすじ解説

昔の映画なので、ネタバレありであらすじを語ります。

メリエス(天文学教授)は、天文学会に所属する5人の学者たちと念願だった月旅行の計画を検討する。

黒板を前にして、喧々諤々の議論を繰り広げた挙げ句、月に行くことが決定する。

 

彼らは地球から打ち上げられた砲弾に乗り、月面へと無事にたどり着く。

月には「人の顔」があり、彼らは月の「右目」部分にたどり着く。

Le Voyage dans la lune.jpg

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%97%85%E8%A1%8C_(%E6%98%A0%E7%94%BB)

 

月から地球を見たり、月で一眠りをした後に、月面の洞窟を探索する一行。

キノコが生える洞窟の中に、異星人(月の住人)と出会う。

問答無用に月の住人たちを殺す地球人6名。

しかし、捕獲され、月の王様らしき人物の前に差し出される。

 

その中の一人が奮起し、王様を殺害。命からがら、ロケットに逃げ込む。

そのままロケットは地球の海に落下し、無事に帰還することができた。

地球では彼らの偉業を称えるパーティーが行われる。

 

映画『月世界旅行』感想

1902年。人類はまだ月に到達していない。それ故に

  • 月で呼吸できる
  • 月から地球に落下すれば帰れる
  • 月には月の住人が住んでいる
  • 星座にも人がいる

など、当時の感覚について思いを馳せる楽しさがあった。

無声映画ゆえの演出

また、無声映画ゆえに、登場人物の動作がいちいち大げさ。

映像だけで人に何が起こっているかを伝えるには、大量にキャラクターを出したり、一つ一つの行動をかなりデフォルメして描くことが重要なのだな、と分かる。

現代人の我々からすると、「欽ちゃんの全日本仮装大賞」のようなコメディに感じる一幕も多い。

カメラを動かさない

当時としては、カメラを動かす技術・発想が無かったのだろう。

この作品では、定点カメラから、人々が動く映像が1〜4分程度流れることが多い。

「カメラ(主観)」も動くというのは人類の発明なのだな、と気付かされる。

他国の侵略(月世界の侵略)

ちなみに内容としては

  • 人類が月に到着する
  • 月の住人を殺す
  • 地球に帰る(英雄扱い)

「他国の無条件の侵略」がさり気なく描かれていて、時代を感じる(今だと非難轟々だろう)。

原作のウェルズの小説でも月人との対立が描かれていたりと、外の世界への恐怖(言葉を通じ合えない的への恐怖)というのはあるのだろうと思った。

 

映画『月世界旅行』の影響(ポンキッキーズ)

映画史の中で「最初のSF映画」としての価値がある。

更には、マジシャン出身のメリエスならではの様々な映画演出も、当時としては斬新だったことが容易に想像付く。

ポンキッキーズ「さぁ冒険だ」への影響

ところでこの映画、1990年前後に生まれた人間にとっては実は見覚えがあるはずだ。

というのも、ポンキッキーズの「さぁ冒険だ」のPVに使われていた映画としても有名。

月世界旅行の映像に、ガチャピン・ムックたちが合成して登場している。

※月の目に宇宙船が突き刺さるシーンはトラウマもの

映画「ヒューゴの不思議な発明」の題材

マーティン・スコセッシ監督『ヒューゴの不思議な発明』に監督メリエスの人生が描かれたことでも話題に。

見過ごされがちな「晩年の苦しい生活」が、作品内では描かれている。

 

映画『月世界旅行』を見る方法(カラー版あり)

映画『月世界旅行』は、著作権が切れパブリックドメインとなっているため、インターネット上で動画を視聴しても問題ない。

参考サイト

 

なお、カラー版(着色版)が後年、発売されている。

こちらのほうが正直いって見やすい。

このDVD版だと、他の作品も入っている(メリエスに興味がある人にはおすすめ)。