【進撃の巨人】諫山創先生のインタビュー(2023年)【フランス・パリ】

諫山先生が2023年パリに訪れています。

アングレーム国際漫画祭で第50回を記念した特別賞を受賞しました。

【日本語あり】Entretien avec Hajime Isayama, créateur de l’Attaque des Titans

全部日本語で聞けるので、聞いてみてください!

アートか商品か

日本であれば商品として優れているか否かっていう評価軸が真っ先にあってそれが主体だと思うんですけど フランス海外はあまりそういう評価軸ではないところで評価してくださってる気がします

よくアーティストとか、特にフランスでは言われるんですけど 実はそのアーティストって、言われると「あ、そうなんですかね」っていう… 僕はやっぱり商品を作る人っていう意識があるんで、自分の仕事は。

あとアートっていうものをちゃんとよく理解してない勉強とかする機会もなかったっていう感じがあるんで あんまりアーティストとか、そういう…、そうですね、ちょっと自分がまあちょっとよくわかってないっていうだけの話かもしれないんですけど

エゴサと影響

基本的にはそうですね、自分の考えだけでやることがいいこととされてる風潮があると思うんですけど 僕はあの本当にエゴサーチとかしたり、ファンの感想とか色々聞いた上で、すごく手厳しい意見もあるんですけど、 そういうのを得た上で、何に影響を受けて、何を影響を受けないかっていうのが、 結局のところ何に対しても、それが自分の実力だと思うんで 僕はできるだけ何の影響でも受けて、考え方を柔軟にした方がいいと思って作ってました

一番強く影響を受けたのは、ファンの意見に対してストーリー変えるぐらいだったら読むのやめますっていう それは初期の頃にファンの方がブログにコメントしてくださったんですけど それで結構迷いが吹っ切れたみたいな影響ありましたね

アニメ化

僕もあの原作で不甲斐なかったところがあるんですが…って言って、アニメの皆さんにちょっと相談持ちかけているようなところあるんで

どっちが最終かっていうのも微妙なんですけど、

ただイメージとしては、漫画の方はバンドのライブみたいな、生歌って感じなんですけど アニメの方はきっちり収録されて編集とかされたCDのオーケストラアレンジみたいなイメージです

 

影響を受けた作品

ゲームオブスローンズは今思うと、すごく会話が魅力的で
というのも、日本にあまりなかったんですけど、欧米圏、特にイギリスとかずっと皮肉を言い続けるみたいなところがあると思うんですけど
会話がほとんど皮肉みたいな、それが面白くてですね
その皮肉な言い回しに影響を受けたいと思って、その会話の話し方、会話の感じにすごく影響を受けました

 

今の感覚

常になんか今の生活が絶対このままずっと続くとは思えないような感覚はずっとありますね 進撃の巨人が売れてお金もいっぱい手に入りましたけど、いつ紙くずになるかわかんないなみたいな そういった漠然とした世界情勢であったり、そういう危機感は誰しも持ってると思うんですけど、そのぐらいですかね

漫画だったり作品だったりで、全くその文化とか歴史が違う国の人々でも、 同じものを見て同じように喜んだりできるっていうその繋がったりするような感覚っていうのは、すごく素敵だと思いますし YouTubeで日本のアニメの海外のリアクションとかよく見てるんですけど、あれとか好きですね それぞれ国によってリアクションの仕方は違ったりするんですけど、おおむねなんか繋がれるような気持ちになれるんで

 

アシスタントの話

面白い話かわかんないんですけど、ブルーロックとかスパイファミリーってご存知でしょうか? その2つの作品は、進撃の巨人を手伝っていただいた方々の漫画なんですけど、 スパイファミリーの遠藤さんとは、卓球勝負をするライバルです 遠藤さんの方が圧倒的に強いはずなんですけど、なぜか遠藤さん僕のサーブが苦手で僕が勝ちました
【補足】遠藤さんのSPY×FAMILYファンブックに諫山先生が、1ページ(1枚)寄稿しています

 

【翻訳】Hajime Isayama : “Je n’imaginais pas vivre ma vie en écrivant des mangas”

一部、諫山先生の言葉も聞き取れます。

ともちんさんに協力をいただき、文字起こし等ご協力いただきました。

なお、翻訳はざっくりですので、話半分に聞いてくださいませ

インタビュアーから諫山先生の紹介

諫山さん、こんにちは。
この度はご招待をお受けいただきありがとうございます。
あなたのスピーチはめったにありません。
あなたがインタビューに答えることはほとんどありませんし、あなたの来日を発表したとき、私たちインターが受けた反応の激しさ、大洪水、特にあなたの多くの若いファンたちの反応は想像できないでしょう。
特に若いファンの間では、本当に驚くべきことです。
ここ10年で最も優れた日本の作品の一つ
34巻まで発売され、数々の賞を受賞している「進撃の巨人」シリーズ。
全世界で1億部以上、うちフランスで600万部。
そして、あなたは今日、通りすがりのパリにいます。
ヨーロッパに来るのは、生まれて初めてと言わざるを得ない。
アングレーム国際コミックフェスティバル第50回大会のためにフランスに到着されたところですね。
あなたのシリーズの記念すべき展覧会を開催している株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモのホームページをご覧ください。
その展覧会のチケットは、数分でなくなってしまいました。配電盤が爆発しそうになった。

 

フランスでの反応

補足

以下、Qがインタビュアー、Aが諫山先生です

Q.フランスは日本に次ぐマンガの国です。
このフランス人のマンガに対する情熱、わかりますか?
それとも驚きましたか?

A.フランスですごい漫画が熱いっていうのは聞いていたんですが、なぜフランスがそうなのかはわかりません

Q.このフランスのファンの興奮、アングレームでロックスターのように期待されている事実、それはあなたを楽しませ、笑顔にさせ、少し不安にさせるのでしょうか?

A.とても光栄です。ロックスターではないです。

Q.ロックスターという感覚は無いですか?

A.ないですね

Q.ところで、あなたはどんなロックスターのファンなんですか?

A.QUEENとか聞いてましたね

Q.マンガという芸術は、日本的であり、自分の国の文化を象徴するものであり、マンガほど日本的なものはないのですが、それが世界の多くの人々に感動を与えています。
フランスでもそうですが、イタリアでもアメリカでも、世界中のあらゆる場所で、マンガは大きな現象になっています。
どこの国でも、若い人たちがマンガを買うために本屋に殺到している。
その理由はお分かりいただけたでしょうか?

A.熱狂する理由はわからないんですけど、面白いと思っていただけたらなら嬉しいです

 

進撃の巨人初期の考え

Q.さて、20歳のときに描き始めたという大作『進撃の巨人』について。今から16年前ですね。自分たちを食い殺すことしか考えていない恐ろしい巨人から身を守るため、巨大な城壁に囲まれた人間たちの共同体の物語が、これほど反響を呼ぶとは、当時想像できたでしょうか?それが12年も続き、34巻も作られ、アニメ化もNetflixの最大の成功のひとつになるとは?

A.全く予想していませんでした。書き出した当時で言えば、打ち切りになる確率が8割くらい。その漫画で生活するということ自体が、奇跡のようなことなので。それだけでも、僕の中では成功だと思います。

 

Q.巨人の脅威に抗う人間たちの、とてもダークでとてもバイオレンスなストーリーは、どこから発想されたのでしょうか。それは、20歳のときに描き始めた世界観なのでしょうか?あなたはとても若かった。

A.世界をどう見ていたってわけではないんですが、
とにかく、そこからインスピレーションを得たわけではないのですが、ただ、面白いテーマだと思ったのです。
そして、読者にとっても魅力的なトピックだと思ったのです。

諫山先生の幼少期・田舎の話

Q.あなたが生まれたのは、山に囲まれた日本の田舎の小さな町でした。
小さい頃は山から妖怪が襲ってくるんじゃないかと思いながら、この狭い環境の中で育ったんですね。
この閉ざされた子供時代が、あなたを圧迫し、息苦しくさせたのです。

A.確かに、そちらの影響もあると思います。
私の故郷は本当に山に囲まれたところでした。
ある意味、陸の孤島のようなところでした。
他人と接することがなかったんです。
そんな環境で育ったことは、私に大きな影響を与えました。

Q.子供の頃に違和感を覚えたともおっしゃっていますが、どのように違うのですか? また、それがあなたを苦しめたのか、逆にこの違いがあなたの原動力となったのでしょうか?

A.ボク個人なんですけど、漢字が凄い苦手、覚えるのが苦手で。おとなになっても苦手で、他の人は簡単にできるんだろうけど、自分は今でも文章を書くたびに、スマホで調べていて、そういうところで落ちこぼれ感みたいなのは、子供の頃から感じていました

Q.今でもそんな気持ちですか?

A.はい、出来ることと出来ないことが極端にあるんで

 

ネットカフェの話と巨人誕生のきっかけ

Q.この巨人、恐ろしい怪物を作るというアイデアは、ある晩、あなたがインターネットカフェでウェイターをしていたときに思いついたと私は読みましたよ。 あなたは、すっかり酔っ払っていた客に襲われ、「人間は、おそらく世界で最も身近な動物であると同時に、最も恐ろしい動物でもある」と言いました。 哲学者のホッブズのように、人間は人間にとって狼である、と考えているのですか? それは、最後まで読むと、本当にあなたの作品の核心をついていて、信じられないほどです

A.はい、ネットカフェでの経験っていうのは、繁華街(池袋)で酔っ払いのお客さんばかりがいて、意思の疎通も取れないし、行くのが憂鬱でした

Q.そしてそれは、私たちの目に映るもののインスピレーションにもなっている…?

A.そうですね、怒るお客さまもいらっしゃいますし、でも、そのお客さまが帰ってきたらどうなるんだろう、とか… 例えば、街に虎がいたとして、家の中に逃げ込んで鍵をかけたら、虎は追ってこないけど、実は人間がドアを開けることができる。 手にはナイフを持っていることもできる。 そこで、「動物よりも、虎よりも、人間の方が怖いんだ」と自分に言い聞かせるのです。

 

諫山先生は悲観主義者?楽観的?

Q.そして、この『進撃の巨人』で印象的なのは、登場人物の複雑さです。 彼らは時に犠牲者であり、時に裏切り者であり、時に擁護者であり、時に処刑者であり、時に善の側であり、時に悪の側であり、あらゆる「善悪二元論」から逃れられます。 それはなぜですか? あなたにとって、基本的に世界は悲劇的だからですか? あなたは悲観主義者、偉大なる悲観主義者なのです

A.僕はどっちかというと楽観的で、人間は失敗を繰り返しながら、少しずつよくなっていけるんじゃないのかな、と。「進撃の巨人」がこういう内容になったのは、すべてこう書いたほうが面白いんじゃないかな、というものに従ったんで。勧善懲悪の完全無欠なヒーローが面白いとは思えませんでした

 

諫山先生から見たエレン

Q.このシリーズで最も重要な主人公であるエレンについて一言お願いします。 このキャラクターを書くにあたって、どんなことを意識しましたか? 彼の背後で何を語りたかったのでしょうか? あなたにとって、彼はどんな存在ですか?

A.ずっと考えていたんですが、彼は自分の悪い部分を映し出すキャラクターだと思うんです。
だから、そういう自分の悪い部分を取り除く、殺すというのが全編のテーマなんです。

※元文は「que donc toute l’histoire va vers le fait de me débarrasser, de tuer ces mauvaises parties de moi.」

 

進撃完結への諫山先生の思い

Q.2021年、シリーズ最終章が刊行された。 10年以上占めたプロジェクトに終止符を打つ。 あなたの気分を良くしてくれましたか? 落ち込んだか? あなたはヒーローがいなければ、エレンがいなければ、巨人がいなければ生きていけないのですか? それとも、時々寂しくなりますか?

A.終わった直後は、非常に自分の実力不足を感じて落ち込んでいました。でも、充分頑張ったなと思いました

Q.数日前、ニューヨークで読者の前で、「私はまだ自分自身に疑問を抱いている」とおっしゃっていました。 成功したのかどうか、自分でもよくわからない」と。そうなんですか? 大成功を収めたにもかかわらず、まだ疑念を抱いているのですか?

A.そうですね、でも、ニューヨークに呼ばれたり、パリに呼ばれたら、それは成功していると言えるんじゃないかなって

Q.(まあそうですね)

A.(二人の笑い)

 

諫山先生から見た日本の漫画

Q.でも、「自分の作品は、特にアーティストの友人たちのSFの世界と比較すると、深みが足りないといつも感じている」ともおっしゃっていますね。 私たちは日本人の謙虚さを知っていますが、あなたの場合は、やはり この謙遜の仕方は、とても、とても上手ですね?

A.それはやっぱり10個上、20個上の世代が、ものすごいSFを突き詰めて 日本のいろんな漫画でより高度なことをやっていることと… 評価軸がまた違う、ということで、そういうふうに思います

 

※ここはよく聞き取れませんでした。フランス語の翻訳も、すべての言葉を訳していない可能性がありそうです。

【元の文】Après je vois les gens qui ont dix ans de plus que moi, 20 ans de plus que moi, qui ont ouvert en fait le domaine de la science-fiction et qui ont une réflexion très profonde par rapport à cet univers. Donc quand je vois tous ces gens qui sont dans niveau et qui ont une cote incroyable, disons que pour moi, en fait, je ne me compare pas dans le même standard qu’eux.

【翻訳】私より20歳以上年上で、SFの分野を切り開き、この宇宙について非常に深い考察をされている方たちです。 だから、そういう人たちを見ると、その人たちと同じ土俵に立てないというか、同じ土俵に立てないというか。 だから、私にとっては、彼らとは同じレベルにはないと言っているのです。

 

進撃の巨人の続編は無い

Q.諫山創さん、『進撃の巨人』の続編はやらないんですか、それとももう終わりですか?

A.続編はありえないので完全に終わりました

 

諫山先生とファンとの交流

Q.SNSで自分の本のコメントを見て、ファンとコミュニケーションをとっている、答えているというのは本当でしょうか?

A.やり取りはしてないんですけど、一方的に調べて、喜んだり落ち込んだり

Q.でも、とにかく距離を置くということですか?

A.最初はショックを受けたりしてたんですけど、いつの間にか鍛えられて…

 

クリエイターに向けての言葉

Q.これからマンガをやりたい、マンガの世界に入りたいと思っている若い人たちにアドバイスをお願いします。 そしてまず、「日本人でないとマンガは作れないよ」とでも言うのでしょうか。

A.いえ、日本人にしか作れないものではないんですけど。ただ、日本にはものすごく熾烈な競争がありまして、また競技人口もありまして。故に出てきたりするのも、すごいものだったりする。どこの誰が書いても関係ないと思います

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諫山先生の夢はサウナ

Q.最後の質問ですが、今も夢はありますか? あなたは36歳で、この世界的な成功を収めたわけです。 “進撃の巨人” 1億部突破 あなたはまだ、成し遂げたい夢はありますか? やらなければならないことはありますか?

A.今の所、漫画においては無いんですが。サウナ作りたいとか…

Q.サウナ!?!?

A.日本にはいっぱいあるんですけど。温泉にサウナがあって、水風呂があって、っていう。だから、この環境を、再現したいんです。

Q.フランスのファンへメッセージをお願いします。 あなたにとって、フランスとは何ですか?

A.地球の裏側にあるような存在で、日本とはまったく違う歴史もあり、でも、日本のマンガが大好きな人たちがたくさんいて、それはとても光栄なことだと思います。

Q.生まれて初めてフランスに来たことを嬉しく思っていますか?

A.そうですね、招待されたこともとてもうれしいですし、フランスにいることが光栄です。

Q.アングレーム国際コミックフェスティバルでお会いしましょう。 諫山創さん、今朝はFrance Interのマイクを握っていただき、ありがとうございました。

A.ありがとうございました。このインタビューに答えることができ、光栄です。そして、映画祭でフランスのファンの方々と交流できることも光栄です。

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