完結編後編第3章「天と地の戦い」について。
オニャンコポンの駆る飛行船で、どうにかスラトア要塞の上空に到着したパラディ島勢力は次々と降下を開始。ターゲットである獣の巨人へと攻撃を仕掛けるが、肝心のジークの本体を発見・討伐することができずにいた。しかも、もたついている間にエレンが“始祖の巨人”の力で蘇らせた歴代の“九つの巨人”が一行を急襲。一瞬の隙を突かれたアルミンが捕獲され、残されたパラディ島勢力も次第に窮地へ追い込まれていく。https://shingeki.tv/final/story/#/episode/91
アルミン達の目的は地鳴らしを止めること
アルミンたちは地鳴らしを止めるためにパラディ島を出てスラトア要塞にやってきます。
地鳴らしを止めるために、エレン巨人を殺さず、王家の血を持つジークを探し出すことを目標に動きます。しかし「終尾の巨人」の背中に現れたジークは傀儡(もぬけの殻)。エレン巨人とその骨から現れた歴代の九つの巨人との戦いを強いられます。
アルミンがオカピ巨人に連れ去られる
オカピとは?
オカピは実在する動物で、アフリカのコンゴ民主共和国にのみ生息します。同じく進撃世界でも、マーレ大陸のみに生息するのでしょう。
マーレ出身のアニはオカピのことを知っています。しかし、パラディ島出身のミカサは知らないため「豚か…何かの巨人が…車力か…獣か…顎かもしれない…」と困惑しています。オカピを知るアニは「あんた真面目にやって!!(あれはオカピ)」と返しました。
ちなみにパラディ島には猿もいません。ジークの猿に似た獣の巨人を見た時の反応の違いから、その事がわかります。アニメ26話「獣の巨人」で、パラディ島出身のミケが「あの獣のような巨人はなんだ?」と言っています。一方アニメ34話「開口」では、マーレ出身のユミルが「あの猿のような巨人は何だ」と言っていました。
武器を封じられるアルミン
オカピがアルミンをさらう時の、忍び寄る影の描写が良かったです。原作では「ヌルマゴ」という擬音遊びで表現されていたシーンです。
「傷ひとつなく捕獲する」ことで巨人化による超大型の広範囲攻撃を防ぐと共に、「オカピの舌で口を塞ぐ」ことで、アルミンの最大の武器である対話を封じています。
アルミンの甘さ
アルミンはエレンを殺したくありません。超大型巨人になることは避けたいという深層心理があるはず。しかしそれは「甘さ」でもあります。
ロールモデルであるエルヴィンの「何も捨てることができない人には、何もかえることはできないだろう…」という言葉が脳裏をよぎります。
実際に「甘かった」とアルミン自身が言っているように、エレンを殺すことを躊躇したことが仇となり、オカピに連れて行かれます。「1分後にここを吹き飛ばす」という作戦を立てた時点で、すぐに手を傷をつけて、巨人になる準備をするべきでした。
※アニメ73話「暴悪」でレストランに現れたエレンは、アルミン・ミカサたちと話し合いのテーブルに付く前に、手に傷をつけていました。いつでも巨人になれるという、脅しの表現でした
アルミンの通過儀礼
過去のアルミンの通過儀礼はどのようなものがあったでしょうか。
まず、ベルトルトを挑発する際に「人間性を捨てられるか」という通過儀礼がありました。
次に、ウォール・マリア奪還作戦でベルトルトを騙すために、自ら超大型の前に向かって、丸焦げとなりました。「自分の命を捨てられるのか」という通過儀礼といえるでしょう。
そして、レベリオ収容区襲撃では超大型巨人になることで「無関係な一般人を殺せるか」という通過儀礼に直面します。
最終決戦の今回は「大事な親友エレンを殺せるか」という最大の通過儀礼がアルミンを待っています。
歴代の9つの巨人の襲撃で防戦一方
我々が知っている巨人が再登場。アルミンたちを襲います。
ピークを背後から刺して攻撃していたのは、レベリオ収容区でエレンが戦った「戦鎚の巨人」(ラーラ・タイバー)です。
他にも「顎の巨人」が3体いました。
- ポルコ・ガリアード(ファルコが捕食)
- マルセル・ガリアード(ポルコの兄・ユミルが捕食)
- 104期生ユミル
歴代の9つの巨人の襲撃は、物量も凄まじいですが、精神攻撃の効果もあります。
ライナーを背後から襲うポルコ巨人は、アニメ60話「海の向こう側」の時にはライナーを守っていた存在です。
ライナーを上空から追撃したベルトルトの超大型巨人も、以前と逆の行動をしています。アニメ33話「追う者」でライナーがエレンを連れ去ろうとした時に、負けそうになったライナーを助けたのは、ベルトルトの壁の上からの奇襲でした。
ベルトルトたちは自分の意志に反して攻撃しています。道のベルトルトが右目から涙を流しているのは、ライナーたちを攻撃したくない、このまま終わって欲しくないという気持ちを表しているのでしょう。
※アニメの56話「地下室」でも、アルミンに捕食されたベルトルトが「痛いよ…」と言いながら片目で涙を流していました
歴代の9つの巨人とは?
歴代の9つの巨人は、巨人継承の周期13年と知性巨人9体から考えると、軽く1000体以上いそうです。見た目の特徴から分類できそうです。
- 「女型の巨人」→長い髪・しなやかな体
- 「顎の巨人」→トゲトゲした歯・大きな顎・鋭い爪
- 「鎧の巨人」→鱗のような体表の模様
- 「獣の巨人」→動物
- 「戦鎚の巨人」→武器を持つ
特にバリエーション豊富なのが「獣の巨人」です。アニメシーズン2のオープニング映像(「心臓を捧げよ」)を見ると、ジークの猿型の「獣の巨人」ともに、さまざまな動物が走っていました。当時は「これ何なんだ?」と思いましたが、まさに「獣」という名前の通り、さまざまな動物になり得るのが「獣の巨人」だと示唆しています。
それぞれの戦い
ピークの奇襲
調査兵団がエレンを殺すことを拒む中、ピークだけは違いました。エレンを奇襲して爆破することに躊躇がありませんでした。
戦いの前にも「死んだ仲間に報いなければなりません。戦士の務めを果たします」とキヨミ様に話していました。この時点で既に、自分を犠牲にしてでもエレンを爆破して殺すと決意していたのでしょう。
また、アニメ89話「完結編(前編)」で、飛行艇の中で地鳴らしを止める作戦を立てる時のピークの発言にも注目です。「アルミンが超大型巨人になれば、どこにいるかわからなくてもまとめて吹き飛ばすことができるわよね」と言っていました。ピークはそれ以上話しませんでしたし、この時点で奇襲することを考えていたと思われます。
ピークはエレンを起爆する際に「消え失せろ悪夢」と言っています。ここで「悪魔」と言ってしまうと、エルディア人ならびにパラディ島への言葉になります。一方「悪夢」は地鳴らしという長く悪い夢に対する言葉です。
また、ピークの「私も立体機動装置使えたらな」という発言からも、調査兵団やパラディ島民に対して「島の悪魔」という認識は無いように感じます。ピークは調査兵団の服を着ていますし「調査兵団の一員」とすら思えます。
「車力の巨人」のアクションシーンも見どころ満載です。漫画では1ページだけの移動シーンでしたが、アニメでは多くの巨人をスピーディーに乗り越える約10秒の動きに変わっています。まるでアスリートのように手足を使う車力の動きに、思わず笑ってしまいました。 「車力の巨人」が「終尾の巨人ランド」のアトラクションを存分に楽しむ様子だけでも、アニメを見る価値がありますね。
リヴァイとミカサの戦闘(対比表現)
アニメ22話「敗者達」にて、リヴァイは「女型の巨人」からエレンを取り返そうとして足を負傷しました。アニメ完結編では、その場面のリフレインがあり、リヴァイは「歴代の9つの巨人」からコニーを助けようとして足を噛まれてしまいます。
他にも、リヴァイが突撃しようとするミカサを止めるシーンもリフレインです。アニメ22話では、「ミカサ、エレンを助けたいなら落ち着け」と言うリヴァイの命令を無視して、ミカサは進んでいきました。一方、アニメ完結編では、ミカサは冷静に命令を聞いています。対比することで、ミカサの成長がうかがえます。
リヴァイの活躍
アニメでは漫画にはなかった「リヴァイのアクションシーン」がたくさん追加されていました。シーズン3(王政編)の「ケニーとの戦い」を彷彿とさせるアクションとカメラワークは圧巻。特に「戦鎚の巨人」を登って倒す一連の動きは、何度でも見返したいシーンです。
ライナーとジャン
ジャンとライナーの会話も感動的です。ジャンはライナーに「死ぬところまで足掻いてみようぜ」と語りかけますが、絶望的な表情をしています。そのあと、むりやり余裕な笑顔を見せた姿にジャンの強さを感じます。
ライナーの反応も良かったです。一瞬はっとした表情を見せた後、表情が緩み、やや涙目になり「ジャン…」と呟く。漫画では一コマだけの場面でしたが、時間を伴うアニメの表現によって、ライナーの微妙な感情の変化を表現しています。
ミカサの奮起
ミカサは絶望的な状況下でも縦横無尽に飛び回り、戦い続けていました。歴代の九つの巨人に囲まれた時でさえ「私は強い…ので」と吠えます。
※アニメの7話「小さな刃」の戦闘シーンの「私は強い…ので」発言との対比です
孤軍奮闘するミカサを助けに来たのは、空を飛ぶファルコ巨人。巨人と重なったミカサの姿は、まるで羽が生えた戦士。終尾の巨人の骨が鳥籠を彷彿とさせますし、ミカサは鳥籠の中であがく鳥にも見えます。
格好良いシーンでしたが、アニの「ちょっと邪魔!」と、ミカサの見せ場を強奪するコメディも笑えましたね。
ファルコ巨人の救援
ファルコ・ガビ・アニはアズマビトの船に乗って、オディハを出て戦いから降りました。しかし、航海の途中でファルコの「顎の巨人」が飛べることが分かり、悔いを残さないようにスラトア要塞に向かいます。
ファルコ巨人のアニメーション
「天と地の戦い」は基本的に防戦一方ですが、敵の攻撃を避ける部分も楽しめます。今までの巨人との戦いでは、倒す動きがアニメーションの快楽を生み出していました。一方、今回のファルコのアクションシーンでは、ただ空中を飛びながら敵の攻撃を避けるだけ。しかし、その「避ける」という動きだけでも充分楽しめます。バスケットの試合を見ている時にシュートシーンだけではなく、ドリブルで敵を避けるシーンを見ていて楽しいのに近い感覚です。
特に注目なのが、複数の「戦鎚の巨人」の遠距離攻撃を避けるアクション。鳥人間というか、鳥巨人ならではの動きです。今までは地上戦なので直線的な動きに制限されていましたが、ファルコ巨人は空の上で上下左右に体をツイストして、縦横無尽に動き回ります。これもアニメーションならではの楽しさといえるでしょう。
アニとキヨミの会話
戦線離脱したアニが戻ってきたきっかけは、アニメ88話「罪人達」のキヨミの発言です。
「後悔が絶えることはありません」
「私は全てを尽くして模索したとは言えません」
「どうして失う前に気付けないものでしょうか」
「ただ損も得もなく他者を尊ぶ気持ちに…」
アニは「戦士」を降りて一人の少女になりましたが、このキヨミの発言を聞いて再び戦場に出ます。悔いなき選択をしたのです。
アニがアルミンを気にする
戦場に戻ってきたアニが最初に気にしたのは、恋心を抱くアルミンの安否です。アニはミカサに「それでアルミン…いやピークは?」と質問します。ミカサはアニの気持ちを察して「アルミンは巨人に連れて行かれた」とピークではなくアルミンについて語ります。この女友達のわかっている感のある会話も見どころです。
アルミンもアニを気にする
一方アルミンもアニのことを気にしています。「道」に囚われたアルミンが仲間のことを思い出す時に、後に絞り出す声で「…アニ」と言うところに特別感が出ています。
漫画136話「心臓を捧げよ」でも唯一「…」つきでアニの名前が呼ばれています。
ミカサとアニ(対比表現)
アニメ7話「小さな刃」で、ミカサは初めて出陣します。エレンと別の班に配属されたミカサは、アルミンと合流してすぐに「エレンはどこ?」と聞いています。今回、アニが「アルミン…いやピークは?」と聞いているのと対比的です。
気持ちをストレート伝えるミカサと、気持ちをごまかすアニ。こういった小さな対比表現からキャラクターの違いが見えてきますね。
「天と地の戦い」
アルミンたちとエレン巨人の戦いは3年後に「天と地の戦い」と呼ばれます。「地」は地上を踏み鳴らす地鳴らし巨人のこと。一方「天」は、飛行艇とファルコ巨人、そこから飛び降りた英雄アルミンたちを指していそうです。
諫山先生は「風の谷のナウシカ」にも影響を受けたと明言しているので、「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」も関係していそうです。
「空を飛ぶ巨人が突然現れて、そこから飛び降りた英雄たちが世界を救う」という事実は、「神話」として後世に語り継がれることでしょう。